レクスの過去
レクスの事をトネリコの木に託したのは……
右手でトネリコの木と対話を試みたのだが、結局対話はできなかった。
しかし、私の気持ちが伝わったようだ。
レクスが光と共にいなくなったのが、恐らくその証拠だと思う。
私は、レクスをトネリコの木の精霊に託したのだ。
実はレクスは赤ちゃんの頃、このトネリコの木の元で発見されたのだ。
両親と馬車で移動中盗賊に襲われて、レクスを抱えた母親は命からがら逃げ出し、この場所までたどり着いた。
しかし盗賊に斬られた傷が致命傷となり、その場で息絶えたのだ。
見つけ出される迄の間、恐らく精霊の加護があったのだろう。
精霊達が優しく語りかけている姿が、初めて会った時、右手でレクスを抱き起こした時に見えた。
この事はレクス自身は忘れている事だったが、見たものが私には見えるので、レクスが忘れた事実も分かったのだ。
そう言うこともあって、あの場所にレクスを連れて行った。
せめて、最後は優しくレクスを送ってあげたかった。
死者をキチンと弔わないと、不死者となる場合がある。
ダンジョンにいる不死者達は、ダンジョンで亡くなった人達だ。
未練があったりする場合、不死者になりやすい。
そうならない様に、光で浄化し、精霊達にお願いしたのだ。
思い出すと、また涙が出そうになる。
私を庇ったレクス。
私が関わらなければ、起きなかった事。
私が人と深く関わったから……
ふいに優しく風が吹いた。
まるで、私を慰めるように……
溢れ出しそうな涙を手で覆い、暫くはその風に身を任せたのだった……
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一章とかの区切りをつけてなかったのですが、つけるとするなら『何事もなく』で一章完結と言うことになります。
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