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新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第二章 女帝の塔はオープン後も忙しい!
27/486

27:私以外の皆さんのおかげで順調です



■ストルス・ガーナトン 40歳

■第485期 Bランク【力の塔】塔主



 向こうの攻撃戦力は神定英雄(サンクリオ)の四本腕メイドと鳥が十羽。


 風属性の【エアリアルクロウ】と氷魔法が達者な【アイスバード】が五羽ずつ。おそらく【輝翼の塔】の戦力だろう。

 こっちには【噴石の塔】の戦力があるからな。火属性対策ともとれる。



 メイドは鎌みたいな大きな刃が特徴的なハルバードを、四本持って走っている。鳥はその後ろに付いてきているな。


 あのペースで走り続けるつもりだろうか。

 走れば罠にはまりやすくなるし、魔物と戦う為の体力を消耗する。そんなことは誰もが知っている常識だ。

 しかしそんなことはおかまいなしとばかりにメイドは走っている。



 【力の塔】は全体的に広々とした創りになっている。平原や荒野、丘陵、山といった構成が多い。

 というのも【力】で召喚できる魔物は亜人系が多く、強い魔物となると軒並みデカくなるのだ。巨人系とかだな。

 だからこそそういった魔物が戦いやすいように障害物の少ない階層が主となる。


 しかし侵入者の探索時間を伸ばしたいという塔主として当然の考えもあり、低階層は広めの迷路にしてある。

 そこに配置したのは大きくてもオーク程度の魔物。

 弱くはなるが魔物が戦いやすい。まぁDランクやEランクからすればオークも強い部類だろうが。



 ところがメイドはオークなど雑魚だとでも言うように、走りながら次々に斃していく。

 鎧袖一触。オークの群れがまるで障害にならない。

 見た目には全くそぐわないが、まさしく神定英雄(サンクリオ)と言える戦いぶりだ。



「罠も完全に回避しているな。走りながらどうやって見極めているんだ」


「熟練の斥候職って感じね……いえ、それでも走りながらできるとは思えないし、何よりメイドだし……」


「というか順路をまっすぐ走っているのが意味わからん。ストルスさん、順路変更してますよね?」



『戦場となる塔は申請を受理されてから塔主戦争(バトル)当日まで階層構成の変更を禁ずる。

 但し同盟の魔物を配置する事は許可する』


 この条文が痛い。

 受理されてから順路の変更はできない。もっとも定期的に変更はしているから、仮に下調べして地図でも持っていようが無意味なのだが。


 おまけに自分の戦力を順路に集中させてメイドを足止めするということもできない。

 できるのは同盟の魔物を追加配置するくらい。

 しかしそれも『総数千体』の縛りで無駄に配置することができない。


 通常の運営――侵入者に対する程度の足止めでしか、メイドの前に置けないのだ。

 これが眷属などであればある程度自由に動かせるが……低階層に出向かせるわけにもいかん。

 万が一のことを考えれば、上層の防衛を固めておく必要がある。



「……しばらくは様子見だ。メイドの能力を調べつくす」





■エメリー ??歳 多肢族(リームズ)

■【女帝の塔】塔主シャルロットの神定英雄(サンクリオ)



