レクス達の事情 3
次の日、シスターは朝から元気だった。
俺達が起きる前に起きて、朝飯の用意をしてくれたんだ。
久しぶりのシスターの飯だ!
やっぱり旨い!
すごく旨い!
モリモリ食べる俺達を見て、シスターは凄く嬉しそうだ。
俺も嬉しいぞ!
朝飯を食べ終わると、シスターとエミーは薬草を採りに行った。
フェルとルーシェとマーニは、今日は農家の所で手伝えるらしく、朝から喜んでた。
俺はシスターに買い出しを頼まれた。
俺の仕事は冒険者の装備を磨くのがメインだから、俺が働けるのは夕方からだ。
それまでは洗濯とか掃除とかの家事をして、それから買い出しに行く。
今日はシスターに、いっぱい買ってくる物を頼まれた。
回復薬と傷薬を作る材料が欲しいんだって。
それに、寒くても育つ野菜の種も。
早速買い出しに行く。
俺は値切り交渉も上手いんだぞ!
頼まれてた薬を作る材料を買って、種も買って、食材も買わなくちゃな!
あっちこっちの店を回って、両手にいっぱいの材料を抱えながら帰る。
着いたら昼頃で、シスターとエミーが帰ってきていた。
「シスター、買ってきたぞ!」
「ありがとう。レクス。重かったでしょう?」
「全然大丈夫だぞ!」
言いながら俺は力こぶをシスターに見せる。
「ふふ。頼もしいですね。」
シスターが笑う。
良いな、こう言うの。
アッシュのお陰で良いことだらけだ。
「もうすぐ他の子達もご飯を食べに帰ってくると思うから、レクスも手を洗って来なさい。」
「はい!」
買って来たものを片付けて、手を洗って、昼飯の準備をしていた時、フェルたちが帰ってきた。
フェルが俺を見つけると、
「レクス兄ちゃん、どうしよう……」
と、困った顔で訴えてきた。
「どうしたんだ?」
フェルの方を見ると、後ろに農家の人達が何人か立っていた。
台所からシスターが出てきて
「あら皆さん、こんにちは。今日はどうされました?」
と挨拶する。
「本当に元気になったんだな。」
「しかし、フェルの言ってる事は本当なのか?」
「シスターに聞いたら分かるだろ?」
口々に言い、シスターに歩み寄る。
何か嫌な感じがする。
「フェルから聞いたんだけど、シスター、あんた昨日やって来た旅人だかに病気を治して貰ったんだって?」
「え?!あ、あの、何ですか?いきなり……」
「フェルが言うには、そいつが光でシスターの病気を治したって言うのさ。それが本当なら、俺の娘の足もそいつに治して欲しいって思ってなぁ。」
「そ、そんな事はありえません!確かに病気は良くなりましたが、それはその方が持っていた薬が効いたからです!光って人の病気が治るなんて、そんなおかしな事がおこる訳がないじゃないですか?!」
「でもフェルが見たって言うんだ。もしそれが嘘だとしても、その、万能薬みたいな薬を持ってるって言うんなら、その旅人から譲って貰いたいと思っている。そいつに会わせてくれないか?」
「私の旦那も、病気で働けないんだ!とにかくその人に会わせとくれ!」
「頼むよ!俺のところも……」
思いの丈をぶつけるように、シスターに詰め寄っていく。
「待てよ!シスターは病気が治ったばっかりなんだ!そんなに怖い顔でやって来たら、また病気になっちゃうだろ!」
俺は必死に農家の人達を向こうへ押しやろうとする。
エミーもフェルもルーシェもマーニも、怖がって4人で部屋の隅に固まっていた。
そのくらい、危機迫った勢いがあったんだ。
「とにかく、彼は旅をされてる方なんです!私は連絡先も分かりませんし、もうこの街を出たのかも知れないんです!」
「あんた、隠してるんじゃないのか?!」
「自分だけ元気になったら、それで良いのか!」
「それでも神に教えを乞うシスターか!」
口々にシスターを罵倒しはじめる。
俺は必死にシスターを庇う。
シスターは必ず守るからな!
そして、アッシュにも迷惑がかからないようにするぞ!




