それは笑顔で
ウルとエリアスと、これからどうやってオルギアン帝国まで行くのかを話し合う。
ここはインタラス国で、オルギアン帝国まではグリオルド国を通って行く。
アクシタス国からも、グリオルド国を通って行くけれど、アクシタス国へ戻った方が早くにグリオルド国へ行ける。
ここからだと日数は多くかかる事になる。
それをウルに聞いてみる。
「……アタシは……このままここからグリオルド国を通ってオルギアン帝国まで行きたい……」
「そっか。ウルがそう言うんなら、そうしよう。急いで行く必要もねぇしな。」
「うん。そうだな。じゃあ、明日旅立つ事にしようか?」
「うん。」
「じゃあ、ちょっと俺、スラムに行きてぇんだけど……」
「あ、私も行きたい……けど……ウルは?」
「スラム?スラムで何すんの?闇取引か?」
「なんだそれ!んな事しねぇよ!どんなイメージだよ!」
「いや、なんか如何わしい感じがしそうやから……」
「ウル、そうじゃないんだ。スラムに行って、炊き出しとかするんだ。それから皆で一緒に食事をするんだよ。」
「え?そうなん?……ほなアタシも行きたい。」
「じゃ、決まりだな。」
そんな流れで、スラムに行く事になった。
行く前に食材を色々買って、露店で食べ物もいっぱい買って、スラムに向かった。
到着すると、私たちを見つけた子供達や大人もワラワラと集まってくる。
エリアスはウルを、ギルドでしたのと同じように紹介する。
子供達は目をキラキラさせて、一緒に遊ぼうってウルを奥に連れて行こうとした。
ウルは最初緊張しながらも、少しずつ慣れていって、気づいたら周りの子供達と大きな笑い声を上げながら遊んでいた。
その間に、私とエリアスが食事の用意をした。
食事が出来上がると皆を呼んで、大人数で食事をする。
ウルは終始笑顔で、友達も出来たみたいで嬉しそうにはしゃいでた。
食事も終わって、皆を浄化で綺麗にして、薬だと言って水に回復魔法を施した物を渡す。
前にも渡したけど、凄く効くクスリで助かった!って、喜んでくれていた。
帰る時も、ウルがなかなか帰りたがらなくて、エリアスが引き剥がすようにしてウルを連れて行った。
いつまでも手を振る子供達に、ウルもいつまでも手を振り続けていた。
帰り道の道中で、ウルが興奮冷めやらぬ感じで言い出す。
「ここは良いとこやな!兄ちゃはずっとここにおったん?」
「そうだな。ウル位の年から一人になったから、それからここに来たな。」
「姉ちゃはずっと旅をしてたん?」
「うん。母と一緒にね。」
「そうなんや……」
「どうしたんだ?」
「こう言う所で、皆で一緒に住めたら良いのになって思ってん。今日、楽しかったから……」
「そうだな。オルギアン帝国まで行って母に会って、その後またどうするか一緒に考えよう?」
「うん!」
三人で手を繋いで宿屋まで帰る途中で視線を感じた。
視線を辿ると、そこには武器屋の受付にいたヴェーラと言う女性がいて、私を見つめていた。
何だろう?と思って軽く会釈して見ていると、ヴェーラは私に微笑んでゆっくり近づいてくる。
私も同じように微笑む。
近づいてくるヴェーラにエリアスも気づいて、どうしたんだ?って聞くけれど、エリアスの言葉は耳に入ってないのか、無視をして私の元までやって来た。
それから私に抱き合うように近づいて……
「……え……」
「何してんだ?ヴェーラ?」
「姉ちゃ?」
思わず左手でヴェーラの右手を掴んでしまう……
制御出来なかったから、ヴェーラは悲鳴を上げながら、恐怖に顔を歪ませてその場に崩れ落ちる。
その右手にはナイフが握られてあって、刃には血が着いていた。
エリアスとウルが私を見て、驚いた顔をする。
ゆっくり確認するように見ると、私の胸の下辺りから血が流れ出ていた。
左手で押さえて、これ以上血が流れないようにする。
喉から血が上がって来るのが分かる。
鉄の味がして、口からそれを吐き出してしまう……
「アシュレイっ!!」
「姉ちゃ!」
「エリアス……ウル……大丈夫……ヴェーラ……左手で……触って……制御できて、なく……今…怖がって………ヴェーラ…を……」
エリアスが私を支えるように抱き締める。
「エリアス………私…は常、に……回復…し、て……だか…ら…大丈……夫……」
痛みと共に、少しずつ意識が遠退いていく。
ヴェーラが悲鳴を上げながら、走ってどこかに行ったようだ。
大丈夫かな……?
私に触られたら……私の事を忘れるけれど…
恐怖に侵されたら……どう治っていくのか……
私にも……分からない……
エリアスが私を呼んでいるけど
その声が段々遠くなっていく
そんなに呼ばなくても
聞こえているのに
聞こえていたのに
エリアス
私は回復していけるから
大丈夫だから
そんなに心配しないで




