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新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第二十二章 女帝の塔は久しぶりに同盟戦をします!
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407:バレーミア同盟も感付いたようです!

第二十二章開幕。



■コレット・パロ 38歳

■第480期 Aランク【黄の塔】塔主



「えっ、メルセドウで内紛ですか?」


『内紛と言うよりは政戦と言うか、腐敗貴族の粛清といったところらしいがのう』


『いずれにせよ穏やかじゃないですね』



 いつもの同盟会議の中でエドワルド陛下がそのようなことを言ってきた。

 どういうルートで仕入れているのか、国の情報を手に入れるのは私以上に早い。おそらく密偵や情報伝達の部隊を自前で持っているのだろう。


 しかしメルセドウの情報にまで詳しいとはどういうことか。

 メルセドウの情報がバレーミアにまで流れて来て、そこからエドワルド陛下に伝わったというわけではあるまい。それでは距離的な問題で時間が掛かりすぎる。

 つまり、メルセドウに密偵を送り込んでいてそこから直接情報を得ているのではないか。


 だとすれば周到にも程がある。国王ともなればそういったことは当然なのか?

 戦争はしないと謳っておきながらやっていることは敵国の調査ではないか。

 経済調査のために隣国を調べるとかならば分かるのだがな。



『昨年【赤】が【魔術師】同盟を討ったじゃろ? あれでバベル内のメルセドウ貴族派はほぼ壊滅したわけじゃが、同時にメルセドウ内でも貴族派の粛清が始まっておった』


『へぇ、じゃあ呼応した動きだったってことかい』


「私は存じております。おそらくフレイアの言葉が正しい。【赤】が【魔術師】を狙うためにロージット公を動かしたのか、それとも貴族派粛清の流れを受けて塔主戦争(バトル)を仕掛けたのかは分かりませんが」


『反貴族を謳う【赤】を消そうと【魔術師】が仕掛けたのだと思っていましたが逆だったのですか』


「一概にそうとも言い切れません。【魔術師】からの申請があり、それに対するカウンターとしてメルセドウを動かしたのかもしれませんし」



 元々王国派の【赤】と貴族派の【魔術師】同盟は敵対していたはずだ。

 【赤】や【彩糸の組紐(ブライトブレイド)】が反差別主義・反貴族主義を謳い始めたのが切っ掛けとなったのかは分からないが、いつ塔主戦争(バトル)が起こってもおかしくはない状況だっただろう。


 しかし当時の【彩糸の組紐(ブライトブレイド)】からすれば相手が格上すぎる。まぁ今にしてもAランク9位というのはとてつもなく格上なのだが。

 だからこそ戦いたいけれど戦えないという状況だったと思われる。



 そこに【魔術師】側から申請が来たか、メルセドウで貴族派粛清の動きがあったか、それは分からないが、【赤】にとって「戦うならば今しかない」という状況になってしまったのだろう。


