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新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第十章 女帝の塔の日常は何かと忙しい!
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192:シルビアさん、初めての同盟塔訪問です!



■シルビア・アイスエッジ 22歳

■第501期 Eランク【六花の塔】塔主



「では入りますわよ」


「はい」



 私はフェンリル(シルバ)を連れて【女帝の塔】に来た。アデル様とジータ殿と共に。

 他人の塔に入るのは塔主となって初めてだ。これも同盟ならではの強みなのだろう。



 転移門の横には立派な盾が飾られてあり――私も作らなければならないらしいが――転移門をくぐればそこは帝都の街並みが広がる。思わず感嘆の声が出るほどだ。


 外壁には城と空が描かれ、塔内であるのに閉塞感を感じない。

 なるほど、単に見栄えがいいだけではなく、階層を広く見せる効果もあるのか。



 転移魔法陣を使って最上階へ。いささか緊張するのは冒険者時代の名残だ。どうしても塔の最上階というのは特別なものと思ってしまう。


 そうして転移した先に見えるのは『玉座の間』というより『謁見の間』といった雰囲気。

 完全に城の内装。足元には赤い絨毯が敷かれ、左右には立派な柱がそびえる。

 柱の上部からは例の塔章入りの旗が吊るされていて、なんとも荘厳な印象を受けた。これはまさしく【女帝】の城だ。


 絨毯が続く先を見れば玉座……いや、中央の玉座の壇下に六つの玉座が並んでいる。


 そこに座るのは……クイーンか!? クイーンが六体も!?



「うふふ、驚いたでしょう? あとでシャルロットさんが説明すると思いますけれど、Sランクが二体とAランクが一体、Bランクが三体おりますわ。内四体のクイーンが眷属ですわね」


「え、Sランク!?」



 なんだその陣容は! Cランクの塔の域ではない!

 あれだけの戦歴だからTPも沢山あるのだろうがそれにしても……まさかアデル様たち他の塔主も同じような戦力なのか!?

 だとすれば私の弱々しい戦力では居所がないのだが……。



「さすがに六体も並ぶと壮観ですわよねえ。あれにシャルロットさんとエメリーさんを加えて″八女王会議″というものをしながら塔運営しているらしいですわ。こちらはジータしかおりませんのに羨ましい限りです」


「一応ルサールカ(ルールゥ)もいるじゃねえか。まぁ【女帝】にはどうしたって劣るけどな」



 そうか。そうして共に画面を見ながら日々の運営をしているのか。

 人語を解せて尚且つ魔物を率いることに特化したクイーン種だ。それはさぞかし運営しやすいだろう。

 私もシルバやジャックと共にいるが、相談しながらというのは無理だからな。



 玉座の近くまで歩くとアデル様の紹介で私もクイーンたちに挨拶をした。Sランクのナイトメアクイーンと妖精女王(ティターニア)というのは知らない魔物だ。こうして直に会うととても勝てる気がしない。



「うふふ~そんなに警戒しなくて大丈夫よ~。もうお仲間ですもの~」


「ふふっ、自分の力量に自信があるのだろうがせめてそこのジータ程度になったなら相手してやってもよいぞ」


「うるせえ。俺のほうが強えだろうが、ナイトメアクイーン」


「馬鹿を言え、眷属化していなくとも妾の方が強いわ。脳筋騎士など相手ではない」


「なんだと? やるってんなら――」


「はいはい、おやめなさい、二人とも。眷属化したら『訓練の間』で遊ばせてさしあげますわ」



 どうやらジータ殿とナイトメアクイーンは相性が悪いらしい。


 と言うか、私から漏れた警戒心に反応したというのか……これがSランクのクイーンか。



 それから奥の住居区画へ。こちらも城の内装を使った立派なものだ。

 広々としたリビングに着けば、テーブルには大量の食事が並んでいる。

 他の塔主や神定英雄(サンクリオ)も一緒だ。



「シルビアさん、ようこそ。今日はエメリーさんも張り切ってお食事用意しましたからね。歓迎会も兼ねているので楽しんでいって下さい」


「なんと……ありがとうございます。私の為にそこまで」



 【女帝】シャルロット殿は塔主総会や新年祭で見た様子とはまるで違う。あの時はいかにも女帝といった雰囲気だったが、今は年齢相応の可愛らしい娘といった印象だ。


 【忍耐】ドロシー殿、【輝翼】フッツィル殿、【世沸者】ノノア殿、皆がシャルロット殿と同調するように笑い合い、その中にアデル様も入る。


 私も見たことのないアデル様の表情。

 その笑顔はメルセドウでは絶対に見られない柔らかいものだった。


 なるほど、アデル様の″素″を出せる場所――というわけか。この同盟は。



 私は一通り挨拶を済ませると促されるまま席についた。



「じゃあ皆さん、グラスを持って乾杯しましょう。アデルさん、音頭をお願いします」


「わたくしですか、では僭越ながら。――この度シルビアさんが我ら【彩糸の組紐(ブライトブレイド)】に入る運びとなりました。まずは受け入れて下さった皆様にわたくしから感謝を。

