終点
「行ったか」
少年が旅立つのを見届けた後、俺の身体は膝から崩れ落ちる。
俺が倒れたこといいように、時空警察の連中が俺の周りを取り囲んだ。体中からの流血した俺の身体は随分前から活動限界を迎えていたこともあって、鉛のように重く指一つ動かなくなってしまっている。
「ここまでか・・・」
不意にそんな言葉が漏れた。終点はここになるのだとわかっていたはずなのに。
満身創痍の俺の前に一人の男が近づいてくる。
「随分と酷い状態だな。」
男はそう言うと周囲の警官に担架を持ってくるように指揮を執っている。俺はこの男を知っている。知っているが・・・そうか、もうそんな立場になったのか。
などと一人感傷に浸っていると男が話しかけてくる。
「何故、こんなことした。」
「・・・なんでだろうな」
「はぐらかすな。証言も証拠もあるんだ。もはや言い逃れはできないほどに。」
「・・・・・」
しばらく沈黙した後、俺は重すぎる体を起こし、近くのベンチに這い寄る。傍まで近づくと体をひねって座面の角にもたれかかり口を開いた。
「少年は旅立った。今後世界がどうなろうと、その結末を決めるのはあの少年だ。」
俺の言葉を聞いてか一人の警官が「転送座標の特定をします」と言い出した。俺は悲鳴を上げる体に構わず、その言葉を遮るように言った。
「無駄だ。既に事態は動き始めている。もはやお前たちではどうすることもできない。どれほどの力を持っていようと時間の流れを止めることはもう・・・できない。」
「・・・」
「まあ、あいつがどんな選択をしようと俺達には関係ないが。」
血を流し過ぎたせいか、次第に意識が遠のいていく。いよいよ迎えが来たようだ。
俺は今にも失いそうな意識の中、指揮を執っていた男の声がかすかに聞こえた気がした。
「どうしてですか、先生。」