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新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第八章 女帝の塔の二年目が始まります!
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143:新塔主のプレオープンが始まりました!



■シルビア・アイスエッジ 22歳

■第501期 Fランク【六花の塔】塔主



――カラァン――カラァン――



 運命の二の鐘が塔に鳴り響く。


 ふうと大きく息を吐き私は目を開いた。覚悟はとうに出来ている。

 さあ始めよう。私の【六花の塔】のお披露目だ。



「頼むぞ、フェンリル、ジャック」


「ガウゥ」「クルルゥ」



 ジャックの任せろという勇ましい思いが伝わる。フェンリルも早く獲物をよこせと言わんばかりの気迫だ。心強い。


 画面に映る入口にはすでに数組のパーティーが入り始めた。やはり皆年若い。

 悪く思うなよ。お前たちは私の練習台だ。



 しかし72塔もあってすぐにこれだけ入るということは、即ちこれは注目されているという証だ。

 【浄炎の塔】や二十神秘(アルカナ)の二塔はおそらくもっと多いのだろうがな。


 フェンリルがいると分かっているから尻込みするかもと危惧したが、どうやら野心が勝るらしい。

 その無謀さは私にとって歓迎すべきものだ。存分に挑戦してくれ。



『げえ、いきなり屋外階層……しかも雪の森か……』

『さすがはAランクの塔ってことじゃねえか。上等だ』

『元Aランクだろ。今は俺らと同じFランクだぜ』



 その通りだ。私は元Aランク冒険者で、現Fランク塔主で間違いない。

 侮っているなどとは思わない。怒りもしなければ嘲笑もしない。

 自分が未熟な塔主であると誰より私が知っているのだからな。


 アデル様がいなければ、教えて頂かなければろくに塔も創れない新米だ。


 だからこそ今、身命を賭して塔主という使命を全うする。


 いずれアデル様にご恩返しする為。そしてあいつらを迎え入れる為に――。





■シャルロット 16歳

■第500期 Cランク【女帝の塔】塔主



『ぜ~~~~んぜん入らないですっ! 騎士団の方々を抜かしたら二組だけですよっ!』



 珍しくノノアさんが大声で叫んでいます。

 プレオープンが始まりましたからね。

 【世沸者の塔】に入っていた侵入者の方々は軒並み新塔主の塔に向かったようです。



『ノノアちゃんトコで二組っちゅうことは他のFランクはほとんどゼロやろな』


『どうりで二年目以上のFランクの塔がたくさん残っているわけじゃ。新塔主が入れば見向きもされなくなるということか。むごいのう』


『その点ノノアさんはよろしいですわよね。とりあえず騎士団も入っていますし、Eランク昇格が確定しているようなものですし』


『そ、そうは言いましても~~さすがに少なくて凹みますぅ』



 ちょっと前までのノノアさんならば信じられないような発言ですね。

 侵入者が入ることすら恐れていたのに。今じゃもっと入ってくれと、そんな感じですよ。

 さすがに自信がついたということなのでしょう。【世沸者の塔】は難攻不落ですから。



『フゥ、【浄炎の塔】はどんな感じなん?』


『大盛況じゃな。やはり一番人気じゃないかのう。【六花の塔】はおそらく四番手かのう』


二十神秘(アルカナ)にはさすがに負けますか。しかしスタートダッシュとしては十分すぎますわね』



 私もターニアさんにお願いして覗いてもらっていますが【浄炎の塔】は塔主のエキルさんという方が『ひ弱な青年』という感じらしいんですよ。

 戦いとは無縁で、塔主となった今も侵入者に攻め込まれるのを怖がっているらしいです。


 しかし【荒天の魔女】ダリアさんは対照的にかなり好戦的な方らしく、文字通りエキルさんのお尻を引っぱたいているそうですね。可哀想に。


 ですので実質的に塔の運営をしているのはダリアさん。

 言われるがままに宝珠(オーブ)をいじるのがエキルさん、という図式なのだとか。


 これ、神賜(ギフト)神定英雄(サンクリオ)じゃなかったら詰んでますよね……まぁたらればですが。



 しかし注目度が一番高いことには違いないので、一応塔構成や魔物なども聞いています。

 一階層が『溶岩洞窟』、二階層が『溶岩荒野』という溶岩攻め。魔物は火属性のみ。

 ボスはCランクのラヴァゴーレム。


 とことん『火』って感じです。

