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慟哭の時  作者: レクフル
第1章
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少年レクス 4

足早に、良い匂いのする袋を両手で抱えながら、レクスは帰路についていた。


早くあいつらにも旨い飯を食わせてやりたい。

そう思うと、ゆっくり歩いてはいられなかった。


エールを飲んで、テーブルにギリギリ乗る位の量の料理を食べながらも、レクスはこっそり目を盗んで持って帰れそうな物は鞄に忍ばせていたのだ。


あの兄ちゃんは良いヤツだ。


旅人に会う事はあまりないけど、旅人ってそうなのかな?

あんなんでやっていけるのかな?

しかし、そんな事よりも気になる事がある。


いつ俺と孤児院にいる子達を見たって?


確かに今日の昼頃は、施設の窓の立て付けが悪くなって開閉が出来なくなってたから、俺達子供でそれを修理していた。


慣れない手つきだし、背も足りなかったり要領も悪かったりで、なかなか上手く出来なくて、結構時間がかかったが。

子供達が皆外に出てたのは、今日はその時だけだ。


孤児院は街の南側にあり、その周りには建物らしいものは殆どない。

他の民家は少し離れた場所にあって、畑が広々とある。

小さな子供達は、農家をしている人の手伝いをして、小遣いを貰うことが多い。

しかし、今年は天候の影響で不作なのもあるのか、最近はあまり手伝いはいらないから帰れと言われる事も多かった。


今日も手伝う事がないからと断られ、アイツらはトボトボと帰って来た。

朝から何も食べてない。

お小遣いを貰うアテもなくなって、今にも泣き出しそうにしていた。


そんな空気を変えるべく、最年長の俺が


「そういや窓が壊れてたな。

皆で修理しようぜ!」


と言って、皆に手伝って貰いながら窓を治したのだ。

何もする事が無いよりも、何かしている方が気が紛れるからな。


辿々しく修理していたが、ぎこちなくでも窓が開閉できた時は、皆で喜んだ。


そんな所を見られていたとして、知らないヤツが俺達が見える場所にいたら、普通は気づく。


ましてや、あの兄ちゃんは一度見たら忘れられない様な、凄くキレイな顔の持ち主だ。

顔だけではなく、容姿や佇まいが、そこら辺に歩いてるヤツらとは全然違う。

上等な服を着ている訳じゃない。

旅人と言えばこんな格好をしているんだろうな、と思えるような服装だ。

でも、兄ちゃんの雰囲気か何なのか、普通の人とは違う何かを感じさせる。


銀に濃い清んだ紺色の、サラサラの髪。

人を魅了するような、しかし何のくすみもないキレイな目に長いまつ毛。

高すぎず、形の整った鼻。

その口で物を食べるのか?と思わせるほど、均整のとれた艶のある唇。

男っぽい顔立ちと言うより、中性的な感じで、

どれをとっても完璧としか言い様のない造形なのだ。


そんな人物は、孤児院の周りにはいなかったはずだ。

作業に夢中で全く気づかなかったか?

いや、そんな事はない。

俺が修理すると言いつつ、実際には指示を出したり、背が届かない子を抱えて作業させたりと、殆どを事を他の子供達にさせていたからだ。

孤児院の周りは見通しが良い。

離れていても知らない人物がいたら、すぐに気づいたんではないか。

しかし全く気づかなかったと言うことは、あの場所にはいなかったんじゃないか。


そう考えるも、他の誰かに聞いたのかも知れないし、謎なんだけど、それはそこまで気にすることでもないだろうと結論付けた。


だって、あの兄ちゃんは悪いヤツではない。


きっと、スゴく良いヤツなんだ。


普段はそこまで人を信用しないレクスだが、自分でも訳が分からない位にそう思えたのだった。






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