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新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第十章 女帝の塔の日常は何かと忙しい!
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182:青の塔が色々調べているようです!



■コパン・メルンゲム 52歳

■第488期 Bランク【青の塔】塔主



「はぁ、全く困ったものだ。どうしてこう貴族というのは頭の弱い者ばかりなのか」


「ケィヒル・ダウンノークのことか? それともベルゲン・ゼノーティアのことか?」


「両方だよ」



 正確には貴族派の連中全部に言えることだがな。

 王国派や中立派はまだマシなのがいくらかいるのだ。


 ロージットやシンフォニアはその最たる者。

 かたや王国派の筆頭で国と国王陛下のことを第一に考える忠臣。

 かたや中立派の上位で神算鬼謀が得意な貴族らしい貴族。


 そこへいくと貴族派の何とも不甲斐ないことか。

 勝っているのは馬鹿貴族の多さと、その領地が王都に近いというくらいのもの。

 まぁそんな馬鹿貴族が相手だからこそ商売がやりやすいのだがな。



 私の実家、メルンゲム商会は代々そうやって貴族派連中の御膝元にあり続けてきた。

 塔主に選ばれてからは実質、息子を商会長の席に座らせているが、私が塔主であり世間的な名声を得ている以上、未だに店のトップは私と見られることが多い。

 もちろん息子には頻繁に手紙を送りアドバイスや手助けをしてはいるが、バベルにいて店の舵取りなど早々できるものではないのだ。


 じゃあ完全に引退するかと言われるとそうもいかず、バベルの塔主となって尚、メルンゲム商会の看板を背負い続けなくてはいけない。店や息子に迷惑をかけてしまうからな。


 そういうわけで未だに貴族派の御膝元というのを続けている。

 【魔術師】同盟。ケィヒル・ダウンノーク伯爵。ウェルキン子爵長子ノービア・ウェルキン。極めて太い繋がりには違いない。



 塔主としても貴族としても、ケィヒル様よりシンフォニア伯やアデル・ロージットが上なのは間違いないだろう。

 特にアデル・ロージットに関しては、今はまだCランクの【赤の塔】であっても恐るべき速度でAランクに上がって来るはずだ。

 それは今までの戦歴と現在も続く人気ぶりを見れば容易に想像できる。


 本心では私もそちら側に付きたいのだが……まぁ店を考えれば無理だろうな。今さらだ。



 【赤の塔】に関してはすでに情報を掴んでいる。<青き水鏡>で覗いているのだ。

 その新塔主らしからぬ塔構成と戦力に驚いたのは言うまでもないのだが、現時点では私の【青の塔】に及ばない。


 恐ろしいのはその同盟の筆頭であろう【女帝の塔】だ。

 歴史的速度で成長している【赤の塔】より更に先に進んでいるという馬鹿げた塔。

 その【女帝】と組んでいることで【赤の塔】も成長を続けているのだろう。敵対すべき塔主同士が切磋琢磨し合っているという稀有な関係性をそこに見た。


 だから私は忠言したのだ。

 今調べるべきはゼノーティア公ではない。【赤の塔】だと。


 アデル・ロージットが貴族派を敵対視しているのは確実。

 おそらく『反貴族』を唱えたのも、貴族のしがらみなしでこちらを攻撃する為の口実なのではないか。そう思うのだ。



 運良く<青き水鏡>で【緑】のクラウディア・コートレイズを見ていたところで【春風】【輝翼】と接触してくれたので、その線からアデル・ロージットを監視対象とするよう忠言したのだが、ゼノーティア公を見張れという指示を無視してクラウディアを見張って良かったと思っている。


