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新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第二十章 女帝の塔は三年目も戦います!Ⅱ
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384:【針葉樹の塔】に翻弄されています!



■ドロシー 25歳 ドワーフ

■第500期 Cランク【忍耐の塔】塔主



 敵攻撃陣は順調に【忍耐の塔】を攻略していく。

 四階層のボス、アイアンゴーレム(C)も弓矢で一撃。五階層の『トラップ回廊』もある程度は順調に進めていた。


 飛行部隊対策で極端に低い通路だとか、そこに罠を仕込むとか、<罠察知>対策の罠とかもあったしな。

 それを全て避けるちゅうのは不可能。被害はどうしたって出る。

 でも天使の回復があるからな。結局は鳥と風精霊(シルフ)が数体削れただけや。



 六階層『砦』。ここの三差路は『罠だらけの一本道』を行かれた。

 向こうは戸惑っている様子やったからこの塔構成は分かっていないちゅうことや。罠の仕組みにも気付いていない。


 しかし一番通過しやすい扉を選ばれた。これは単純に運が悪い。

 敵攻撃陣が少数やったのもウチにしたら最悪やった。分断目的やったのに分断が出来んかったと。


 当然、アタランテの斥候能力の前では無意味な罠ばかりやし、通路は障害にもならへん。

 ボス部屋のスクイッシュドラゴンも隠しとるから、そのまま労せずして七・八階層に進んでもうた。



 でも階段を上がった先で、敵攻撃陣に動揺が見られた。

 そらそうやろ。『大広間』にはウチの主力を集めておいたからな。



 最後尾には巨兵ティターン(S)。その前にクリスタルゴーレム(キラリン)(A)のミスリルゴーレム(B)部隊。

 空にはウィッチクイーン(フワリン)(A)のハイウィッチ(B)部隊とウリエル(★S)の天使部隊。そしてスフィンクス(スフィー)(A)のガーゴイル(B)部隊もいる。


 天使以外は全てBランク以上。総勢百五十を超える大部隊や。

 これを百に満たない敵部隊でどうにか出来るとしたら……Sランク固有魔物【聖弓姫アタランテ】に頼るしかない。



 階層の奥に布陣したウチらの軍勢にはさすがの弓も届かんと見たのやろ。

 アタランテは一人で勢いよく前に出た。弓矢を構えながら、距離に入った瞬間に射れるように。


 しかしみすみす射たせるわけにはいかん。アタランテに合わせるように防衛陣の中から飛び出たんは――ウチの二体のSランク固有魔物、ウリエルとパルテアや。


 ウリエルが盾を前にして急速で近づき、そのすぐ後ろをパルテアが飛ぶ。

 並ぶ姿はまるで放たれた大矢。それがアタランテに向かって一直線に飛んだ。



 アタランテがどこに狙いをつけていたのかは分からん。しかし近づいてくるウリエルとパルテアの存在に気付くと、すぐに狙いをそちらに変えた。


 そしてすぐさま放たれる矢は明らかに異常な速度と攻撃力で、しかも二本三本と次々に放ってくる。どうやって番えてんのかウチには理解できん。


 しかしウリエルの盾はその全てを防いだ。忍耐の大天使は伊達ではない。

 中盾一つを前に出しそのままアタランテにぶつかる勢いで飛んでいく。


 そしてある程度近づいたところでパルテアが飛び出した。ウリエルの上を越えて、アタランテを空から殴りかかるように。



 ――そこから一連の流れを、なぜかウチは時間が凝縮されたように見えていた。



 まずウリエルの盾が抜けないと悟ったアタランテが「チィッ」と漏らすと、弓を構えるのを止めた。


 矢を持っていた右手を腰の裏に回し、代わりに取り出したんは……歪な形の″手斧″。


 上からはパルテアの拳が迫っている。アタランテは手斧を振り上げそれを迎撃すると――



 ――ズバァァッ!!!



