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新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第十一章 女帝の塔はエルフの為にも戦います!
211/486

203:何か良からぬ動きがありそうです!



■ザリィド 34歳

■第486期 Bランク【霧雨の塔】塔主



 相変わらず厳しい状況は続いている。

 同盟を失ったのはどうでもいい。むしろ【春風】と【六花】の戦力を計れただけ儲けもんだ。

 ただその【春風】を含むエルフの塔に攻め込む手立てが見えねえ。


 俺からは【春風】【紺碧】【聖樹】と塔主戦争(バトル)申請をしているが受理はされねえ。

 同盟を散々荒らした【春風】が調子に乗って受理するか、同じBランクの【聖樹】ならばワンチャン受けるんじゃねえかと思ったが無理だ。


 逆に【緑】からは塔主戦争(バトル)申請が来てはいるが……さすがに受けるわけにはいかねえ。

 エルフは欲しいが勝てる見込みがなさすぎる。



 じゃあバベルの外でエルフを探すしかねえってところだが闇ギルドには情報がねえし【色欲】に尋ねても手応えがねえ。


 さてどうしたもんか……この状況で俺にできる手は――





■ケィヒル・ダウンノーク 50歳

■第483期 Aランク【魔術師の塔】塔主



 コパンの<青き水鏡>によって得られる情報は我々に多くの″利″を(もたら)せている。


 それは斃すべき塔の情報であったり、遠く離れたメルセドウ王国のことであったり。

 我々にとってはどちらも掛け替えのないものに違いない。


 現在の最優先課題はエルフの拿捕であり、その為の調査である。

 メルセドウ国内で探しつつ、我々はバベルにいながら出来る手段として闇ギルドや【色欲】に依頼し、バベリオでもエルフを探している。色よい返事はまだないが。



 同時にエルフの塔への塔主戦争(バトル)も狙わなくてはならない。

 エルフ塔主から直接エルフの里の情報を得るために。

 もしそれが出来れば大戦果であることは間違いない。優先的に狙う必要があるだろう。


 <青き水鏡>によってエルフの塔の情報は割れている。

 【春風】【紺碧】【聖樹】の三塔は我らの誰が当たっても斃せるし、Aランクの【緑】であっても私の【魔術師の塔】ならば斃せると確信している。


 しかし申請はすれど受理はされず。それはCランクの【宝石】がBランクの【聖樹】に申請しても同じだ。

 エルフの警戒心は本当に強い。戦えば勝てるのに戦う機会を得られないのだ。



 そんな時、新たな情報が舞い込んだ。


 【輝翼の塔】のフッツィルという子供がエルフであると。



 これの扱いに悩んだ。

 既存のエルフ四塔と同じように狙うのは当然なのだが、こやつはアデル・ロージットが所属する同盟の一塔なのだ。

 ロージット公爵家が貴族派にとっての大敵であるならば【赤の塔】も討伐対象の筆頭に違いないのだが、討伐する前に情報が流れるとまずい。


 つまり我々が【輝翼の塔】もしくは彼の同盟に塔主戦争(バトル)申請をし、それが却下された場合の話だ。


 【輝翼】だけを狙った場合、その理由を探られるだろうし、ひいては我々が情報を搾取していると感付かれる可能性がある。


 同時に我々がエルフを狙う理由としてゼノーティア公の御趣味まで知られれば……それは破滅を意味するのだ。

 アデル・ロージットが近くにいるのだから我々への警戒は一層強いだろう。



 従って【輝翼】を狙うならば【赤】を同時に巻き込む同盟戦(ストルグ)しかない。これならばエルフどうこうを抜きにして王国派に対する貴族派の動きとだけ捉えられるはずだ。