 ゼノーティア公の狂った性癖など目の毒にしかならんからな。クラウディアの方が目の保養になる。


 <青き水鏡>では話し声までは分からないが、三人で何やら話し合いをしている様子は窺えた。

 そのすぐ後に【春風の塔】が【煙水の塔】を斃したと通知が入ったので、おそらくその塔主戦争(バトル)の作戦会議だったのだろう。


 となるとクラウディアはともかく、なぜ【春風】の塔主戦争(バトル)に【輝翼】が関わっているのかという疑問が出て来る。


 やはりこちらがエルフを狙っているという動きを掴んで、アデル・ロージットが同盟として動いている、というのが分かりやすい。

 たまたまその場にいたのがアデルではなく同盟者の【輝翼】フッツィルだったということだ。



「ベンズナフ、アデル・ロージットはこちらの動きを掴んでいると思うか?」


「少なくともアデル陣営の誰かがバベリオの闇組織に接触したということはないはずだ。しかしヤツらは金で口を割るからな。どこからか漏れてもおかしくはない」


「はぁ、だから闇組織にエルフの捜索依頼などすべきではないと言ったんだ。全くあのお貴族様は……」



 ベンズナフは私の神定英雄(サンクリオ)だ。

 古くに消えた国の暗部だったらしい。当然歴史書には載っていない人間だ。

 斥候系の魔法使いと言えばいいのか、とにかく聞いた事もないような魔法を使って密偵のような真似事もできる。現代ではその魔法の伝承自体が消えたのかもしれないな。


 ベンズナフにはバベリオの街を張らせている。現在は主にエルフ探索だが、バベルの全体的な情報収集としても役に立つ。

 闇組織にも当然張っており、そこと接触した塔主の情報は入るのだ。



 最近では【霧雨の塔】のザリィドか。

 ヤツもどうやら闇の住人らしく闇組織に接触して貴族派がエルフを狙っているという動きを掴んだらしい。

 すでにそこに漏れているのは確定しているのだ。


 じゃあ【霧雨】からアデルに流れたか……とも思ったが接点がまるで見えない。

 というよりアデルの性格を考えた場合、ザリィドと繋がるとは思えない。


 仮に流れたとしてもエルフの塔に接触して【霧雨】同盟の【煙水】を斃すというのがチグハグに思える。


 分からないことづくしなので、結局は地道に調べていくしかないわけだ。

 ベンズナフの調査と俺の<青き水鏡>を使って。



 このバベルで生きていくためには情報が何より大事だ。そんなことは新米塔主でもすぐに分かる。

 だから私は無理してでも早めに限定スキルの取得を狙った。<青き水鏡>という諜報型限定スキルがあったからな。これしかないと。


 実際このスキルは反則的な覗き見ができるし、限定スキルらしく神技のような性能だと思っている。

 一日にたった十分ではあるがどこの誰であろうとも私が知って指定すればその様子を窺い知ることができるのだから。


 欲を言えば話し声を聞きたいところではある。

 例えばアデルを監視していた時に【女帝】と通話となった場合、その内容を知ることができない。

 私に分かるのはアデルの画面に映るその内容だけだ。そういう時はなんとも勿体なく感じてしまう。


 まぁそんなことを愚痴っても仕方ない。

 とりあえずアデル・ロージットの同盟を調べていこう。



 覗き見る時間はだいたい決まっている。五の鐘が鳴り、塔の営業が終わってから少し経ったあたりだ。


 塔主はその時間に画面を開いて魔物や罠の再配置をすることが多い。

 一日の営業を終え、その反省を活かすべく明日に備えて修正するわけだな。もちろん個人差はあるが。


 <青き水鏡>で覗ける十分間でその画面を見られれば、塔の構成と戦力が分かるわけだ。

 それでも十分間で分かる量などたかが知れているので数日間は見張ることになるのだが。



 そうして俺は【赤の塔】から順々に調べ始めた。



 相変わらず塔の構成がえぐい。二年目とは思えない高難易度の塔だ。

 魔物の変化はあまり見られないが気になるのはあの炎の小鳥だ。

 おそらく固有魔物だろうが……ステータス画面でも開いてくれれば助かるのだがさすがに無理か。



「ベンズナフ、お前はジータを斃せるか?」


