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新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第十章 女帝の塔の日常は何かと忙しい!
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200:シルビアさんは旧友と語らい合います!



■シルビア・アイスエッジ 22歳

■第501期 Eランク【六花の塔】塔主



 同盟の皆様と別れ、私は元パーティーメンバーの面々と共に行く。

 場所を【氷槍群刃】行きつけの店に移し、酒と食事を頼んだ。



「しっかし驚いたね。いや、活躍も聞いてたし同盟に入ったのも聞いてたけどさ、実際あの面子と一緒にいるのを見ちゃうといよいよシルビアも″向こう側″だなってさ」


「向こうもこっちもないだろう。私は元【氷槍群刃】で現塔主。それ以外の何者でもない」


「で、塔主様はどんな感じなんだ? 順調そうなのは知ってるが……っと、やたらなことは聞けねえのか」


「問題ない。魔法契約をしているからな。同盟のことも含めてやたらなことは酔っていても喋らんからな」


「そりゃ安心だが残念でもあるねぇ。【六花の塔】の情報なんて高値で売れそうなのに。ハハハッ」



 全くこいつらは。しかし軽口ばかりでも居心地がいいのは確かだ。実家以上に故郷のような暖かみを感じる。



「傍から見れば順調そうに見えるだろうがバベルの塔主というのは想像以上に大変だ。それを口にするのも烏滸がましいほど私は何も知らない新米でしかない」


「とても501期トップの言葉とは思えないねぇ。まぁそれこそ【彩糸の組紐(ブライトブレイド)】が新聞で同じようなことを言ってたけどさ」


「思っている以上に過酷だから心を強く持て、だっけ? シルビアもまさにそんな感じなわけだ」



 新塔主に向けた警告のような記事のことだな。

 あれの意味は今の私にも分かるが、本当の意味で分かっているのはプレオープンから死に目に会った塔主たちだろうな。

 今も苦しんでいる塔主が多いはずだ。それに比べれば私は順調で間違いはない……だが、事はそう簡単ではないのだ。



「同盟に入れて頂いてよりその大変さを目の当たりにした感じだな。今となっては塔主となって早々に『同盟に入れるつもりはない』と言われた理由がよく分かる」


「ん? 【赤】のアデルから断られてたのかい? それが今になってどうして」


「何も知らない新塔主が知り過ぎては危険なのだ。ある程度独力で乗り切ったのちに徐々に知るくらいでちょうどいい。今のタイミングで誘われたのは、私の塔が落ち着いたのもあるし、周囲の塔の情勢だとか色々と理由がある」



 アデル様は私を同盟に入れると危険に晒すだけだと仰っていた。

 あの頃からアデル様たちは【限定スキル】に苦しめられその対処に追われていたのだ。


 【死屍】のアンデッド操作についても聞いている。もしそれが【六花の塔】に襲って来たなら私はとっくに死んでいただろう。


 それ以外にも未知の限定スキルで今現在も情報を搾取されているかもしれない。いつ何時でも危険なのが″塔主″というものなのだ。



 そういった危険を少しでも削ぐためにアデル様は私を同盟には入れなかった。

 そして逆に【傲慢】同盟を斃し、皆様もそして私も落ち着いた段階で同盟に誘って頂いた。

 これは『これから何か起ころうとも共に守ろう、対処していこう』という意思表示のようなものだと思う。


 今現在は誰も何も分からない。しかし今後何か起こるのは確定しているようなもの。だからこそ共にと。



「よく分からんけど同盟に入れりゃ楽になるんじゃないの?」


「だよね。二年目だしまだCランクかもしんないけどそこいらの塔とは別格でしょう。話に聞くだけですごい塔の集まりだって分かるよ」


「そんな中に入れてもらって余計に大変になるわけないだろうに」



 まぁそれはそうだ。実際入れて頂いたことで楽になった部分も多々あるし、塔を成長させるためにはこの上ない環境だとも思う。

 しかし一概にそうとは言い切れないのだ。


 限定スキルや他塔主との関係性、塔主戦争(バトル)や塔運営に関してもそうだが、私は知らなさすぎた。


 アデル様たちが持つ知識量とは天地の差があり、そのアデル様たちにしても知らない事が多すぎると言う。

 レイチェル殿にしても知らない事が多いというから、もはや私の想像できるところではない。



 バベルは未知の恐怖と戦う場所である。

 だから知れば知るほど、知らないことが恐ろしくなる。

 知識をつければつけるほど塔主という仕事が大変になるのだ。


 だがそんなことをこいつらに言ったところで伝わるまい。



「アデル様たちは私の思っていた以上に優れた塔主だった。五名が五名ともだ。十年目のAランクやBランクと言っていいほどだと思う」


「シルビアお得意の【赤】に対する色眼鏡じゃないってことだね」


「もちろんだ。それは戦績やら噂話だけでも想像つくだろう? 規格外の五名が500期に集まってしまったのだと」


「そりゃまぁね。いかに優秀な新塔主でも【風】や【傲慢】なんて斃せるわけないし」


「そうだ。そしてその規格外さ故に凡人たる私は付いて行けもしない。壁が大きすぎるのだよ」



 たった一年の差。たった一つ二つのランクの差。そうではないのだ。

 持って生まれた素質に加え、濃密すぎる一年の経験、そして個性がバラバラな五名が切磋琢磨し協力し合うことであの強力な同盟が出来上がっている。


 私としてはそんな先達の足を引っ張らないよう精一杯頑張るつもりだが、それすら出来るのか不安なのが現状だ。

 ノノア殿でさえ同じようなことを仰っていたしな。



「あたしから見りゃシルビアも相当優秀な塔主だけどねぇ。501期トップですでに塔主戦争(バトル)は三勝。神造従魔(アニマ)はフェンリルだし、塔の評判だって高いし、戦えば誰より強いんだからさ」