 なるほど次は右ですか。

 これはなかなか便利な魔物ですね。【女帝の塔】にも欲しいくらいです。召喚できないらしいですが。


 おそらくわたくしの様子を見ている相手方の皆さんは『わたくしが先頭を走り、なぜか順路ばかりを選んでいる』とお思いでしょう。


 実際は、わたくしの前に一体の魔物が飛んでおりまして、わたくしはそれに付いて行っているだけです。



 フッツィル様がこの日の為に召喚し、眷属とした【クリアパピオン】という蝶の魔物。

 見た目は完全に透明。わたくしは<気配察知>でその位置を把握して進んでいるというわけです。


 しかもこの蝶、見た目に反して神聖属性の魔法が得意とのことで、回復も行えるという有能ぶり。

 疲れてきたら自分で回復できますから、魔力の限り飛び続けられます。


 つまり、攻略に関してはファムによって集めた情報をフッツィル様が眷属のクリアパピオンに伝達。

 指定されたルートで進み、途中の罠はわたくしの<罠察知>で避け、魔物は蹴散らすのみと。こういうわけです。



 念の為、エアリアルクロウとアイスバードも付いてきてもらっています。

 わたくしの速度についてこられる魔物であり、遠距離魔法要員として。

 わたくしは遠距離と対魔法が苦手ですからね。そういった魔物が出てこないとも限りません。


 まぁ遠距離は弓や投擲がありますし、魔法に関しては【魔竜剣】で防御も攻撃もできるのですが。

 それでも多角的な攻撃をされればさすがに防げませんからね。念の為です。



 さて、そろそろ一階層のボス部屋ですね。

 さすがにBランクの塔ともなると、各階層にボス部屋があるのですね。

 一階層は確かハイオークでしたか。


 速度を落とす必要もないでしょう。さっさと二階層に上がります。




■シャルロット 15歳

■第500期 Dランク【女帝の塔】塔主



クリアパピオン(シィル)、二階層最初の曲がり角は左じゃ。シャル、エメリーに伝えてくれ。二階層から雑魚敵にフォーンが混じってくる。【詩人の塔】の戦力じゃ」


「フォーンってどんな魔物です?」


「耳と下半身が鹿の人型じゃ。笛を鳴らして混乱状態にしてくるぞ」


「分かりました。エメリーさん、聞こえますか――」



 フゥさんはとても忙しそうです。ファムからの情報は随時入るらしく、それを精査し、クリアパピオン(シィル)に伝えなくてはいけません。

 最初の方の迷路階層さえ抜ければ多少は楽になると思うのですが、今は頑張ってもらうしかないです。


 でも情報さえあれば攻撃に関しては今のところ問題なし。

 エメリーさんにお任せです。それで大体勝てます。



 そうして急いで攻めている一方、こちらの防衛は時間をかけさせないといけません。

 ただでさえ向こうが十五階でこちらは七階。普通に進むのだって倍以上の速度でなければ勝てないのです。

 攻撃は急ぎ、防衛は足を止めさせる。これを徹底する必要があります。



「やっぱ向こうもある程度情報は持ってるようやな。事前に多少いじっておいて正解やで」


「大きな変更はできませんでしたけどね」


「そんなことしたら余計に警戒されてまうわ。少なくとも三階層までは『通常の【女帝の塔】』を演出させんといかん」



 一階層は街並みの迷路を多少動かして、罠の配置を変えたりしただけです。

 一応フゥさんの鳥とかも、飛びつつ屋根の上から魔法を撃ったりしてもらっています。

『同盟の魔物を配置している』と印象づける為に。


 これが例えば『城門前広場にヴィクトリアさんが待ち構えている』とかしてしまうと、警戒させてしまい、一階層の時点で増援を呼んだり対策を練り直したりといった手を打たれてしまいます。


 あくまで『通常の【女帝の塔】に同盟の魔物を配置しただけ』と思わせておく。

 そうして進んだ先で徐々に「あれ?」と思わせたい。

 その時すでにだいぶ奥まで探索が進んでしまっている。今からでは手が打てない。そうしたいのです。



「本番は四階層からやな。ウチの出番はまだ先や」


「ドロシーさんは守備の要ですからね。攻撃の要はフゥさんですし。お二人がいて良かったです」


「何言うてんねん。シャルちゃんの戦力がなかったらそもそも戦えへんねんで? 実際斃すのは全部シャルちゃんにお任せなんやから」



 そう言ってもらえるのは嬉しいんですけどね、私はエメリーさんとか眷属の皆さんにお任せなので。

 私の力かと言われると何とも微妙なところです。苦笑いしかできません。


 いや、【女帝】としては「当然です」って顔しないといけないんでしょうけど。ドロシーさんとかフゥさんの前ですしそこまで気を張れません。





 その後、相手の攻撃部隊は一階層と二階層を難なく突破しました。

 多少道に迷ったり、罠で数体のスケルトンを斃したりはしました。鳥さんも魔法でダメージを与えていましたね。


 でも相手の主力は残ったまま、三階層の【牢獄】へと入ります。


 ここにも罠は多いのですが、向こうの罠への対処法が「スケルトンに進ませて罠を踏ませる」という非人道的(まぁ骨ですけど)なものでして、これにより今のところ大した成果は上げられていません。


 普通のパーティーと違って大人数の部隊ですから、そうでもしないといけないのでしょう。

 察知できたところで全員が見事に回避、とはならなそうです。


 一応、ヴィクトリアさんに頼んでアラクネを多めに<配下召喚>してもらっていたので、十体くらい斃すことができました。

 こうして徐々に削っていくしか今はできません。



 そうして迎えた四階層。

 ここは当初【小通路と小部屋の迷路】を創っていましたが、侵入者が未探索であるのをいいことに、申請受理前に大掛かりな改装を行いました。


 コンセプトは【罠だらけの坂道】です。階層デザインはドロシーさん。

 数を減らすのもそうですが、どちらかと言うと、足止めに重きを置いた階層となっています。


 直径700m、天井高7mをめいっぱい使い、上がり下がりの坂道はほぼ一本道。

 急こう配で上ることさえ大変な坂も。そしてそこには大玉が転がってきたり嫌がらせのような罠。

 狭い場所は一人で通るのがやっとで部隊で進むのは無理ですし、かと思えば天井が低くてオーガが腰を曲げて進まざるを得ない場所もあります。


 配置できる魔物も当然限られますが、私やフゥさんのピクシーが狭い場所から魔法を撃ったり、ドロシーさんのソリッドヘッジホッグがトゲトゲの状態で転がっていったり。

 それもまた嫌がらせのような攻撃ではありますが、階層のコンセプトとしては合っていると思います。



 仮に普通の侵入者が入るとすれば、一目で撤退して対策をとって仕切り直すでしょう。

 しかし今は塔主戦争(バトル)の最中。そんな暇はありません。

 じっくりとしか進めず、徐々に疲弊し、少しずつ脱落者を出し、焦れながら進むしかありません。



「はーっはっはっは! どや! これがウチの罠地獄や! 【忍耐】が試されるでえ!」


「イキイキしとるのう……塔主としてどうなんじゃろ、こういう塔は」


「ま、まぁ神様が何も言ってこないですし、アリなんじゃないでしょうか……」



 普通の『塔』ではないと思いますけどね。今は目的に沿っていると思います。


 でもこれで時間を稼げるのは確実。

 いずれ突破されるとは思いますがその頃には数が少なからず減っているはず。

 そうなると五階層と六階層は「数」と「質」の勝負になります。


 その隙にエメリーさんが【力の塔】を攻略してくれるといいのですが……。




序盤はフゥ無双、中盤はドロシー無双、全体で見ればエメリー無双ですね。

シャ、シャルロットさん……?


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― 新着の感想 ―
[一言] いつも楽しく読ませてもらってます┏oペコッ  カスタム侍女の方を読み終えたせいか、エメリーさんが苦戦する姿が予想できません\(^o^)/ なので両方の塔をお互い攻め合うというのはいいですね…
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