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新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第十六章 女帝の塔は相変わらず戦ってます!
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306:忍耐の塔は攻め込まれています!



■ルチアーノ 26歳

■Aランク冒険者(バベルCランク) パーティー【萌芽流麗】所属



 年が明け、俺たちは【忍耐の塔】へと挑戦を始めた。

 情報を集め、しっかりと準備をした。油断はしない。俺たちは冒険者の模範たるAランクパーティーだからな。


 新年始めということもあるだろう。【忍耐の塔】は多くの挑戦者で賑わっていた。

 いくら【彩糸の組紐(ブライトブレイド)】とかいう同盟が人気だからといってここまで集まるものかと驚いた。

 俺たちは人波に紛れるようにして探索を始める。



 第一階層は『鉱山迷路』だ。そこで早くもウチの斥候が嫌そうな声を上げる。



「まぁ聞いちゃいたけどよ、こりゃ一苦労だぞ。ペースは少し遅くなるから承知しといてくれ」

「そんな酷いのか」

「数もそうだが配置が厭らしすぎる。Cランク程度じゃ結構ハマるヤツも多いんじゃねえかな」

「お前だったら問題ないだろ?」

「俺でも見逃しそうで怖えよ。お前らはもう一歩後ろくらいで付いてきてくれ。各々警戒しつつなんかあったら頼むわ」



 こんな慎重なのは見た事がない。いつもは飄々としてるんだけどな。

 曰く、今日は探索初日だから余計に気を張っているそうだ。

 何回か探索して塔に慣れれば罠のクセも分かるだろうし、そこまではゆっくりやらせてくれと。


 そういうことなら是非もない。特にこの塔では斥候が生命線だからな。存分に慣れて欲しい。



 一階層は魔物もEランクの雑魚程度で基本は罠と迷路の合わせ技。

 時間をかければ問題ないと、俺たちは二階層に進んだ。

 今度は『沼地』だ。足元も悪いし、草も多い。屋外階層だと言うのに見通しも良くはない。


 ただ屋外階層が故に罠はほとんどないらしい。

 その代わり、沼地ばかりで探索しにくく、魔物が奇襲してくることが多いと。


 魔物自体はE~Dランク程度なので雑魚なのだがその配置が厭らしい上に、毒持ちばかりだ。

 近付かせないためには<気配察知>等の斥候スキルがやはり必要になってくる。

 一応最終地点にボスがいるが、せいぜいマッドゴーレム(C)程度だ。俺たちからすれば特に苦労はない。



 続く三階層は『湿地』。また屋外階層だ。

 しかし二階層以上に背の高い草があちこちにあり、足元の悪さと併用するように罠が多く置かれている。


 屋外階層だから罠をおけない、と誤認させるための二階層だったわけだ。逆に三階層の罠にハマりやすくさせている。

 そうした思考誘導がすでに二年目の塔主ではない。塔主が罠のプロフェッショナルと言われているわけだ。


 ここではD~Cランクの魔物が奇襲をしてくるが、これもまた毒持ちばかり。アラクネ(D)などは糸で行動阻害もしてくる。

 空にはパープルモス(B)やハミングバード(C)も見かけた。どちらも状態異常を引き起こす魔物だ。

 そうして空に注意を向けさせて地面の罠にかかる……という厳しさ。

 これでウチに斥候がいなかったらどうなっていたことか。少なくとも解毒薬の消費は増えていただろう。



 初日は四階層に上がってすぐに転移魔法陣で帰った。

 丸一日でそこまでしか行けなかったわけだ。それほど時間をかけて探索したと。

 しかしおかげでウチの斥候も多少、罠のクセを掴んだらしい。ルートもある程度見えた。

 これで次回以降は少しずつ上に行けるだろう。





■ドロシー 25歳 ドワーフ

■第500期 Cランク【忍耐の塔】塔主



 新年明けてから十日ほど経ったある日、ウチは画面に妙な冒険者パーティーを見つけた。

 いや、数日前から気にはなっててんけどな、五階層の『トラップ回廊』を結構すいすい攻略しとるからさすがに妙やなと。


 前に【死屍】のアンデッドに入られた時から最前線だけやなくて下層もなるべく注視するようにしてたんや。


 今ではあの時と違ってスフィンクス(スフィー)、ウリエル、パルテアもおるしな。

 シャルちゃんとこの六女王会議じゃないけどウチも眷属と一緒に画面を見つつ塔運営をしとる。

 せっかく四人の目があるんやから、塔全体をくまなく見ようと、そういうわけや。


 だからこそ早めに気付けた。

 新年で新規に入って来た六人パーティーのことを。



 まず装備が良すぎる。ブーツや外套、服に鎧、剣士が持っているのはミスリルソードや。