「卑下するつもりはないぞ? ただそうだな……私が【世沸者】の塔主でもノノア殿のような謎解きは創れないし、【忍耐】の塔主でもあのような罠は創れない。しかしあの方々が【六花】の塔主ならば私以上の塔を創り上げるだろう、そう思えるのだ」


「随分持ち上げるねえ。それこそ経験の差じゃないのかい?」


「それもある。しかしそれ以外にもそう思わせるものがあるということだ」



 経験や同盟による協力体制、それによって強い塔を創り上げているというのは間違いない。

 しかし才能や資質によるところも大きいと思うのだ。

 それは五塔の説明を全て直接お聞きして余計に思った部分でもある。


 魔物配置や罠配置、塔構成はテクニックと言えるものでもあるので、これは勉強すれば真似できるし応用もできる。


 私が言っているのはそれ以前の部分。

 塔をどうしたいか、侵入者をどう思わせどう動かしたいかといった部分だな。

 コンセプトや目標がしっかりしていて、それに見合う塔を創れる。そうした『創造力』が私には欠如していると思うのだ。


 将来のビジョンを描くのもそうだろう。それを長期目標として、中期目標・短期目標を定めるのもそうだ。

 それぞれの目標に対し、今何をしなければいけないのか。それが日々の塔運営に現れている。



 私はと言えば、その日の結果を受けて「明日はこうしてみよう」と修正する程度。それは受動的な強化であり、能動的とは言えない。


 能動的な強化というのは『自分から侵入者を動かすような変化』だと思うのだ。

 その為に必要なものが『創造力』であると。



「んじゃあの五塔になくてシルビアにあるものってのは何かあるのかい?」


「何だろうな……冒険者としての知識と、塔を『氷雪』に特化させることか?」


「おお、あたしらとの冒険が少しは役になってるってことだね。ははっ」


「それはそうだ。経験に助けてもらっている部分も大きいとも」



 今までに経験した塔をイメージして魔物や罠の配置を考えることは多い。そういう意味で経験が力になっているのは確かだ。

 一方で、高ランクの塔しかしらない為に枷になる場合もある。言わないがな。


 私の塔はまだEランクでTPに余裕もない。その中で例えばAランクの塔をイメージした魔物配置にしようとしても、数も少ないし、魔物も弱い。

 侵入してくる者たちもEランクだから行動原理が全く読めずに、結果、想定外の攻略を許すこともあるのだ。



「『氷雪の塔』も極めれば難しくなるだろうね。どうしても【世界の塔】の二階層を思い出しちゃうけど」


「シルビアもあれが目標なんじゃないか?」


「どうだろうな。理想形ではあるが【世界】になくて【六花】でできることもあると思う。参考にはするが同じものにする気はないな」



 【世界の塔】の二階層は氷雪階層だ。

 しかしあの塔は地形がおまけのようなもので、魔物の質と強さが売りだと思っている。

 Aランクの魔物がゴロゴロいて、そいつらを活かす為に仕方なく氷雪階層にしているだけ。悪く言えばそういう風に見えるのだ。


 私の場合、魔物は弱いものしか使えない為、地形の悪さによる探索のし辛さを重視している。

 そうすることしかできないと言った方が正しいのだが、違いはあると思っている。


 【六花】にしか召喚できない魔物や使えない罠などもあるだろうしな。

 同じものを創ろうと思ってもおそらく不可能だろう。



「あたしはそれ以外にもシルビアが勝っている点があると思うけどねえ」


「冒険者の知識と『氷雪』以外でか? 何かあるか?」


「ああ、クソ真面目で努力家ってところさ」


「ははっ! そりゃ言えてる! シルビア以上のクソ真面目なんて見たことがないよ!」


「はぁ、そりゃどうも。褒め言葉として受け取っておくよ」



 私から見ればあの五名の方が真面目で努力家なんだがな。

 色々と歯止めが利かない部分もあるが、年がら年中塔のことを考えている方々だ。

 私が真面目で努力家だと言うのならあの方々以上に努力しなければなるまい。



 そんな感じでこの日は長々と語らい合った。

 情報漏えいを避けつつの相談といった感じではあったが、それでも話せて良かったと思う。


 早くこいつらを迎える為にもAランクに上がらなければな。


 帰り道に眺めるバベルは夜の闇に染まり、見上げてもその先を見ることはできなかった。




第十章完! 結局この章はシルビアさんの章になりましたね。そして記念すべき200話もシルビアさんに。

1時間後に登場人物紹介。明日からは第十一章ですが毎日20時からの1回更新にします。さすがに2回更新がやばくなってきましたのでご了承下さい。


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― 新着の感想 ―
[一言] シルビアが冒険者らしい言い回しで例えるとらしいんじゃないかと思いました Fランクなりたての新人を連れてAランクの塔に入るようなものだ。 冒険者は塔の外で訓練してもいいが塔主はすでに塔の中に…
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