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新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第二十四章 女帝の塔は節制同盟と戦います!
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450:お互い、出だしは慎重なようです!



■ノノア 17歳 狐獣人

■第500期 Cランク【世沸者(よわきもの)の塔】塔主



「えっ、ヨギィを、ですか? わ、私は別に構いませんが……」



 塔主戦争(バトル)が始まって早々、シャルロットさんからそんな話を聞きました。

 なんでもハルフゥさんが「ヨギィの正体を先に晒しても問題はないか」と確認してきたようです。その塔主判断が欲しいと。


 詳しくお聞きしたところ、迎撃できない位置に魔物が潜んでいるようで、そこの対処のためにヨギィを使いたいと言っているようでした。

 【節制の塔】の六階層については情報を得ています。罠ばかりの一本道だと。

 そこまでは聞いていたのですが、どうやら通路の壁に所々スリットが開いていて、その向こうに魔物がいるらしいのです。

 確かにヨギィくらいしか通れなさそうですね……クルックーを見せるわけにもいきませんし。



 スカアハさんが察知したらしいのですが、おそらく【女帝の塔】の一階層でシャルロットさんが使っていた手ですね。

 水路の両端から雷魔法を撃つというやつです。あれを真似したのかもしれません。

 となるとやっぱり【空城】同盟戦も覗いていたということでしょうか。たまたま似ているだけかもしれませんけど。


 シャルロットさんは私たち全員に確認してきました。

 ヨギィの主である私は「どうぞどうぞお好きに使っちゃって下さい」という感じなのですが、アデルさんたちは相当悩んでいました。

 ヨギィの情報はなるべく敵に与えたくない。しかし迎撃を防ぐという意味では適任だと。

 最終的には「ヨギィなら探られたところで対処方法も分からないだろうし、敵の警戒をヨギィに集中させるのもアリか」ということで許可していました。



 敵が知りたい情報の第一位はエメリーさんでしょうが、私たちが隠したい情報はヨギィ、スカアハさん、クルックー、ペロの四体です。

 ヨギィに注目を集めることで他三体を欺けるのなら僥倖ということですね。

 仮に集中攻撃されることになってもヨギィなら死なないでしょうし、私はそれで構いません。


 ということで、ハルフゥさんの号令でいつでもバートリさんがヨギィを投げられる状態にしつつ通路を進んでいたのですが……。



「ッ!? ミカエルですって!?」



 どうやらスリット越しに近づいてきた魔物は【節制】の大ボスと目されていた【節制の天使ミカエル】だったというのです。

 スカアハさんの察知でそれに気付いたハルフゥさんは即座にバートリさんに指示。ヨギィを思いっきり投げつけ……正面の壁にビシャアンとさせたのです。

 さすがの私も少し心配になるほどの剛速球でしたね。剛速スライム。【空城】同盟との戦いが活きたとも言えます。


 ミカエルはヨギィに攻撃しつつ退却したようです。これでヨギィが魔法無効だとバレましたかね。



「<鑑定>目的か。同じ大天使持ちやからウチも気持ちは分かるけど、初っ端でいきなりミカエルを使って来るとはなぁ」


「大胆ではありますけれど慎重とも言えますわね。まずは固有魔物の情報を、ということでしょう」


「敵もさるものではないか。なかなかやりおるのう」



 三軍師の皆さんは驚きよりも感心といった様子。笑っている場合じゃないと思いますけどね。


 ハルフゥさんはヨギィをそのまま裏道に残して進むようです。

 ヨギィの影にスカアハさんが入り、実質はSランク二体体制で裏に潜む魔物を対処していくと。



「ミカエルがいると分かれば早々に斃せるチャンスかもしれませんわね。ヨギィとスカアハでいけるでしょう。向こうも大勢の天使部隊を率いているわけではありませんし」


「ただスカアハは姿を見せんといてな。ミカエルと戦うことになってもギリギリまで粘って出来るだけ影の中からサポートするようにシャルちゃん言っといて」


「了解です!」