 おまけに新塔主である【六花の塔】、つまりシルビア・アイスエッジをも同盟に取り込んだ。王国派の色が濃くなったのだ。


 だからこそ仕掛ける意味がある。

 反貴族を謳う王国派を討伐し、同時に主目的であるエルフに手が届くのだ。



 その為に彼の同盟、六塔は全て<青き水鏡>で調査した。

 正確には時間を掛けて五塔を調べ、頭を悩ませているところに六塔目の【六花】が加入したのだが。もちろんその後【六花】も調べさせた。


 その情報をもってすぐにでも同盟戦(ストルグ)を仕掛ける――としたいところだが頭を悩ませている問題がある。


 調べたコパン曰く、彼の同盟が想定以上に強いと。


 それは実際に見たコパンの意見に加え、コパンの神定英雄(サンクリオ)であるベンズナフのお墨付きでもある。



 ベンズナフの実力はよく知っている。私も何度も塔主戦争(バトル)で戦う様を見ているし、十年以上も関わっているのだ。

 世間的に名が知られていなくとも……いや、だからこそと言える強さがある。

 隠密としての動きに加えて見たこともない闇魔法を操るのだ。

 相手がSランクの魔物だろうが、名の知れた神定英雄(サンクリオ)だろうが、ベンズナフの前には屈するしかない。


 そのベンズナフが警戒し忠告を促しているという。



『ジータや【輝翼】の神定英雄(サンクリオ)が相手ならば勝てるとベンズナフは言っています』


「おお、英雄ジータが相手でもか。それは重畳だな」


『正面から戦わなければ、とのことですが』



 さすがのベンズナフであっても正面からの一対一。近接戦でジータに勝つのは難しいらしい。

 相手が相手なのだから当然とも思うが、それでも勝てると口に出来るベンズナフはやはり最高峰の神定英雄(サンクリオ)に違いないとも思う。

 つくづくコパンも恵まれたものだ。そのコパンを同盟に引き入れた私もな。



『しかし【女帝】の神定英雄(サンクリオ)は別です。ジータの何倍も強く、ベンズナフにして戦いたくない相手だと』


「なっ……! あのメイドが……?」



 おそらく異世界から召喚された四本腕のメイド。

 戦闘からは縁遠い存在のはずだがその噂は昨年のプレオープンの頃から話に上がっていた。

 四腕を駆使して様々な武器を使い、侵入者の悉くを殲滅すると――。


 しかし塔主総会で見ても、新年祭で見ても、女帝に付きそうただのメイドにしか見えない。


 だからこそ眉唾物として話半分にしていたのも事実だ。

 いくら【女帝の塔】の戦果が凄まじく歴史的躍進を続けていても、それがメイドの実力と繋がらなかったのだ。



 ところがベンズナフはそのメイドとは戦いたくない、それほどの手練れだと言う。ジータ以上の英雄なのだと。


 つまりあのメイドがいるからこそ【女帝】は連勝・躍進し、同時に同盟全体の力も引き上げたのだ。


 【赤の塔】も二年目にしてすでに【宝石の塔】以上の塔を創り上げているそうだが、その背景にはアデル・ロージットの『神童』としての才、英雄ジータの力に加え、【女帝】の同盟に取り入ったことが大きく関与しているのだろう。



 【女帝の塔】が今まで戦った相手――【正義】、【力】同盟、【風】同盟、【強欲】、【傲慢】同盟、どれも簡単に下剋上できる相手ではない。


 それを打ち倒すためには相手にとって理外の力が必要であり、それを担っていたのがあのメイドだということだ。



「私の【魔術師の塔】と【女帝の塔】とではどう見る」


交塔戦(クロッサー)ならばケィヒル様が勝ちます。いくら強いと言ってもそこは二年目のCランク。戦力差は大きいですから』



 コパンの情報とベンズナフの意見を合わせても私の優位は変わらないらしい。当然と思う反面、内心胸をなで下ろした。


 私の持つ最高戦力はSランク固有魔物の【魔骸王ディストア】だ。他にもSランクはいるが大ボスはディストアに任せている。


 メイドとディストアが戦った場合、それが一対一ならばディストアはおそらく負けるという。これはベンズナフの意見だ。


 しかし保有している魔物の総数、高ランク魔物の数の差は歴然。

 メイドが攻撃側になったとしても防衛はせいぜいSランクが一~二体程度になるだろうと。

 であれば防衛では足止めに専念し、攻撃を厚くすれば間違いなく勝てる。というコパンの意見だ。それは私もそう思う。



 しかし同盟戦(ストルグ)となると話は変わる。

 その防衛陣に【赤】【忍耐】【輝翼】の戦力が加わるのだ。Sランクの魔物もいれば、二人の神定英雄(サンクリオ)もいる。


 それに対して【魔術師の塔】には【青】【宝石】の戦力が加わるわけだが、その差は著しく狭まるだろう。


 【青】は現状で【赤】に勝てるはずだが【宝石】に相応の力はない。

 そうなるとSランク魔物の数だけ見てもおそらく等しくなるか、最悪を想定すれば逆転されてしまう。



 輝かしい戦歴はメイドの力が起因しているのは間違いない。しかし結果として同盟そのものが急速に力を持ってしまった。


 いくら強くても二年目のCランクだからこの程度だろう――そういった常識が通用しない相手なのだとコパンは言う。


 【宝石の塔】をすでに追い越し、【青の塔】に迫る戦力が三塔。私の【魔術師の塔】に迫る戦力が一塔。それが彼の同盟なのだと。



 ついでに言えば、もし同盟戦(ストルグ)をするならば、相手は戦場を【世沸者の塔】にするはずだ。

 そうなればいくらこちらの戦力を集めても勝ちが見えない。

 だからこそ同盟戦(ストルグ)の際には条件をつめる必要があり、こちらにだけ有利な条件を提示できるはずもなく、それはつまり苦戦を意味するのだ。



 そういったわけで【輝翼】相手の交塔戦(クロッサー)には持っていきづらく、同盟戦(ストルグ)するには不安が残る。

 せめて【傲慢】同盟と戦う前であれば、と思ったが、その時は【輝翼】がエルフだとは気付いていなかったから仕方ない。たらればだ。



 頭を悩ませていた我々のもとに一通の手紙が届いた。宝珠(オーブ)の通信でだが。


 差出人は……【霧雨】のザリィド? なんだいきなり。今まで接点など皆無だと言うのに……。


 そう思い中身を確かめた。すると――



「……【春風】の情報を売りたい、と」


『闇ギルド経由で我々の情報を入手していたようですな。それでどう動くかと思いましたが……おそらく恭順の一手のつもりでしょう。それにしては随分とお粗末ですが』



 ザリィドは闇に属しながら這いずり回る鼠だ。目障りではあるが構う価値もない男。

 ヤツがこうして手紙を送って来たことには色々と理由が考えられる。


 想像はつくが……さてどうしたものか。



「斬り捨てるのは簡単だが……」


『ええ、今でしたら多少の価値が生まれます。駒としては使える部類かもしれません』





ザリィドは塔主として有能ですけど阿呆でもあります。突拍子もない意味不明な行動をとられると頭脳派は読めずに混乱する……というお話。


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