 パルテアの右腕が斬り飛ばされ吹き飛んだ。

 画面に映されたものが信じられず、ウチは言葉を失った。

 パルテアも驚いた表情で動きが止まる。


 しかしウリエルは止まらない。

 手斧を振り上げたアタランテの隙を見逃すまいと、ウリエルは右手の直剣を前に出し、そのまま貫く――



 ――と思っていたところで……アタランテの姿が「パッ」と消えた。



「はあ!?」とウチは立ちあがりそうになった。意味が分からん。


 俯瞰の画面でアタランテの姿を探すが、どこにもおらん。

 そればかりか固有魔物の天使二体も姿を消しとる。一体何がどうなって……という所で画面からシャルちゃんの叫び声が聞こえた。



『ドロシーさん、すぐに眷属を玉座の間に集めて下さい! そこが危険です!』


「ッ!? そうか! 眷属全員、玉座に集合や! 急げ!」


『『ハッ!』』


「キラリン! ティターンと一緒に階段を守ってくれ! 絶対死守やぞ!」



 ウリエル、パルテア、スフィー、フワリンが一目散に戻ってくる。

 その間も七・八階層は姿を消していない敵攻撃陣と眷属の配下の魔物が戦っていた。

 向こうはもうAランクが空貴精(シルフス)(A)一体しかおらん。多勢に無勢。どう見ても勝ちや、それはいい。


 文字通り飛んで来た四人にウチは言う。



「まずは周囲の警戒をしながらウチと宝珠(オーブ)を守ってくれ。同時にウリエルはパルテアの回復」


「「ハッ!」」



 色々と理解できない部分は多いけど、アタランテと天使の姿が消えたちゅうのは二つの可能性がある。


 一つは『姿は消したけどまだそこにいる』場合。

 もう一つは『移動した』場合。


 前者でさらに察知できない″姿隠し″だった場合、狙いはウリエルたち強大戦力の排除か、直接ウチか宝珠(オーブ)を狙うこと。


 シュルクエールはウリエルを斃したいはずやけど、それが無理だと判断すれば塔主戦争(バトル)の勝利を優先するやろ。

 せやから玉座の間を守るのが第一となる。


 後者の場合も、七・八階層から最上階に移動してウチか宝珠(オーブ)を狙うことも考えられた。

 幸いにもウチの視界にはヤツらの姿はないけども、まだ警戒はしておく必要がある。


 シャルちゃんはその危険性に逸早く気付いたわけやな。

 【強欲】戦とか【影】戦で狙われたからかもしれんけど……流石やで。ウチはもう感謝しかない。



「みんな、警戒しながら聞いてくれ。周りに気配とかはあるか?」


「ありません。ここに来る途中でも完全に気配は消えていました」


「ドロシー様、塔内の別の場所に移動したというのは……」


「全階層見とるけど姿はないな。消えたまま動かれてたら分からんけど」



 これはもうシュルクエールの限定スキルに違いない。

 アタランテ一体だけならSランク固有魔物の特殊能力もありえるけど、天使二体もまとめて消えたんなら、それはもう『眷属を対象とした限定スキル』しかないやろ。


 問題はそれが姿を消すものか、ただ移動させるだけのものか、ちゅうところや。



「瞬間的に眷属を移動させるだけのもんやったら、その行先は【針葉樹の塔】しかない。【忍耐の塔】におらんのやからな」



 シャルちゃんの取得可能な限定スキルで【女帝招集令】ちゅうのがあったな。眷属を自分のもとに呼び寄せるとか何とか。

 おそらく同じようなもんじゃないかと思うとる。

 塔主の元に戻すのか、塔のどこかに戻すのかは分からんけど。



「じゃあ攻め込んで斃すしかない……ちゅうわけにもいかへん」


「姿を消しているだけの可能性があるからですね。全軍で攻め入るのは確かに危険です」


「そうでなくても危険や。こっちが攻め入った隙に塔に帰っていたアタランテがまた乗り込んでくることも考えられる。そうなれば単純に攻略速度で負けるで」



 敵攻撃陣を殲滅したし第二陣も送り込んでこない。であれば今度はこちらが一気呵成に攻め入る……ちゅうのが普通の考え方やけど、今回に関しては防衛を捨てるわけにもいかん。


 まだアタランテと天使が【忍耐の塔】に潜んでいるならそれに対抗できる戦力をウチの近くに置いておかなあかんし、【針葉樹の塔】に帰っていたとしても、また攻め込んで来る可能性がある。



 一度目であれだけスムーズに攻略しとったんや。二度目なんか倍の速さで攻略してきてもおかしくない。


 一方でこちらが【針葉樹の塔】を攻めても、初見の上、全十五階層を攻略することになる。

 速度では絶対に負けるし、防衛に戦力を置く分、攻撃陣はどうしたって弱くなるからな。普通に戦っても苦戦するちゅうことや。



 何をどうしたってウチはアタランテの対処を一番に考えなあかん。

 まとめると、考えられるアタランテの動きは三通り。


 ① 忍耐の塔に潜んで機会を窺っている

 ② 針葉樹の塔の大ボスとして待機している

 ③ 針葉樹の塔から忍耐の塔に攻める準備をしている


 こんな感じやな。

 これに対してウチはどうすべきか、全てを考慮して答えを出さなあかん。


 ホンマに厄介な相手やな。今さらながらに思うわ。

 いくつもの『天使の塔』を斃してきたのも頷けるし、十八年目Bランクちゅう年期を感じる。

 しかもあれだけ少ない攻撃陣でここまで翻弄してくるんやからな……完全に踊らされとるわ。



「一番安全なのは完全防衛策を継続することですが……」


「それは無理や。みんなをここでずっと警戒させ続けることになる。ウチかて神経疲れでダウンするわ」


「では攻め入るしかないということですね。防衛に残す者も必要でしょうが」


「本当はウリエル部隊とパルテア部隊を残したいけど、あまりに攻撃陣が薄くなるし、もしアタランテが大ボスで待ち構えてたらお終いやからな……せめてどっちかは攻撃に出さなあかん」


「防衛でしたらウリエルでしょうが、敵の主目的もウリエルの討伐でしょうからね」


「私自身を餌に、というのであればアタランテを釣れるかもしれません」



 じゃあウリエルを攻撃陣か? それを斃すつもりやったらアタランテは大ボスで間違いないやろな。

 でもウチの暗殺を狙ってくる可能性もある。

 パルテア一人で守りきれるかと言われると不安やし……。



「ちゅうか、パルテア。あの手斧は何やったん? 形状的に神授宝具(アーティファクト)やとは思うけど」



 シュルクエールの神賜(ギフト)が斧の神授宝具(アーティファクト)ちゅうのは知っとった。

 でもまさか持ち込んでくるとは思わなかったし、それがパルテアの右手を落とすほどのもんやとは意外にもほどがある。


 アタランテの『筋力』が高いのはステータスで分かってたけど、手斧の一撃で斬れるわけがない。

 パルテアの防御力は竜みたいなもんやで? ジータさんかて難しいと思うわ。



「はい、おそらくですが――」



 それを聞いてまたウチは頭を抱えた。どんだけ厄介やねん【針葉樹の塔】は。

 やっぱ即座に申請を却下してた一年前のウチは正しかったんやな。

 こんな相手やと知ってたら今でも二の足踏んでたわ。


 勝ち目があるとか抜かしてたこの前の自分を殴りたいわ、ホンマに。




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