 狭い通路はミカエルにとって主戦場とは言えません。その上、天使部隊もいないのであれば逆にチャンスということです。

 ミカエルの攻撃はヨギィに効かないでしょうしね。

 もし効くとすれば固有スキルか限定スキルが絡んでくると思いますが、だったら先ほど退却した意味が分かりませんし。

 やはり戦うつもりがなく、情報収集のためだけに配置されたと見て間違いないでしょう。



 ……と結論付けていたのですが、今度はミカエルが五十体ほどの魔物を率いてヨギィを襲って来ました。

 怒涛の魔法攻撃を放ち、ロイヤルジェスターは斬り掛かってきたりもしました。

 まぁそれくらいなら私も安心して見ていられます。普通の魔法と物理攻撃ですからね。

 その上突っ込んで来てくれるならヨギィにとって戦いやすい相手と言えます。


 ヨギィは敵部隊のほとんどを食べ(・・)まして、そこで再びミカエルは逃げ去っていきました。

 スカアハさんはずっとミカエルを暗殺しようと窺っていたようですが、そこはハルフゥさんが止めたようです。

 いくら奇襲をしてもミカエルを一撃で斃すのは不可能だし、一番やってはいけないことはスカアハさんの姿を見せた上で逃げられることだからと。


 よくそこまで考えるものですし、よく言い聞かせられるものですね。

 これにはアデルさんやドロシーさんも感心した様子でした。



「一旦退却した上で再度、物量をもって仕掛けると。まぁヨギィが一人でポツンといたらチャンスとも思うか」


「どうしてもヨギィの情報が欲しかったんじゃろうな。二度目は威力偵察じゃろ?」


「結果は大勝ですけれど情報戦の観点で言えば惜敗ですわね。ヨギィだけでなく他の固有魔物も少なからず鑑定されているでしょうし」


「クルックーとスカアハさんは大丈夫ですかね」


「スカアハに関しては大丈夫ではないでしょうか。ミカエルの攻撃を見てもヨギィばかりを狙っている様子でしたから」



 あれだけ近づけば気付かれてもおかしくはないですけどね。

 でも影に攻撃せずヨギィばかりを攻撃していたのですから、やはり気付かれていないのかもしれません。

 それだけヨギィを危険視していたということでしょうか。



 それからもヨギィとスカアハさんは裏道の探索を継続。

 本隊は罠と格闘しつつ通路を進んでいきました。

 火炎放射の罠にはマンティコアフレイムが盾となったり、毒の罠ではウリエルさんたちが回復に勤しんだりと。

 普通の罠であれば十分避けられるのですがね。斥候対策の罠ですとなかなか難しいところです。


 しかしAランク最上位の【節制の塔】でこうした罠を多用しているということは、私たちが取り組んでいる脱Cランク病の塔構成も間違っていないということになりますよね。

 Aランク侵入者もある程度は対処できるからこそ使っているのでしょうし。

 そう考えると【節制の塔】の探索・攻略というのは私たちの今後のためにも非常に有意義と言えるのではないでしょうか。


 ……そんなこと言えないですけどね。勝ったつもりになるのは早すぎますから。



 通路では途中で敵部隊が待ち受けたりもしていました。通路を封鎖するほどのジェネラルナイト(B)部隊です。

 足を止めさせ時限式の罠にはめるのが狙いですね。

 ただこちらの前衛もかなり硬いですし、ぶつかっても普通に勝てます。

 ぶつからない状態で魔法を撃ちあう形になってもターニアさんとかいますからね。魔法勝負なら負けません。


 そんな感じでゆっくりとではありますが通路を進み、六階層の終点付近でヨギィたちと合流しました。

 被害はなしですが魔力を消費したのと鑑定されたのが被害みたいなものですね。何とも言えません。

 そのまま攻撃陣は七階層へと進みます。



 一方、【赤の塔】の防衛――敵攻撃陣の様子はと言うと、こちらも色々とありました。

 【節制の塔】でミカエルが仕掛けてきたように、アデルさんもまた敵攻撃陣に対して色々と仕掛けていたのです。

 最初だからこそ忙しなく動く、最初だからこそ色々と調べる、そんな探り合いが行われていたのです。


 最初に行ったのはウリエルさんによる敵攻撃陣の<人物鑑定>なのですが、それにより三体の固有魔物の情報は手に入れられました。

 しかしトゲトゲのマンティコアと例の亜人に関しては謎のまま。