 今までの下剋上とは次元の違う、超格上との塔主戦争(バトル)だ。

 だからこそバベルの動きとメルセドウの動きを呼応させる必要があった。内と外から揺さぶるために。


 【赤】からすれば【魔術師】同盟三塔主の動揺を誘える。もしかしたら同盟戦(ストルグ)の条文もかなり有利なものに出来るかもしれない。

 ロージット公からすれば【魔術師】同盟が消えれば貴族派の精神的支柱が失われるようなものだ。その機を逃さず粛清に動くだろう。


 こうしてバベルでもメルセドウでも貴族派は壊滅状態となったわけだ。

 まぁ実際には【羽虫の塔】のランブレスタ伯爵が残っているのだがな。それはどうでもいい。



『ともかく昨年のそうした大騒ぎがあり、メルセドウはしばらくごたついておった。貴族派の継爵やら降格やら徐爵やらで』


『混乱は想像つきますね。政治的にも大打撃でしょう。まぁ自分で蒔いた種だと思いますが』


『そう言われるとわしも耳が痛い。バレーミアとて所々腐っておるからな』


『……聞かなかったことにしておきます』


『ハッハッハ! まぁ国なんぞどこも似たようなもんじゃよ。わしとしてはメルセドウ国王を評価しておる。国を預かる者として勇気ある決断だったに違いない』



 前王とは言え国王陛下の口から「うちの貴族も腐っている」と言われれば、私もパイアと同じく閉口してしまう。

 大体予想はつくのだがな。そういう貴族がいることも、陛下が手を下せない理由も。


 だから手を下したメルセドウ国王を褒めているのだろう。

 国を乱すと分かっていて、それでも貴族派粛清に動いたのだから。



『ところがメルセドウ国王はそこで終わらなかった。貴族派の次は中立派じゃということで動き始めたらしい』


「は? 王国派以外を全て潰すと? そんなことをすれば政治が停滞するとかそれどころの話ではないでしょう」


『うむ、しかし国の膿を出す好機と見たのじゃろうな。やるならば一気にやるべきと。それもまた勇気ある決断じゃと儂は思う』



 貴族派に加えて中立派まで粛清するのであれば、おそらく国の半分程の貴族が入れ替わる事態になるだろう。

 文官、官僚、騎士団に宮廷魔導士、領主に至るまでトップの半分は消えるわけだ。

 そんなことをすれば国が一気に衰退するのは目に見えている。どこも動けなくなるのだからな。


 せめて貴族派粛清のいざこざが終わり、一通り修正し終えて、国政が安定してから仕掛けるべきだろう。

 何も終わってすぐに動くことはない。貴族など逃げはしないのだから。


 何かしらの理由で迅速に動く意味があったのだとは思う。

 例え国が衰退することになったとしても貴族派と中立派をまとめて粛清しなければと、メルセドウ国王はそう思ったのだろう。



「まさか……王位継承ですか?」


『じゃろうな。メルセドウ国王も儂に近い年齢じゃ。おそらく国を正し、ある程度安定させた頃を見計らって継承させるのではないかのう。最後の仕事をそれと決めたんじゃろうな』


『それはまたとんでもない大仕事ですね……』



 退位前の仕事としては立派と思う反面、とんでもない暴君だとも思う。

 徹底した掃除で膿を出すのはいいが、国の政治が麻痺して苦労するのは民なのだ。

 商人目線で言わせてもらえば物価も高くなるだろうし治安も悪くなると思われる。流民が出てもおかしくはない。


 ただ長期的に見ればそれが正しいことだとも分かる。

 安定さえすれば民の過ごしやすい国になるのではと。

 それが何年先の話になるのか分からないが。



『ちょっと待っておくれ。じゃあ【節制】同盟はどうなるんだい?』


『そりゃ【赤】を消そうとするじゃろ。すでに申請していてもおかしくはない』



 だろうな。メルセドウで中立派粛清の動きが見えるとなれば相当慌てるはずだ。

 メルセドウから離れたバベルの塔主がどうにかしようと思っても出来ることなど限られる。


 一番良い手は、今や王国派の象徴であろう【赤の塔】を消すこと。

 それは「中立派の手で王国派を討った」という証にもなりメルセドウにも伝わる。


 貴族も民もその頭には「中立派が上」と植え付けられるだろう。

 その中でメルセドウ国王が中立派粛清の動きをすれば、民はどう思うか。

 それこそメルセドウ国王は″暴君″と呼ばれるかもしれないな。



 しかし【赤】は受けるか? 受けるわけがないだろう。


 【魔術師】同盟の時はメルセドウの動きと連動したのだろうが、相手が【節制】同盟ともなれば連動したところで勝てる相手ではない。

 もちろんあれから【赤】も【彩糸の組紐(ブライトブレイド)】も急成長を続けているとは思うが、【節制の塔】はAランクトップなのだ。一番Sランクに近い塔なのは間違いない。


 【節制】同盟で見てもAABBの四塔。【戦車】はAに上がったばかり、【魔霧】はBランクに上がったばかりではあるものの、その陣容だけ見ても【彩糸の組紐(ブライトブレイド)】の圧倒的不利には違いない。

 だから普通に考えれば【節制】からの塔主戦争(バトル)申請など却下の一択だ。



 ……いや、【戦車】【魔霧】がランクアップ直後で安定していないことが追い風になるのか?