 まぁCランクでも中には金持ち冒険者もいるわけで――貴族関係者とかな――装備だけで異常と見なすわけにはいかん。

 ただ気になる要因の一つではあった。


 しかし斥候が優秀すぎるちゅうのが他のパーティーとの大きな違いや。

 下層の罠なんかほとんどかからんし、誰も気付かないような天井付近の罠にも注意の目を向けとったように見えた。


 いくら時間をかけても普通のCランクの斥候じゃ気付かんやろ。

 察知スキルの練度と、警戒の仕方がCランクばなれしとると思ったわけや。



 四階層の『尖岩洞窟』なんか最たるものやな。

 歩きづらい上に罠も見つけにくいし魔物の奇襲も受けやすい。下層のトラップの集大成みたいな階層や。

 そこでもヤツらは時間をかけて慎重に探索をしていた。ほぼノーダメージや。


 ボス部屋にいたアイアンゴーレム(C)とロックゴーレム(D)の部隊も危な気なく斃した。

 これであの装備が金持ちの見栄で用意したもんじゃないと証明された。実力ありきの装備やと。



 んで今は五階層の『トラップ回廊』を進んどる。

 【忍耐の塔】の中では最難関の罠ばかりを詰め込んだ難所や。今までアンデッド以外は誰も突破していないそこを、ヤツらは慎重に確実に進んどるわけや。



「ちゅうわけやねんけど、どう思う?」


『まぁCランクじゃねえのは確かだな』


『ええ、私の元いたパーティーの少し下……Bランク上位かAランク下位程度でしょうか』



 マジかー。ジータさんとシルビアちゃんがそう言うなら間違いないやろ。

 一応画面共有して見てもらった甲斐があるわ。


 つまり偽Cランクちゅうことやな。なかなか珍しいやないか。

 プレオープンの時とかは偽Fランクが入ってたらしいけどな。Cランクにもなって偽Cランクが入るとは思ってなかったわ。



『それでドロシーさん、どうするんですか?』


『一応ファムで探っておくか?』


「いやええわ。分かっただけで十分や。こっちで対処する」



 どうしてウチの塔に乗り込んで来たのかは分からんけど、偽Cランクと分かっただけでも満足や。

 あとはどうにでもなるからな。



『どこかの調査目的かもしれませんわよ?』


「その″どこか″は気になるけどウチの塔の出来を計る試金石みたいなもんやからな。こっちも利用させてもらうわ」


『情報が洩れてもよろしいと?』


「ウリエルとパルテアは見せんし、まぁ……見せる時は帰さん(・・・)から大丈夫や」


『『うわぁ……』』



 こいつらが本当にAランク下位程度やとしたら、今の【忍耐の塔】がどの程度通用するか分かるからな。

 今後ウチもBランクに上がるわけやし。その時に備えて今から試算すると思えばいい機会や。

 少なくとも今の罠だと通用しないと分かったからな。それだけでも収穫やで。


 あとは六階層以降でどこまで進めるか。

 【忍耐の塔】は五階層までの『罠』と六階層以降の『魔物』で全く変わるからな。

 今配置しているその魔物がAランク下位の侵入者にどれだけ有効か、それも試さなあかん。

 やすやす攻略できるレベルなのか、それともAランク下位でも撤退するレベルなのかと。



 でもなぁ……『砦』で変なルート選んだらリザード(B)の群れがいる魔物部屋やったり、ウィッチクイーン(フワリン)の部隊がおるし……。

 正解のルートを引いてもボス部屋にはスクイッシュドラゴン(★A)がおるんよなぁ……さすがに厳しいか。



「シルビアちゃん、【氷槍群刃】やったらウチの六階層突破できるか?」


『そうですね……魔物部屋さえ引かなければどうにか出来るかもしれません。私がいた頃の【氷槍群刃】であれば、ですが』


「シルビアちゃん抜きやったら?」


『スクイッシュドラゴンに勝てるかは微妙ですね』



 なるほど。【氷槍群刃】はバベリオでも有数のAランクパーティーだったらしいから、シルビアちゃん込みでAランク上位やろ。

 そこからメインアタッカーが抜けてAランク下位だとすれば、あいつら六人といい勝負かもしれん。

 それでもスクイッシュドラゴンには微妙なんか。さすが固有魔物やな。



「七・八階層は?」


『無理ですね。私を入れても突破できないでしょう』



 断言できるレベルなんか。

 七・八階層は『大広間』でティターン(S)が鎮座しとる。あとはスフィーのガーゴイル部隊が合わせて空襲を仕掛ける感じや。

 B~Sの部隊。さすがにAランクパーティー一つ程度じゃ無理なんか。


 まぁいずれにせよどの程度戦えるのかは見ておいたほうがいいやろな。これも後学のためや。


 本当は七・八階層にヘルキマイラ(★S)もおんねんけど……さすがに見せられんな。自重しよう。




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