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新米女帝の塔づくり!~異世界から最強侍女を喚んじゃいました~  作者: 藤原キリオ
第六章 女帝の塔は忙しなく戦います!
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113:女帝vs強欲、対照的に攻め合います!



■エメリー ??歳 多肢族(リームズ)

■【女帝の塔】塔主シャルロットの神定英雄(サンクリオ)



 オープン前に【正義の塔】との攻塔戦(アディケイト)で攻撃側を選択したのは塔の創り方を学ぶという目的がありました。


 それから同盟の方々の塔や、塔主戦争(バトル)した相手の塔を見ると、なるほど塔によってこうも創り方が違うのかと思い知らされます。



 わたくしは実際に塔を運営するお嬢様のサポートという立場ですが、どうしても探索者目線で見てしまうきらいがありますね。

 自分ならどう攻略するか、この塔のこういうところは非常に難しい、と。


 ちなみに同盟で言えば一番困難なのが【世沸者の塔】、次が【忍耐の塔】でしょう。その次が【女帝の塔】ではないでしょうか。

 それもまた塔の特色ですしあくまでわたくし目線で見た場合の話になるのですが。



 今回相手の【強欲の塔】というのは三年目のCランク。

 潤沢な資金をもとに創り上げたCランクでも有数の塔と言われているそうです。


 階層構成も幅広く、一・二階層は荒野や森といった広い屋外地形。三・四階層は鉱山系の屋内迷路。五階層は【女帝の塔】の一階層のように街並みが広がり、六階層以降は『城』とのことです。


 奇しくも【女帝の塔】と似通った構成を得意としているようですから、実際にこの目で見て学ぶこともあるかと少し期待しています。話に聞く情報だけでは分かりませんからね。



 ……まぁ今のところあまりセンスを感じませんが。罠の配置であるとか。



「ハイフェアリー、ここの上で待機です」



 四階層『水晶鉱山』、先導するわたくしは<罠察知>でそれを発見すると指示を出します。



「あのハイフェアリーを避けて通りなさい! 真下にスイッチがあるわよ!」


「ほーらもっと右側寄ってー! 遅れちゃダメだよー!」


「警戒はハイフェアリーに任せます! 今は足元だけを注意して進みなさい!」



 さすがに二百人規模で迷路を進むとなると縦長になります。

 しかしクイーンたちは的確に指示していますから行軍に乱れはなさそうですね。


 【強欲の塔】は魔物も多く、こうした鉱山でもオークが主力となっている為、道幅は広い。

 設置してある罠も足元に置くものばかりでドロシーさんのような工夫は見られません。単調なものです。

 スイッチの上にハイフェアリーを浮遊させておけばそこを目印に罠を避けると。それで対処できます。



「ウィッチ隊、ハイフェアリーを伴って向こうの通路をお願いします。殲滅したら合流。魔石を拾い忘れないように」



 地図は判明しているので順路でない道には飛行している魔物を向かわせます。

 これならばスイッチを踏むこともなく、ハイフェアリーの<魔力感知>で魔物も分かりますから。

 出て来る魔物もそれほど強くありませんしね。


 そうして本隊は順路を行きます。三・四階層はひたすら行軍するのみ、という感じです。


 さて、あの方はそろそろ四階層に行きましたかね。下手な罠に掛かっていなければいいのですが。




■セリ ??歳 盗賊団【黒蓮華】元頭領

■【強欲の塔】塔主マグドリオの神定英雄(サンクリオ)



