少年レクス 2
「腰まである銀髪の30才後半位の女?
多分見たことはないと思う。
銀髪はこの辺じゃ珍しいから、見かけたら忘れないと思うし。
顔は兄ちゃんに似てキレイなのか?」
「顔は似ていると言われた事がある。」
「だったら見たらすぐ分かるよ。
分からないって事は、見たことがないって事さ。」
「そうか。」
「力になれなくてゴメンな。」
「それは構わない。
それだけが理由でこの街に来た訳ではないしね。」
「他になにかあるのか?」
「まぁ、な。」
あまりハッキリ言わず、視線を反らす。
レクスは然程気にせずに、エールを飲み干して
「おばちゃん、エールおかわり!」
とジョッキを掲げた。
「レクスと言ったか。君は何歳なんだ?」
「俺は12歳だぞ。酒くらいもっとガキから飲んでたさ。よく冒険者の兄ちゃんやおっちゃん相手に、鎧やら盾やらの装備をキレイに磨いて小遣いを貰うんだ。結構上手なんだぜ?そしたらさ、たまに飯を食わせてくれるんだよ。気に入ったってね。大人ってさ、酒を飲む子供が面白いらしくって、ドンドン飲ませて笑うんだよ。俺は小遣い貰えて飯食えるならそれでいいし、酒は旨いしさ。あ、兄ちゃんの肩当てとかも磨いてやろうか?」
「いや、私はいい。」
「遠慮すんなよ!
安くしとくしさ!ピカピカにしてやるよ!」
そう言って左肩に手を伸ばしてきた。
私はそれを右手で弾いた。
「……悪い。あまり触られるのは好きではないんだ。」
ビックリした顔でレクスは
「あ、イヤ、俺もちょっと調子にのったかな。
ゴメンよ。」
「いや、気にしないで欲しい。」
「あ、うん。分かった。」
「はい、エールだよ!」
と言って、おかみがおかわりを持ってきた。
ナイスタイミングだ。
レクスはそれをグビグビ飲んだ。
本当に子供にしては、良い飲みっぷりだ。
「あ、でさ、この街の事を知りたいって言ってたよな?かぁちゃんの事以外で何が知りたいんだ?」