 それに加えてメルセドウの事情が絡めば……【彩糸の組紐(ブライトブレイド)】にとって好機と言えるのかもしれない。


 二塔は戦える状態になく、戦力もほとんどランクアップ前のままだろう。ABBCと見てもいい。

 その状態でも【節制】同盟としては何としても【赤】と戦わなくてはいけない。

 普通に申請したところで受理されるわけもないから、同盟戦(ストルグ)の条文をかなり不利なものにしてでも何とか受理させようとするだろう。


 なにせ時間がないのだ。

 指を咥えて待っていたらメルセドウでは中立派粛清の動きが本格的になり、中立派も瓦解。もしかしたら家が潰されるかもしれない。

 そんなことにならないためにも早くに【赤】を討ちたいはずだ。例え【節制】側に不利な条文であっても。



 それは【赤】にとってまたとない好機と言える。

 【魔術師】以上に格上の【節制】を斃すチャンスに違いない。


 とは言え、条文があまりに「【彩糸の組紐(ブライトブレイド)】有利、【節制】同盟不利」なものであったら神が認めないかもしれない。一応平等を謳っているらしいしな。


 それに【赤】は無理して戦う必要などないのだ。

 申請を延々と無視し続けるだけで勝手に中立派は粛清され、四塔主にダメージが入るのだから。主に精神的なものだろうが。

 戦わなくても結果的に「バベルにおけるメルセドウの第一派閥は王国派」となることが最早確定されている。

 【節制】同盟は「元・中立派」として残り続けるだろうがな。



『……コレット殿、【節制】と【赤】は本当に戦うと思いますか? 私にはそうは思えないのですが』


「私も同意見です。ただ全てが上手くかみ合った時は二割ほど可能性が出て来ますかね。【赤】のアデルは自分の手で斃したいと思っているでしょうし」


『ああ、なるほど。性格的な問題ですか』



 普通に考えれば戦うわけがない。戦わなくてもすでに勝敗は決まっているようなものなのだし。

 しかし【赤】のアデルはおそらく好戦的で勝気な性格だろう。それは今までの戦果が物語っている。

 【節制】同盟を斃すチャンスを見出せればそれを活かさないわけがない。

 例えかけ離れた力量差があっても。例え相手がAランクトップであっても。



「陛下はどう動くおつもりですか」


『静観しかあるまい。【赤】と【節制】が戦うならば狙いは一つとなる。戦わなければ弱くなった【節制】同盟を第一目標とすればよい。いずれにしても儂の塔が弱すぎるからのう。強くせんことには静観しかできんわ』


「それはそうですね。同盟として力をつけていきましょう」



 これに乗じて【節制】同盟や【彩糸の組紐(ブライトブレイド)】に仕掛けるとか言い出さなくて良かった。

 低ランクの塔を削ることならば出来るが、同盟戦(ストルグ)を仕掛けるとなれば我らの同盟はまだ力不足なのだ。

 陛下の狙いはメルセドウの塔を討つことにあるが、さすがに今は急ぐようなこともないらしい。理知的な陛下で助かる。



『それにラッツェリアの動きも気になるからのう』


「ラッツェリア? まさかメルセドウの騒ぎに乗じて仕掛けると?」


『おかしな話ではあるまい。ラッツェリア公国と接するのはロージットの領地なのじゃし、もし中立派が公国と結託したのならば一番狙いやすいはずじゃろ』



 ああ、そういうことになるのか。まさに戦争ではないか。

 つまりロージットは中立派とラッツェリア公国から挟撃を狙われる立場にあると……。



 ……ん? ではバベルの動きはどうなる?


 まさか【空城】同盟まで【赤】を狙うのか? あるいは【節制】同盟と結託? いやさすがにそれは……。




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