 【女帝の塔】は主力の全てを攻撃側に回した。神定英雄(サンクリオ)にクイーンにAランクの魔物まで。

 こちらに【強欲の悪魔マモン】がいるのを知ってたからそれだけ警戒したのだろう。


 おそらくあの腐れメイドをマモンとヤらせる為に道中の魔物は全てクイーンたちに任せるといった戦略。



 あたしはバベルの転移門で掃除をしてたあのメイドを見たことがある。あの塔がオープンして間もなくだ。

 たまたま見つけたから四本腕のメイドって何だよって思って近づいたんだ。<影潜り><気配微小>を使ってな。


 なのに気付かれた。

 視線と同時にとんでもない殺気をぶつけてきた。

 あたしは慌てて逃げたね。あんなとんでもない化け物がいたんじゃ近づくことさえ出来やしない。



 で、今回、腐れ豚野郎のせいで戦うはめになっちまった。こりゃもう終わったとさじを投げたね。

 しかし向こうの戦略が分かったおかげで光明が見えた。これならヤれると。


 あたしは二階層の隅っこで隠れ、やつらが三階層に上がるのを見送った。もちろん腐れメイドからは十二分に距離をとり、その上で<影潜り><気配微小>を使ってだ。


 やり過ごした後は急いで転移門へと向かう。一人で【女帝の塔】へと忍び込んだ。



 もちろん魔物は残っていた。雑魚だけどな。

 でも立ち止まっていたり座っていたり、それは『侵入者に対する迎撃体勢』ではない。

 全く攻められることを想定していない風に見えた。まるで置いてけぼりをくらった子供だ。


 あたしは気配を殺し、影から影へと移りながら進んでいく。


 おそらく向こうの塔主も自分の塔を画面で見ちゃいない。攻撃しかしてないんだから【強欲の塔】の様子を見るしかないんだ。

 それでも用心を重ね、身を隠し、魔物との戦いを回避して進んだ。


 二階層の中ボス部屋の扉なども開けっ放しだ。おそらくこの中にいたサキュバスを連れて行っているのだろう。


 それをいいことにあたしは三階層へ。そして四階層へと進む。

 <罠察知><危険察知>はお手の物だ。これで生きてきたようなもんだからな。



 しかしこの塔の罠はとんでもないと思い知らされた。よくこんなの思いつくもんだ。

 もしこれで普通に攻撃してたらどれだけ被害をくらうのか予測もつかない。


 なるほどこれは塔主の頭に差がありすぎる。金がなけりゃあの腐れボケ老人なんざとっくに抜かされてるだろうさ。


 そして五階層へ。そこは森と庭園だ。


 あー、なんかもうこれぞ『塔としての城』って感じだよな。今までの塔構成でよく分かる。

 【強欲の塔】の城とは創り方・魅せ方が違いすぎる。さすがは【女帝】様って思っちまう。


 ま、観光してる暇なんかねえけど。さっさとヤんねえとこっちが死んじまうからな。




■マグドリオ・ゲーロス 51歳

■第498期 Cランク【強欲の塔】塔主



「くそっ! ヤツら、儂の魔物をことごとく……! あれの補充にいくらかかると思っておるのだ!」



 侵入者の入る五階層まではリスポーン設定している魔物も多いがその全てを設定しているわけではない。勝手にTPを消費するのだからな。無駄な支出を抑えるのが商人というものだ。


 日に一度しか侵入者が来ないような通路の魔物にわざわざリスポーンの設定などせん。

 むしろ設定するほうが塔主として商人として失格だろう。楽に頼ってはいかん。


 それがこうもくまなく斃されると復旧させる為にどれほどTPが掛かることか。考えるだに恐ろしい。



 しかし【女帝の塔】を斃せば収益が跳ね上がる。それは確実。

 先行投資していると思えば安いものかもしれん。


 現に戦う数を増やすことで相手の戦力――体力と魔力は消費されている。

 隅々まで歩き、あれだけ魔法を使っているのだから当たり前だ。尽きるのが目に見えている。

 ならば上層に行くまでにもっと疲弊させたほうがいい。


 罠がことごとく失敗に終わっているのも気掛かりだが、おそらくセリのようにあのメイドも<罠感知>を持っているのだろう。

 罠の再設置にもTPはかかるからそちらの消費は抑えられるが敵戦力の消費といかないのが痛い。



 【強欲の悪魔マモン】に辿り着く頃にはどれだけ消費されているか。

 いや、その前に難関がある。儂としてはそこで潰れて欲しいものだが……どうなるか。


 高い買い物だったからな。――【輝石竜ヴィーヴル】は。




■エメリー ??歳 多肢族(リームズ)

■【女帝の塔】塔主シャルロットの神定英雄(サンクリオ)



「さて中ボス部屋ですがBランクのオークキングが一体とCランクのハイオークが十体です」


「Cランクの四階層というのはそんなに強いのですね」


「うちで言う七階層相当なのよ」


「まぁうちの場合、五階層にBランクが数体うろついてますけどねぇ」



 この塔は全体的に魔物のランクが高いと思います。

 対して【女帝の塔】は『低コストで高戦果』を実践していますので対照的ではありますね。

 それはともかく。



「ここにはクイーン三体とユニコーン・ヴァルキリー三体でいきましょうか」


「はい」「はいっ!」「よっし!」「「「ハッ」」」



 過剰戦力かもしれませんがユニコーン・ヴァルキリーを後方支援と考えればまあいいでしょう。

 あくまで戦うのはあの三人。これくらいは軽く斃してもらわなければ。


 この後にAランクが待っていますからね。





 【強欲の塔】五階層は『街』です。【女帝の塔】の一階層とは違い、迷路にはなっていないようです。


 階層中央に円形広場があり、そこから十字に走る大通り。その周りには家々。

 あまりディテールには拘っていないように見えますね。

 栄えている街ではなく、魔物に占拠された寂れた街という風に感じます。



 広場に陣取っているのがファットデーモン。Aランクの悪魔です。

 そして取り巻きにはCランクのイエローデビルとEランクのイエローインプ。

 その他、家からは例によってオーク系統が出て来るそうです。


 五階層でもうAランクかと思わなくもないですが、この先はそんなのばかりなのですよね。

 六階層のボスはAランクのカーバンクル。取り巻きにBランクのメデューサもいます。

 七階層と八階層は繋がっていて、巨大なスペースにAランク固有魔物のドラゴンがいるそうです。

 それを抜けた先にSランクの【強欲の悪魔マモン】がいると。



 フッツィル様の見立てではBランク上位ほどの戦力らしいですが、確かに【風の塔】とかと比べても遜色ありません。


 まぁあそこはディンバー王がいましたけどね。

 セイレーンと合わせてSランクが二体いるようなものです。


 それはそれとして。

 今までの迷路のように進みにくいということはないのですが、ファットデーモンの対処はどうしましょうかね。



「もう一度やってみますか?」


「是非とも」「もっちろん!」「さっきよりマシに動けると思いますわぁ」


「まぁユニコーン・ヴァルキリーの神聖魔法があれば安全ですかね。ではそれでいってみましょう」


「はい」「はいっ!」「よっし!」「「「ハッ」」」


「その代わりに道中の雑魚敵はなるべく配下に狩らせますよ。部隊を動かすのも強さの一つなのですから」


「「「はいっ!」」」



 よろしい。聞き分けの良い魔物たちで助かりますね。




ちなみにヴィーヴルは他の塔の固有魔物です。バトルの戦利品。

強欲の固有魔物はマモンの他にもう一体Sランクがいます。召喚してないですが。


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[一言] →【女帝の塔】は主力の全てを攻撃側に回した。 えっと99話を参考に残っているBランク以上を挙げてみると Sランク 妖精女王 Aランク アスラエッジ ミスリルヘラクレス Bランク ダークボア …
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