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新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第十八章 女帝の塔は三年目に入ります!
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340:女帝・審判・風雷会合、終わります!



■シャルロット 17歳

■第500期 Bランク【女帝の塔】塔主



「良かったですね。お二人がこうして普通にお話しできて」


「ええ本当に。ティナちゃん嬉しそうだわ~」


「こちらとしても少し安心しました。シャルロット殿、改めてお礼を」


「いえ、こちらこそ。セリオ様には急な仲介を頼みましてありがとうございました」



 エメリーさんとティナさんは部屋の隅で笑いながら話しています。

 そしてそれ以外はテーブルを囲み、お茶の時間。

 シフォンさんは娘を見るような目でティナさんを見ていますね。まだ出会って二日目のはずですが。



「しかし今年の新塔主は本当に手強そうです。シフォン様の塔はセリオ様が監修を?」


「ええ。私も叔母に辛い思いはさせたくありませんので、プレオープンから口を挟むつもりでおります」


「プレオープンが一番大変ですからね。まぁティナさんがいれば問題なさそうですが」



 シフォンさんの雰囲気からすると、絶対に塔主に向かなそうな性格に見えますからね。妖精女王(ターニアさん)っぽいと言いますか。

 よほどの才がなければプレオープンで起こる侵入者の波に飲まれ、攻め込まれるのが目に見えています。


 少なくとも「絶対に侵入者を殺してやる」というような物騒な気持ちがどこかにないと塔主などできないのですよ。残念なことに。


 シフォンさんの場合、侵入者を殺すことに躊躇いがありそうですしね。平和主義者の雰囲気と言いますか。

 そうなるともう付け込まれるだけです。侵入者は塔主を殺したくて仕方ないのですから。

 本当に嫌になりますよね、バベルの塔主って。これに慣れてしまった自分を嫌悪したくなります。



 でもセリオさんが監修するのであれば少しは安心です。【審判の塔】は499期トップを独走中ですし、実績も十分。

 セリオさんが口を出して【風雷の塔】を創るというのであれば、何とかなりそうな気がします。

 私は口を挟まないですけどね。そこまでしてしまうと出しゃばりすぎですから。



「シャルロット殿、異世界人の神定英雄(サンクリオ)故の苦労などはありますか? 出来ればティナさんのためにも先に伺っておきたいのですが」


「そうですね、色々とありますが……まずは装備と所持アイテムでしょうか」


「ほう」


「あのお二人はこの世界では生産不可能な装備やアイテムを所持しています。消費アイテムは使えば終わりで補充は不可能ですし、侍女服にしてもああ見えてアダマンタイト並みの防御力があるそうですから当然補修もできません」


「えっ、そうなのですか!?」



 そうは見えないですよね。でもあの侍女服はすごいんですよ。

 それとおそらくティナさんも霊薬(エリクサー)とかとんでもない魔力回復薬とか持っているでしょうからね。

 所持数は今のうちに確認しておくべきでしょう。戦略物資みたいなものですから。



「武器も特殊すぎるので手入れが大変です。お二人は侍女仲間に鍛冶師や錬金術師がいらしたようなのですが、こちらの世界の常識を軽く超えた技術をお持ちのようですし、そうなるとこちらの世界ではどうにもできません」


「それは……なるほど、確かに困りました。ではシャルロット殿は武器の手入れをせずに?」


「普段はエメリー自身が行っておりますが定期的に鍛治師に見せています。鍛冶屋街に専属契約しているドワーフがおりますので」


「えっ、バベリオにドワーフ鍛冶師がいるのですか? それは知りませんでした」


「よろしければ今度ご紹介します。おそらくその者でなければティナさんの剣は手入れできないでしょうから」



 ティナさんも魔剣、魔竜剣、模擬戦用のミスリルソードなどを持っているだろうとのです。エメリーさんから聞きました。

 魔剣はスマイリーさんでも無理ですが魔竜剣ならばエメリーさんも見せていますからね。

 スマイリーさんももう慣れたものでしょうし、他の鍛治師さんに見せるよりも確実です。



「あとは単純に文化面で異世界とこちらの世界に差異がありますので、そこが大変ではないかと」


「そうですよね~。お食事一つとっても向こうとこちらでは違うそうですし~」


「うちの場合はエメリー自身が調理しますがティナさんは侍女仕事よりも戦闘面が主な仕事だったと聞いています。そうなるとお食事などはやはりこちらに慣れてもらうしかないかと」


