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慟哭の時  作者: レクフル
第7章

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リンデグレン邸


俺とゾランと人形遣いウーログ、それに霊体の幻術師イングヴァルと呪術師ヴァルデマで、リンデグレン邸へ乗り込む。


正面玄関から堂々と入って行くと、メイドがやって来る。

それをウーログが動かない様にする。

ここにいる者達は、全て術に操られていると思って行動する事にした。


裏手に回って逃げ出せない様に、ウーログが本職である術を施している。

小さな木の人形達を何体も取り出し、術をかけて大きくし、それを全て操るのだ。

ウーログのこの術は、本当に今回は必要だった。

これのお陰で、人数は最小限に出来たし、幻術や呪術に操られる心配がない。

術に侵された者達は一旦動けなくしておく。

ニコラウスや術師達を捕らえてから、術を解除する為だ。

まずは急いでニコラウスの元へ行かなくては……!


使用人達だけではなく、護衛の者達も多く邸にはいて、俺達が進むと次々と現れてくる。

雷魔法で護衛の者達を感電させて、すぐに倒して行く。

それでも術に侵されていた場合は、すぐに起き上がって動き出す。

そんな時は、やっぱり直接脳に術を与えられる、ウーログの力が役に立つ。


一階を進み、やって来る使用人達や護衛の者達の動きを止めて、それから二階の階段を上がり、リカルドの部屋だった場所へと急ぐ。

二階でも、護衛の者達が次々と俺たちに襲いかかってくる。

先程と同じようにして、俺は感電させて行くが、それでも動き出す者達はウーログが術をかけていく。

そうしながらリカルドの部屋に近づいて行く。


ニコラウスの感情が読み取れる……


憎しみ……焦り……しかし、嘲り笑う感情と高揚感も伝わってくる。

ここにニコラウスがいる……!


部屋の前に人がいる……術師か……!


ウーログが操ろうとするが、結界に阻まれた。

それを光魔法ですぐに解除する。

けれどその間に幻術を放ってきた。

即座に術式を読み取り、それを無効化する術式を放つ。

奴が狙ったのはウーログだ。

ウーログが幻術に侵されれば、今ウーログに操られている者達の術は解かれる。

だから、どうしてもウーログは守らなければいけない……!



「ガスパール……!なぜこんな事を……!」



イングヴァルが辛そうに言うが、その言葉は届く事はない。



「……呪いをかけられている……!」



ヴァルデマが、ガスパールと呼ばれた幻術師が呪術に侵されていることを見抜く。


俺はすぐに雷魔法でガスパールを感電させる。

一瞬、ガスパールはふらついて倒れそうになる。

その一瞬の隙を逃さずに、即座にガスパールの元へ風魔法で足を速くして行き、頭を左手で鷲掴みにする。

そうして、ガスパールから呪いだけを取り除いた。

すると、ガスパールはゆっくりと倒れていった。



「ガスパール……だからお前は……!いや、それでも……っ!」


「ガスパールの身内……妻も呪いをかけられたな……従わざるを得なかったのだろう……」


「そんな……」


「奴は……そんな事まで……っ!許せんっ……!」



リカルドの部屋の扉には、強力な結界が張られてあった。

しかし、それを俺が光魔法で解除すると、アッサリと扉は開けられるようになった。


開けた瞬間、呪いの術式が俺に降りかかってくる。即座にそれを無効化する。

その様子を見た呪術師と思われる男が、驚いた顔をした。



「なっ!なぜそんな事が出来るっ!」


「どうした?あんな奴、すぐに殺しちゃえよ。」



呪術師の後ろには、ニコラウスがいた。

他に護衛の者達もニコラウスを守っている。

俺を見て、ニコラウスはニヤニヤ笑い、大きな庶務用の机の椅子にドッカリと座ってこちらを見ていた。


すぐに護衛の者達を感電させて、それからウーログが動けなくする。

その様子をみたニコラウスから笑みが消えた。



「なんだよ……何してくれるんだよ……!」


「ニコラウス、もう止めろ。」


「何がいけないんだ?!僕はこの国を統一させようとしてやってるんだ!こんなバラバラで統治されていない国なんか、いずれ破綻していくだろ?!王家に力を与えて僕がこの国をおさめたら、この国は安定するじゃないか!」


「本気で言ってるのか?」


「王家が権力を持って統治してやれば、国は安定するだろ?!色んな街を見て、貧富の差があるのはおかしいって、お前も思うだろ?!それは統治する者がバラバラだからだ!」


「そうかも知れんが、お前が統治したところで、この国が良くなる事はない。結局は私利私欲で動いてるのみだからな。国民の為を思って行動するならば、リカルドの様な者を殺す筈がない。」


「分かったふうな口を聞くな!僕は一国の王となる男なんだ!それがお前のせいで……!」



こう話してる間にも、呪術師は俺たちに呪いを放ってくる。

結界を張り、放たれた術式を無効化していく。

その様子を見て、ニコラウスは段々と焦り始めた。



「お前……なんなんだよ!なんで平気なんだよっ!」


「お前が術にかけた者達の術式を全て解除していったのだ。そうしたら、術者の術式や癖が分かってな。ある程度の術式であれば解除できるようになったぞ。」


「そんな事……出来る訳が……!」



言ってる間に、呪術師が動かなくなった。

ウーログの術が届いたのだ。

超強力な結界を解除するのに少しばかり手間取ったが、術者さえ止められれば、ニコラウス等恐るるに足りない。

ゆっくりニコラウスの元まで歩いて行くと、ニコラウスは恐怖に顔を歪めていった。



「なんでだよ!僕はお前に迷惑をかけた訳じゃないだろ?!なんで止めるんだよ!」


「お前は上に立てる器ではない。」



ニコラウスの頭を左手で鷲掴みにして、生気を奪っていく。

みるみるうちにニコラウスは老いてゆき、立つのもやっとな位になった。



「な……なん……こ、んな……っ!」


「殺しはしない。裁くのは俺ではない。この国と、グリオルド国に任せる。お前は残り少ない命を贖罪に費やすが良い。」



ウーログの人形達が、ニコラウスを捕らえる。

ニコラウスはグッタリして、人形達に支えられる様にして歩いていた。


その後俺は動けなくなった者達の呪いや幻術を一人一人解いていくことにする。

ゾランは動けなくなった者達を、一つの場所に集めていた。

自分は恐らく戦力にならないからと、後で解除出来やすい様にしておいてくれていたのだ。

お陰でかなり早くに皆を正気に戻す事が出来た。

あとはウーログが術を解除し、皆に事の経緯を伝えて行けばいい。

すぐに納得は出来ないかも知れないが……


ゾランが、その役をかって出てくれた。

皆に事情を話して納得してもらうから、俺には早くにニコラウスの力を削いだ事をムスティスに伝える様に促した。

ムスティスは今も心配して、俺を待っているだろうから、と。


ゾランに言われて、俺はムスティスの元へと行く事にした。

しかし思った通り、ニコラウス自身に力は無いから、術者さえ対策できれば問題なく制圧できた。

だが、この術者に対抗できる者がなかなかいなかったのだ。


イングヴァルとヴァルデマには、亡くなってからも力を貸して貰えたことに感謝し、光魔法で浄化させ、天に還した。

俺に礼を言いながら、二人は天に召されて行った。


ではムスティスに報告に行くとしようか。









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