 実際Fランク侵入者からすれば厳しいのでしょうが……何と言いますか、安直だなぁと。

 多分ダリアさんの「ガンガンやっちゃいなさい! 燃やしちゃいなさい!」みたいな性格が起因しているのだと思います。



 これどうなんでしょうね。私的にはあまり強そうな塔には思えません。


 自分が塔主としての考えに慣れ始めているからなのか、皆さんの素晴らしい塔を見ているせいなのかは分かりませんが。

 少なくとも「強敵になりそうだな」とは思いません。



 二十神秘(アルカナ)の二塔、【星の塔】と【月の塔】に関してはもっと厳しそうな印象を持っています。


 スティアさんとムーナさんの姉妹ですが、お二人は毎日のようにバベルの中で相談というか話し合いをしていたようです。


 同盟みたいな通信ができないのは知っていますが、なぜ『会談の間』を使わないんですかね。

 冊子を読んでいないとか?

 もしくは立ち聞きする人なんていないだろうとタカをくくっているのでしょうか。謎です。



 ともかくお二人で相談し、なんとか塔を創り上げたようですが、出来上ったのが『全くうり二つの塔』らしいのです。

 しかも一・二階層共に夜の暗闇を模した屋外階層。


 闇夜に強い魔物がリストに多いのでしょうが、いくらなんでも探索が厳しい。

 侵入者を退ける目的ならば大成功ですけどね。

 Fランクの侵入者に<暗視>持ちなど滅多にいないでしょうし、ランタン片手に探索する余裕もないでしょう。



 そういったわけでどうしても贔屓目で【六花の塔】を見てしまうわけですが、ターニアさんの情報では順調そうな様子です。

 【浄炎の塔】が火ならばこちらは氷だとでも言うように氷一辺倒ではあるのですが、塔構成と魔物配置が巧い印象です。


 侵入者をどう動かすか、どこでTPを稼ぐかがよく考えられている。

 私も<帝政統治>のおかげで最近になってようやく意識できてきた部分ではあるのですが、それが少なからず見える創りになっていると思います。生意気言いますけど。


 アデルさんの知恵も入っているのでしょうが、やはりご自分でバベルに挑み続けた経験もあるのでしょう。


 もちろん今は使える魔物も限られますし、TP不足でしょうから思うような塔構成には出来ないはずです。

 しかし今後TP不足が解消されたら、その時まだ人気の塔であったなら、かなり強い塔になるのではないでしょうか。


 まぁ贔屓目は贔屓目ですので、そうなって欲しいという願望も含みます。



「アデルさん、シルビアさん調子良さそうですよ。侵入者も多いですし、探索が進んでいる人が全体にばらけてる感じだそうです。討伐もそこそこありそうですし」


『最高到達地点はどの辺ですの?』


「(二階層ボス部屋手前の罠ですね~)だそうです」


『結構進んでいますわね。それでいて一階層で討伐、または逃げ帰る者がいるということですわね?』


「らしいですね。ピンキリで広く浅くという印象です」


『理想的ですわね。ちょっと調子良すぎで怖いですわ』



 階層の全体に侵入者が散らばっているということは、それだけ塔構成が巧く、ルート取りが難しくなっているということです。


 塔主側からすると滞在TPが伸びますし、尚且つ攻略されにくい。

 脇のほうに配置した魔物や罠も無駄にならないなど色々と利点があります。



『アデルちゃんの指導の賜物なんか?』


『それもありますけれどシルビアさんは地頭が良いですわよ。それに加えて生真面目で冒険者としての経験もある。少々頭が固いところもありますが欠点はその程度のものでしょう』


『べた褒めじゃのう。それだけ惚れこむものがあるのじゃろうが』


『もちろん応援しているからこそというのもありますわ。しかし基礎的な部分では塔主の中でも一番ではないかと思います。塔主らしくあれる塔主として』



 塔主らしくあれる塔主、ですか。

 新塔主に『塔主とはなんぞや』と聞いたところで普通は分からないですからね。

 今の私からしてもよく分からない部分が大きいのですし。


 しかしアデルさんから見ればシルビアさんはそれが分かっている塔主ということですか。

 もしかしたら最大の評価かもしれませんね。



 できればプレオープンで一位とか狙って欲しいですが……【浄炎の塔】はどうなるのですかね。

 二十神秘(アルカナ)の二塔も気になりますし、他のダークホースがいないとも限りません。

 塔主総会を楽しみにしましょう。




というわけで次回塔主総会!



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