精霊に近い存在
少女はなぜか室内にいた筈なのに、マントを着ていてフードを被っていた。
そのフードから見えた髪の色が、銀色だった。
「なんやねん!アンタらっ!さっきからウルウルウルウル煩いっちゅーねん!」
「いや、なかなか出て来ねぇから。」
「こっちも色々忙しいっちゅーねん!それに知り合いでもないのに、なんで何回もウルって連呼されなアカンねんっ!なんやねん!アンタらっ!」
「用があって来たんだよ。中に入って良いか?」
「アカンっ!訳の分からん奴を家に入れる訳には……って、何勝手に入ってんねん!!」
エリアスがウルを気にせず家に入って行くから、それはどうかな……とか思いながら、私も一緒に部屋に入った。
「へぇ……中はまぁまぁ広いんだな。」
「せやから、なんで勝手にテーブルに着いてるねん!」
「あ、別にお茶とかいらねぇから。」
「誰が出すか!」
「そうそう。聞きたい事があんだけど。」
「なんやねん!」
「なんでそんな喋り方なんだ?」
「えっ?!アンタらと喋り方、そんな変わらへんやろ?!」
「いや、すっげぇ違う。まぁ良いけど。」
「良いんやったら聞かんでええやないかっ!」
「ここにいた錬金術師について聞きたいんだ。」
「え?!何?!錬金術師?!って……アンタ……」
「ん…?何?」
いきなりウルは私の顔をマジマジと見だした。
「え、なんか付いてるのか……?」
「え?あ、いや、何でもないわ……リサはおらへんで?今はアタシ一人や。」
「どこに行ったか、知んねぇか?」
「知らん。アタシも知りたい位や。」
「ウルも錬金術、使えんのか?」
「まぁ……ちょっとはな。」
「あ、じゃあこれ、ちょっと見て欲しいんだけど……」
私は割れた腕輪をウルに見せた。
「えっ?!ええっっ?!なんでこんなん、アンタらが持ってんねん!」
「え?!この腕輪の事、知ってるのか?!」
「これっ!リサが作ってたヤツや!アンタら!リサからこれを奪ったんか?!」
「リサがこれを作ってた?!え?!どう言う事なんだ?!」
「問答無用じゃ!成敗したらぁ!」
言うなり、ウルは私達に向かって魔法を放ってきた!
家にあるテーブルや棚、椅子等が一斉に私達まで飛んできた。
結界を張ろうとしたその時、右手薬指が輝いたと思ったら、飛んできた物が全部弾き返されて、ウルの頭に椅子が当たった。
咄嗟に空間収納を発動させて、棚やテーブル等を空間に入れる事ができた。
あのままだったら、棚やテーブルがあちこちに当たって、家の中がぐちゃぐちゃになってた筈だ。
良かった……
頭に椅子が当たったウルは、その場に倒れて気を失っていた。
ゆっくり近づいて、そっと右手でウルに触れてみる。
しかし、ウルの過去は見えなかった。
「エリアス……ウルの過去が見えない。この子は銀髪の部族なのかな……?」
「いや……そうじゃねぇと思う。耳、見えるだろ?」
言われて、フードから少し出た耳を見ると、その耳は大きくて尖っていた。
「この子は……エルフ……」
「エルフは精霊に近い存在とされてるからな。もしかしたら、それで触っても何も起こらねぇかも知んねぇな。」
「エルフには触れるのか……」
「俺はまだ触るの、ちょっと怖ぇけどな……」
「うん、仕方ないよ。」
エリアスが風魔法でウルを浮かせて、奥の部屋のベッドまで連れていって、そこにゆっくり下ろして寝かせた。
頭にあった大きなタンコブを、回復魔法で治す。
しかし……
ウルはここに一人で住んでるんだろうか……?
年は11、2歳位で、まだ一人で暮らすには幼い年齢と思われる。
この家でリサと一緒に暮らしていて、もしかしたらここでずっとリサの帰りを待っていたんだろうか……?
そっと頭を撫でると、ゆっくりウルは目を開けて私を見て
「リサ!」
そう言って私に抱きついてきた。
ビックリしたけど、そのままウルを優しく包み込む様にして、何度もウルの頭を優しく撫でた。
「リサ!どこに行ってたんや!ずっと待ってたんやで!?」
「あの……ウル……?」
「え……?」
顔を上げて、私の顔をマジマジと見て、それからビックリしてウルは私から離れた。
「な、なんや!リサちゃうやんか!って、なんでここに……あ、そうや!アンタらリサの腕輪っ!」
「だから違ぇって!これは俺が赤ん坊の頃から俺の腕にあったヤツなんだよ!そのリサって奴も知らねぇよ!」
「そんな嘘が通用するとでも思てんのか!」
「ウル……本当なんだ。これは能力制御の腕輪なんだろ?この腕輪があったから、私達にある異能の力が抑えられていたんだ。」
「え……?アンタ……もしかして……アシュリーか……?」
「え?!」
「なんで知ってんだ?!」
「そうか……やっぱりそうなんか……」
そう言ってからウルは一滴、涙を溢した……
なぜ私がアシュリーだと分かったんだろう?
なぜウルは泣いてるんだろう?
しばらくの間エリアスと私は、ウルの様子を見守っていたんだ……
いつもお読み下さって、ありがとうございます。
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今回、ウルを関西弁にしましたが、もし意味が分からない等があれば、教えて頂けると助かります。
物語は終盤に向かって進めております。
少しでもお読み頂いてる方がいる事が、何よりの励みになっております。
今後ともどうぞ、よろしくお願い致します!
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