「正面からでなければな。いくらでもヤりようはある」


「なんとも頼もしいことだ」



 となれば今はまだ私の【青の塔】が有利に違いない。総合的な戦力では確実に上回る。



 続いて【女帝の塔】を調べるわけだが……これは無理。ケィヒル様にお願いするしかない。


 まず様子を覗いた時に【女帝】の周りに玉座が六つも並んでいるのだ。

 どれだけクイーンを召喚したのかと。どれだけ重用しているのかと。


 塔の戦力はことごとくクイーンの配下なわけで、低ランクが多いものの、それらがクイーンに率いられるとなれば話は別だ。


 おまけに塔構成も【赤の塔】以上に厳しい。

 高ランクの魔物を揃えて挑んだところですんなり勝てるビジョンが全く見えない。



「魔物や塔構成もそうだがあのメイドはジータ以上に厄介だぞ」


「なに? それは本当か? 確かに強いという噂は聞くが……」



 ベンズナフが画面越しに見ただけでそう判断するのであれば相当なのだろう。

 私にはとてもジータ以上の強者には見えないのだが。

 いずれにせよ【女帝の塔】が【赤の塔】以上に危険なのは間違いない。



 続いては【忍耐の塔】だ。塔主の隣にはこれ見よがしにスフィンクスと【忍耐の天使ウリエル】を置いている。


 やはりすでに召喚していたか……。【傲慢の塔】同盟を斃したのもウリエルの力があったからだろう。

 Cランクに上がりたてで大天使を召喚していること自体が驚きではあるがな。


 そう思いつつ塔構成を見てみれば……なんだこりゃ! 【女帝】以上に鬼畜じゃないか!

 罠の数が半端じゃねえし上層に行けば魔物の群れだ。ドラゴンまで置いてやがる。


 これはひょっとすると【赤】や【女帝】を隠れ蓑にした同盟のエースなのかもしれない。

 七美徳(ヴァーチュ)は伊達ではないということか。ここも要注意だな。



 続いては【輝翼の塔】だが――



「はあっ!? エ、エルフじゃないか!」



 覗いた瞬間に驚いてしまった。

 いつもローブのフードを被っていたフッツィルという子供。その素顔を初めて見れば完全にエルフだったのだ。


 そうか。だからクラウディアたちと繋がっていたのか……。


 ん? つまりここの同盟は人間・ドワーフ・獣人・エルフが大集合しているということか。なるほど人種差別がどうこう言うわけだ。



 さて、この大ニュースをどう扱うべきか。

 おそらく【輝翼】のフッツィルがエルフだという情報を知っている者はごく僅か。

 知らない前提で泳がせ、別の情報を得るというのも手だ。それこそエルフの里と繋がるかもしれん。


 ケィヒル様に伝えればすぐさま【輝翼の塔】に塔主戦争(バトル)申請するだろう。

 しかし【輝翼】は受けないはず。もし仮に受けるとするならば……同盟戦(ストルグ)か?


 こちらの三塔と向こうの五塔。戦力で比較した場合……なんとも言えないな。

 【魔術師の塔】が飛び抜けてはいるが、【女帝】【赤】【忍耐】は侮れない。



 一先ずは【輝翼の塔】をじっくりと調べ上げてから……は? 全五階層? なんだこの塔は。

 白いドラゴンがいるのが危険ではあるが……あとはあの鳥とフェンリルくらいか。

 Cランクの塔と見れば十分強いのだろうが、先の三塔に比べれば貧弱なのは間違いない。



「ベンズナフ、この神定英雄(サンクリオ)はどう見る」


「強さまでは分からないな。おそらく純然たる魔法使い。俺のように動くタイプではないだろうから完全に後衛だろう」



 であればやはり一番攻めやすいのは間違いないな。

 ドラゴンを飼っている塔が一番攻めやすいというのもおかしな話だが、本当にこの同盟は色々といかれている。



 最後は【世沸者の塔】だが……ああ、この塔はあきらめよう。

 こんなの十日間<青き水鏡>で覗き続けても攻略方法が分からない。


 全くこの同盟は……なんでこんな厄介なのばかり集めたんだ、本当に。




一つの塔で数日かけているので今後の話を比較すると時系列は前後します。


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