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新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第八章 女帝の塔の二年目が始まります!
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155:やっぱり英雄ジータは最強です!



■フッツィル・ゲウ・ラ・キュリオス 51歳 ハイエルフ

■第500期 Cランク【輝翼の塔】塔主



 今回の塔主戦争(バトル)はファムをほとんど使用しないという点では楽じゃが、ほぼ乱戦となっている攻撃側と防衛側を同時に把握しなければならぬということで、短期的に見れば今回のほうが大変に違いない。


 ただでさえ劣っておる戦力を上手いこと動かさねば勝機はない。

 どこもかしこも厳しいのじゃ。隙を作り、それを見逃さずに突かねばあっと言う間に瓦解する。



 いっそのことわしやアデルが戦場に立った方が幾分か戦力になるかもと思ったほどじゃ。

 実際はもちろんそんなことは出来ぬがな。


 しかし、もし敵軍が八階層を抜けてくるようならば、その時はわしらが戦うしかないのじゃが……。



 ともかく厳しい戦闘は続き、儂の眷属であったシィルもアグニも失った。色々な面で本当に痛い。

 無理をさせたと悔やんだがそれすらも今は許されぬ。塔主として指示を出し続けなければな。



 攻撃側に関してはわしから指示を出すことはない。

 アデルのクルックーに完全に任せておる。鳥部隊はわしの魔物だけではなくアデルのヘルコンドルも含むが、それらをまとめて敵の飛行部隊に当てておる。


 グリフォン(B)とヒポグリフ(C)にはBランク以下の魔物をまとめて当て、三体のマンティコア(A)には三体のフレスベルグ(A)を当てているようじゃ。


 決定打となるには時間が掛かるじゃろう。こちらも相応に被害は出ておる。

 しかしこれ以外ないという布陣には違いない。



 ハイフェアリーたちに関してもターニア様の指揮下じゃからこちらも完全にお任せ。


 残るはゼンガー爺じゃが……張り切っておるのう。ターニア様の手前じゃから仕方ないかもしれぬ。ほうっておこう。



 従ってわしが見るべきは防衛側。エァリスの指揮下となっている鳥部隊じゃ。

 【雨林】の虫部隊、【砂塵】の鳥部隊。それが終わればデーモンたちを相手にしている皆の元に参戦しなければならぬ。


 相手飛行部隊の指揮官である【雨林】の眷属、パープルモス(B)は斃した。

 状態異常の鱗粉を使う厄介なやつじゃったから最初に狙う必要があったのじゃ。

 これをエァリスが直接当たることで打倒した。ランク差もあるから当然じゃな。



 とは言え敵飛行部隊はまだ残っておる。これをどうにかしたいところじゃが……。


 いや、エァリスだけでも先にデーモンに仕掛けるべきか。

 せっかくの光魔法の使い手をデーモンにぶつけないのは勿体ない。



「ドロシー! エァリスをキリングデーモンに当てるぞ!」


「了解! 頼むわ!」


「エァリス聞こえるか! 飛行部隊を鳥たちに任せお主はキリングデーモンに向かえ! キラリンの部隊の援護じゃ!」


『クルルゥ!』



 Aランクのキリングデーモン十体に対し、当たっていたのはゴーレム部隊とガーゴイル部隊。

 ランク差なくまともに戦えるのはキラリンくらいのものじゃ。何体かミスリルゴーレムもやられておる。

 そこにエァリスの光魔法が加われば多少は楽になるじゃろう。



 頭を使う戦闘は延々と続く。精神的にも疲労が溜まる。

 徐々にこちらに流れは来ているはずじゃ。あとはこれをいかに継続させるか、じゃな。





■ジータ・デロイト

■【赤の塔】塔主アデルの神定英雄(サンクリオ)



「チッ! はあっ!」


 ――ガキンッ! ガキンッ! ガキンッ!