「そうなのですか、伯母上」


「出来ないことはないみたいですけどね~、でも得意と言えるほどではないと言っていたわ。どうやらティナちゃんのお母さんがお屋敷の料理長だったみたい」



 そうなのですか。お母さんが料理長ならティナさんも料理を教えてもらっていてもおかしくないと思うのですがね……それがなぜ『侍女内最強の剣士』になってしまったのか。私には分かりません。



「あとはお風呂などの衛生面ですか。シフォン様の塔にはお風呂を創りましたか?」


「ええ、ティナちゃんの要望で大きめのお風呂にしました。私からすると貴族みたいで気が引けるのだけれど」


「伯母上、いつの間に……プレオープン用のTPが……」


「セリオ様、そこはティナさんを迎え入れるためと割り切って下さい。私も最初からかなり大きめのお風呂になりましたし、生活環境を整えるのに多くのTPを使いました」


「……まさかそれで『無の塔』になったのですか?」


「それだけが理由ではありませんが、他の塔より使えるTPが極端に減ったのは間違いありません」



 エメリーさんは私を「立派な【女帝】としなければ」と息巻いていましたからね。

 私としても塔主としてちゃんとしなければならないと思っていましたけど、エメリーさんの考える「女帝らしさ」が思いの外豪華だったので戸惑った記憶があります。


 ティナさんもエメリーさんと同じ暮らしをしていたはずですから、生活水準は高いでしょう。そこら辺はシフォンさんとのすり合わせになるでしょうね。



「衛生面で言えば石鹸や洗髪剤などもこの世界のものでは不足に感じるようです」


「あっ! もしかして例の店を出店したのも……!」


「元は小さな商店に生産を依頼したのですよ。エメリーの思い描く美容品を作って欲しいと。それが口コミで徐々に広まって中心部に移転するまでに至ったという形です。ですのでティナさんがそうしたものを欲しがるようでしたらランゲロック商店というところをお訪ね下さい。少々お高いのが難点ですが」


「なるほど、シャルロット殿が急に出店など何事かと思いましたが……そういうことでしたか」


「私のお店ではありませんよ。私はあくまで後援に留め、旗や塔章を飾っているだけですから」



 なんかセールスのようになってしまって申し訳ないのですが、ティナさんもエメリーさんと同じ悩みを抱えるでしょうからね。

 どうもエメリーさんの世界は綺麗好きな方ばかりのようなのです。こちらの世界とは感覚がまるで違うのですよ。

 だから塔(=城、おうち)もちゃんとしたものにしようとなるのですが。



「あとはそうですね……やはり訓練相手の不足でしょうか。シフォン様、ティナさんのステータスは確認しましたか?」


「はい。私は詳しくないのですがとってもすごいってことはよく分かります」


「私もお聞きしました。おそらくエメリーさんも似通った高さなのではないかと」


「おそらくはそうでしょうね。しかしそうなると仮にSランク固有魔物を召喚したところでティナさんの練習相手にもなりません。『訓練の間』でエメリーと模擬戦をするのが一番なのですが、同盟相手でもないのに手の内を見せるのはそちらも不都合があるでしょう」