 まぁマンティコアのほうは「物理攻撃と防御が強そうだなぁ」と想像はつくのですが、例の亜人に関しては不明です。



 レイチェルさんからも忠告されていたそうですが、アデルさんたちにしても一番警戒しているのはその魔物のようです。

 判明しているのは「スキル全般を周囲の味方も含め無効化する」ということ。

 それが魔法なのかスキルなのか特殊能力なのかも不明です。


 限定スキルも効かないだろうと予想はされておりまして、そうなると【赤の塔】の防衛策の主軸とも言える<赤き雨の地>もおそらく効かないだろうと。

 微ダメージはもちろん視界不良にすることさえ出来ないのではないか、という話をなさっていました。



 対策として第一に考えるのは「その魔物を早期に暗殺など出来れば」というところです。

 そして暗殺に適しているのはエメリーさんかアタランテさんとなりますが、そこでまた疑問が生まれました。


 エメリーさんの<気配遮断>やアタランテさんの射撃スキルも無効化されるのでは、と。

 エメリーさんが近づけば普通に気付かれるし、アタランテさんの矢もあの魔物に近づいたら威力が弱まるかもしれません。

 まぁエメリーさんは基本的なステータスが高いですから気付かれても問題はなさそうですが、あらゆるスキルが封じられるのであれば何が起こるか分かりませんからね。



 暗殺に失敗した場合、エメリーさんやアタランテさんの情報を敵に与えるだけになってしまいます。

 それはさすがに困るということで、しばらくは色々と探りつつ適切なタイミングで仕掛けようという結論になりました。

 事前に計画していた防衛策をとりあえずそのまま実行しようということですね。



 アデルさんは元々、一階層『紅葉樹の森』を『調査の場』と決めていました。

 配置した魔物はファイアウルフ(C)、レッドインプ(E)、コールドコンドル(C)、ステュムバリデス(C)、ハイフェアリー(C)、守護天使(ガーディアン)(D)、サンダーバード(D)といった雑多な弱い魔物ばかり。

 それらを統率する意味でセイレーン(パタパタ)(★S)も置いていますが戦わせるつもりはないようです。


 つまり森の中で強襲し、あらゆる属性魔法を撃ってみようと。

 例の亜人に限ったことではありませんが固有魔物全般ですね、何が弱点なのか探ろうということです。

 半分捨て石のような感覚ですが、森の中での強襲に慣れた【輝翼】の鳥もいますので撃った後に逃げ切ることも可能だと思います。



 そしてその中に私のスライム部隊も混ざっています。

 ベノムスライム(E)、パラライズスライム(E)、コンフュスライム(E)といった状態異常系のスライム。状態異常が効くかどうかの確認ですね。

 さらにアサシンスライム(D)が十体とシャドウスライム(B)一体ですね。これは暗殺というより斥候スキルが敵に効くかという確認が主な仕事になります。


 スライムだけで五十体ほどの部隊になりますので、指揮官としてミミックスライム(ペコ)(C)も出しています。

 パタパタと一緒に最後尾でお留守番ですけどね。それでもペコがいるのといないのでは大きく変わりますので。


 敵攻撃陣は一塊となって森を進み、迎撃部隊はタイミングを見計らって強襲を仕掛けました。

 しかし――。



「……スキルだけでなく魔法も無効ということですか。明らかにあの亜人の仕業ですわね」


「シャドウイーター(★A)の察知能力も厄介やな。思いの外優秀な斥候や」


「攻撃があまり脅威とは感じないが防御が硬いのう。特に例の亜人の周りは完全に固められとる」



 全ての属性魔法は着弾の直前にかき消されました。不自然なほどに。

 強襲は全て未遂に終わり、次々に迎撃されていったのです。


 私たちの見立てでは敵攻撃陣にいるSランク固有魔物は三体。あとはほとんどAランクの魔物です。

 こういっては何ですが私たちの攻撃陣のほうがよほど強そうに見えるのですが……思いの外敵も強いですね。いや、強くて当たり前なのですけれど。Aランク多すぎですし。


 とりあえず「魔法も効かない」という情報は得られたのでプラスと考えていいのですかね?

 いずれにせよ益々油断ならない感じになってきました。

 ……ひとまずペコは引き上げさせますか。



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