 だいぶ焦って来やがったな。剣筋も動きも雑になってきた。


 その焦りの原因は【傲慢】からの指示なのか、全体の戦況の悪さなのか、魔力の消費によるものなのか――それとも俺をちっとも斃せねえからか。



 いずれにせよ向こうは弱くなり、俺は随分と慣れた。

 時間は確実に俺に有利に働いている。


 おそらくあの速度からの突貫でほとんどのヤツは斃されるか手傷を負うかだろう。

 だからシシェート自身も長時間打ちあい続けるなんて想定していねえんじゃねえかな。

 まさかこの世界にない自分の剣技に合わせられるヤツなんかいるわけねえって。



 残念だったな。ここにいるんだよ。二人もな。



 焦燥はその表情からも読み取れる。ダメだなぁ、顔に出しちゃ。

 余裕を見せねえといけねえんだよ、こういう戦いはさ。

 俺だって実際、最初は結構ビビってたんだぜ? そうは見せなかっただけで。



「そろそろ降参したらどうだ? おめえの剣じゃ俺は殺せねえ」


「ハハッ、それが出来たら楽なんだけどね――私にも意地があるんだよっ!」



 そう言ってヤツはその身軽になった身体で宙に跳んだ。風そのもののような軽さだ。


 上段に振り上げた炎の剣。

 それは気持ちの入った最高の一撃に違いない。


 だが――



「はあっ!!!」


「おおおっ!!!」



 ――ザシュゥウ!!!



 身動きとれねえ宙に頼った時点でおめえの負けなんだよ。


 俺は光に変わるシシェートに向けて、目でそう言った。


 消える間際の苦笑いが「残念だったが今度こそ」と言っていた。


 その機会があればいいなぁ。神様に頼んでおけよ、異世界人。



『よくやりましたわ、ジータ! キラリンと共にキリングデーモンに当たりなさい!』



 はいはい。なんとも慌ただしい戦場だ。感傷に浸らせてもくれねえ。

 ま、そんなもんだよな。戦争ってやつは。





■シャクレイ・アゴディーノ 30歳

■第489期 Aランク【傲慢の塔】塔主



「馬鹿な! シシェートが負けただと!?」


「英雄ジータ……まさかあそこまで……!」


「ど、どうしましょう、シャクレイ様! こ、このままでは!」



 くそっ! これで完全に攻撃陣は崩された!

 あとに残る眷属は私のキリングデーモンのみ。向こうにもかなり被害を与えてはいるが、Aランク以上がまるまる残っている。


 何よりジータを自由にさせているのがマズイ。

 かと言ってシシェート以外、ジータに当てる者など……。



「防衛を凌ぎきったのちに部隊を再編して攻め込む。これしかあるまい」


「し、しかし――」


「ええい黙れ! こちらの軍勢を見ろ! ルシファーもいる! ヘルキマイラもスクイッシュドラゴンもいるではないか! バリトン子爵のリッチもいるのだからアンデッドの軍を従えることも出来よう! 何の問題もあるまい!」



 そうだ。何を狼狽える必要がある。

 相手はたかがCランク。私はAランクだぞ? 格が違うのだ、格が。


 いい気になるのもそこまd――



「ああっ! わ、私のリッチが……!」


「何っ!?」



 慌ててその画面を見れば、神定英雄(サンクリオ)の爺が残りのグールを掃討している姿があった。

 動きながらの神聖魔法。それは一撃ごとにアンデッドを消し去っていく。



「馬鹿な! 爺の相手はリッチ二体にギガントグールとグールの群れだろう!? いかに神定英雄(サンクリオ)でも勝てる道理がないわ!」


「お、おそらく最大魔法と思われる神聖魔法を連発しておりました……」



 最大の神聖魔法だと!? そんなもの噂に聞く教皇とて連発できるような代物ではない!

 それを神官服も着ていない、魔法使いめいた爺が使えるというのか!?

 ふざけるな! そんな神定英雄(サンクリオ)がいて堪るか!


 ……いや、まさかあの爺も異世界人なのか!?


 ヤツらの神定英雄(サンクリオ)は英雄ジータと異世界人が二人!?


 そうか。だからこれほどの戦績を……! くそっ! 嘗めた真似を!



『ぎゃああああ!!!』


「!! 今度はなんd…………!?」



 画面の端では、左足を斬り落とされたルシファーが苦悶の表情を浮かべながら、地べたに倒れ込んでいた。


 は……? 一体何が起こった……?

 何がどうなればこんなことが起こるのだ……?



「なんだ! 何が起こった!」


「わ、分かりません! 気付けばルシファーが……」


「わ、私も自分の眷属を見ていましたので……」


「くそっ! どいつもこいつも!!!」



 ありえん! ルシファーはスキルによってあのメイド以上のステータスを得たはずだ!

 下層に控えていた魔物を二百体以上も使ったのだぞ! それがあの巨人の姿だ!


 それがなぜ負ける! メイド以外の手助けでもあったのか!? そんな様子も見えん!

 ならばなぜメイドが勝つ! なぜルシファーが負けるのだ!


 くそっ! くそっ! あの平民どもがああああ!!!





タイトルに語弊がありますね。異世界人を含めると最強ではありません。あと泳げません。


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― 新着の感想 ―
[一言] 勝手に泳げることにされたのに 泳げないことを弄られるジータさん、不憫。(>_<)
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