「そうですね。つまりは自主練しかできないということですか」


「ティナさんは戦闘強者のはずです。日々の鍛錬を怠ることはご本人が許さないでしょう。その環境を整えるのもシフォン様のお仕事になるかと存じます」



 エメリーさんは毎日の侍女仕事の隙間時間に鍛錬していますからね。それが当然のこととして。

 私の場合は身近にジータさんがいますし、塔主戦争(バトル)を頻繁に行っていたので、ある程度戦わせることが出来ていたと思います。

 でもシフォンさんに同じようなことが出来るはずもないですしね。困り所でしょう。



「ただいくらティナさんがお強いと思っていても負けがありえるのがバベルの恐ろしいところです。くれぐれもご注意下さい」


「と申しますと?」


「異世界にはなくこちらの世界にあるもの……例えば限定スキルであったり、魔物の固有スキルであったり。そうしたものと相対せばいくら強くても無力になりえますから」


「ああ、なるほど……」


「もしシフォン様が防御型の限定スキルなどを取得可能なら早期取得を目指すことを考えておいたほうがいいでしょう。とは言え数年は先の話だと思いますが」


「ちなみにシャルロット殿は……とお聞きするのは無粋ですね」


「ええ。そこは秘密とさせて頂きます」



 エメリーさんも限定スキルには現在進行形で苦労していますし、【強欲の悪魔マモン】の固有スキルには殺されかけましたからね。

 いくら強くてもそれを覆す方法はあるのです。


 おそらくセリオさんあたりはティナさんのステータスを見て無敵に思えているかもしれませんが、それは慢心になってしまうのですよ。私が偉そうに言えた義理ではないのですが。



 ――と、色々お話ししたところでお開きになりました。

 またお会いする時はセリオ様との連絡をやりとりするという形に。

 一先ずは安心ですね。目的は達成しましたし、私は満足です。





「ウリエルさん、お疲れさまでした。ありがとうございました」


「いえ、お役に立てたのなら幸いです」



 会談にはドロシーさんからウリエルさんをお借りして臨みました。ウリエルさんの初外出をこんな形で使ってしまって申し訳ないです。


 一応ドレスに着替えて頂きまして誤魔化してみました。私の眷属ですよ、【忍耐の天使ウリエル】じゃないですよ、と見せるために。まぁ見る人が見れば速攻でバレますが。


 そのまま【忍耐の塔】にお邪魔してドロシーさんと打ち合わせです。



「ドロシーさん、どうでした?」


「バッチリやで。まぁステータスの表記的にはエメリーさんとどっこいどっこいやな」



 ウリエルさんのお仕事は主に三つ。


 一つは<悪意感知>でセリオさん、シフォンさんを警戒するのと、限定スキルを警戒すること。


 もう一つは<人物鑑定>でティナさんのステータスを見て、ドロシーさんに眷属伝達すること。これはエメリーさんからお聞きしている情報との差異を知るためです。


 最後の一つは<アイテム鑑定>でティナさんの魔剣を見ること。これはただの確認ですね。どう表記されているかというだけです。


 で、確認したステータスがこちら。


=====

名前:ティナ

職業:シフォンの神定英雄(サンクリオ)

LV:99

筋力:S

魔力:B+

体力:S+

敏捷:S+

器用:A+

スキル:生活魔法、礼儀作法、気配察知、危険察知、聴覚強化、跳躍強化、嗅覚強化、剣術、双剣術、気配微小、流水の心得etc

=====


 うわぁ……とんでもないですね。ある程度分かっていたことではありますが。

 レベルやステータスの表記的にはエメリーさんと大体同じなのですが……。



「やはりこちらのステータス表記では情報不足ですね。これならば誰かに見られても問題ないでしょう」


「敏捷がエメリーさんの倍って本当なんか? エメリーさんでも『S』なんやろ?」


「それ以上が全て『S+』なのですから仕方ありません。表記上の最高値であるというだけです」



 恐ろしい話ですね。こうして見ると大差ないのですが実際には大きな差があると。

 まぁエメリーさんにしても『器用』はティナさんの何倍もあるそうなのですが……。


 あとは魔剣の確認ですが、腰に佩いている状態でも見られるようですね。それも収穫です。

 【魔剣アドラメレク:魔力を籠めると雷を纏う】と見えるそうです。普通の武器と比べれば極端に少ない情報。



「やはり情報が不足していますね。これも見られても問題ありません」


「本当は違うのですか?」


「使うと身体を雷で纏って敏捷値が増す代わりに体力を徐々に消耗します。その状態で触るだけで相手は感電しますし、剣で斬りつけても同じことです。何より問題は周囲の味方に被害が出るということ。傍で立っているだけでも痺れますからね」


「うわぁ……ピーキーやなぁ……」


「エメリーさんの魔剣もそうですけど易々と使えないものばかりなんですね……」



 だから訓練でも不用意に使えないみたいなことを仰っていたのですね。

 そうなると【風雷の塔】でも訓練が限られそうですし……やはり『訓練の間』を考えておくべきですか。





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[気になる点] 338話でシフォンはティナのステータスに関して →Lv99だったしS+が二つとSが二つと…… おっしゃっていましたが、今話でのステータスではs+が二つとSが一つのところ
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