 そして六塔となった我らの今後益々の発展を願いまして乾杯といたしましょう。乾杯!」


『乾杯!』



 朝から酒というわけにもいかず果実水での乾杯となったが、それでも美味しい。

 並ぶ料理はエメリー殿が作ったというが、久しぶりに食べる家庭の味がした。

 やはり本職のメイドなのだろうな。それで戦えるというのだから疑わしくも思ってしまうが。



「先にお渡ししておきましょう。これ、皆さんの分の組紐です」


「「「おお」」」

「まあ、ありがとうございます、シャルロットさん」


「私にも……ありがとうございます、シャルロット殿」


「いえいえ、うちのヴィクトリアさんお手製ですからね。結構丈夫なんですよ」



 受け取ったのは六色の組紐。青・赤・黄・緑・茶、そして水色が私の色だ。

 アデル様が私の左手首に結んで下さった。


 これが同盟の証か――何とも心が弾むような思いだ。


 食べながら自己紹介がてら、色々と話す。

 貴族らしくはないが私は元冒険者なので何も問題はない。アデル様はさすがに美しい礼儀作法なのだが、それでも皆と合わせるようにして話していた。



「シルビアちゃん、冒険者のころはどこの塔を攻めてたん?」


「現存する塔でしたらAランク以上の塔はほとんど……【節制】【魔術師】【闇】以外、一度は入っています。主戦場としていたのは【火の塔】ですが」


「なるほどシルビアの水魔法が活きそうじゃのう。今度各塔の情報を教えてくれんか、一応知る限り」


「ええ、構いません。と言っても探ろうと思えば市井で買える情報に多少の加筆が入るくらいのものですが」


「え、Sランクの塔にも行ったんですか? 【世界の塔】とか……」


「【世界の塔】は四回だけです。あそこは二階層が限界でした。難易度の高さはやはり別格だと思います」


「おお、さすがレイチェルさんですねえ」



 何とも不思議な感覚のする会話だ。

 【世界の塔】のレイチェルなど冒険者だった私からすれば雲の上の存在であり、斃すべき塔主の頂点だった。

 それがこの場ではレイチェルと親しい塔主ばかり。距離が異常に近い。

 その輪の中に自分がいるという事実に未だ慣れないでいる。


 自己紹介の最中、こんな話も出た。



「今のうちに言っておくと、わしはエルフではなくハイエルフじゃからな。それとこっちのゼンガー爺は魔法使いではなく神官じゃ。元創界教の司祭位で人間社会における精霊信仰の始祖だそうじゃ」


「フゥさんはファムっていう目に見えないほど小さい精霊と対話できるのですよ。それで情報収集ができるんです。私のところのターニアさんも同じことができます」


「つまり、【六花の塔】の様子も知れますし、シルビアさんが誰かと喋っていてもこちらに筒抜けということですわね」



 え、えっと……? 混乱していて今一分からないのだが、ハイエルフというのが御伽話の存在というのは分かる。

 フッツィル殿はそのハイエルフで、小さい精霊で諜報めいたことができるということか? 先ほどの妖精女王(ティターニア)も?


 ああ、だから私が塔主戦争(バトル)する相手の情報があんなにも詳細に……。


 ……ん? ということは他の塔の情報は全て持っているというわけか?


 だから【力】や【風】や【傲慢】にも勝てたと……いや、それなら私に情報をくれなどと言うはずがない。



「ファムで覗けるのは大体Cランクの塔までじゃ。Bランク以上の塔は魔力の関係でファムが入れぬ。だからBランク以上の塔の情報が欲しいというわけじゃな」



 見透かされたようにそう言われた。読心術にも長けているのか、ハイエルフは。

 私が分かりやすい表情をしていただけかもしれないが……。



「先に言っておくべき情報は他に何かあるかのう」


「あ、エメリーさんは異世界人の神定英雄(サンクリオ)でとっても強いです。侍女としても超一流です」


「ああ、やはり異世界の方でしたか。強いというのは噂程度に存じていますが、こうして見るとメイd――」


「メイドではありません、侍女です」


「っ! ……申し訳ありません。侍女というのが先行して戦う姿が想像できないと……」



 いまだかつてない鋭い殺気を一瞬感じた。背中に冷や汗が流れる。

 メイドというのは禁句なのだな、これはもう間違えまい。



「はっはっは! まぁシルビアの嬢ちゃんなら今ので分かるだろ。エメリー(姉ちゃん)の怖さがよ」


「はい……ジータ殿も、ですか」


「こん中で明確に分かるのは俺と爺さんとシルビアの嬢ちゃんくらいだな。フッツィルの嬢ちゃんもか?」


「わしはそうでもないのう。やはり相応の腕に加えて戦場に身を置いた経験で差が出るということではないか」


「皆さん、何のことを言ってるんです?」



 ただの視線を殺気と感じるにも条件があるということか。私も一応褒められてはいるのだろう。

 しかし主であるシャルロット殿は首を傾げているが……エメリー殿の恐ろしさを知らないはずもないだろうに。

 まぁ主に向けて殺気を放つメ……侍女などいないか。



「姉ちゃんがその気になればこの場の全員、一分以内に殺せるからよ。それくらいに思っとけばいいぜ」


「は? え、ジータ殿も、ですか?」


「俺なんか瞬殺だよ、瞬殺。けどまぁ今なら十秒くらいもたせられるか?」


「ジータ様も成長していますからね。わたくしがアレ(・・)を持たなければ十秒は余裕でしょう」


「「「おお」」」

「さすがジータさんやな!」

「わたくしは鼻が高いと言えばいいのですか? それとも嘆けばいいのですか?」



 私には全く理解できない会話なのだが?

 え? ジータ殿はあの英雄譚のジータ殿ですよね?

 それが十秒戦えて褒められるほどの相手なのですか、エメリー殿は。


 どうりで【女帝の塔】ばかりが目立って周知されるはずだ。クイーンに加えてこんな規格外戦力がいるとは……。



「シルビアさんも今後エメリーさんに稽古をつけてもらうといいですわよ? もう一緒に『訓練の間』を使えますし」



 それは……非常に魅力的で、非常に恐ろしいお話ですね。アデル様。




数話続きます。次は自塔紹介。


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