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慟哭の時  作者: レクフル
第7章

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手土産


アクシタス国で条約を結び、やっと少しは時間が持てる様になった。


アクシタス国に来る馬車の中で、カルレスに渡していたピンクの石が光って報告があったんだ。

その内容は、ジルドからの報告だった。

どうやらゾランの読みどうり、エリアスは逃亡奴隷として捕まったそうだ。

それから拷問を受けて、その後ノエリア・オルカーニャに引き取られたらしい。

やはりそうだったのか……

当たって欲しくない事が当たってしまったんだな……


これを踏まえてノエリアに会いに行かなくてはならない。


しかし、どうやって会う事を取り付けるか。

エリアスがそこでどんな目にあっているのか、正直分からない。

そこまではジルドの報告にも上がって来ていなかったが、奴隷制度を反対している者らしいから、酷い扱いを受けている事は無いとは思うが……


何か手土産でも持って行かなければならないか……



「ゾラン。ストリア商会のマルティンが今どこにいるのか分かるか?」


「はい。マルティン殿は現在、このアクシタス国におります。条約を結ばれる、この歴史的瞬間を見ておきたい!と言われて、何日も前からこの王都に来ていた様ですよ。」


「そうなんだな。それは好都合だ。」


「ノエリア・オルカーニャとの交渉材料ですか?」


「ハハ、そうだ。ゾランの読みにはいつも感心させられるな。で、ゾランはマルティンと連絡を取っていたのは、この事を踏まえてか?」


「はい。ノエリアは商人です。その世界は広いようで狭いんです。なので、マルティン殿程の商人であれば、こちら側に付けておけば何かしら有利に進めていけますからね。」


「なかなか考えるな。それで連絡を取り合っていた、と言う訳か。」


「ストリア商会がオルギアン帝国へ出店する際は、元いる商会からの横槍を私が防ぎましたからね。恩を感じて頂かないと困ります。それは、こう言うときの為なんですから。」


「色んな事をしているんだな。頼もしいぞ。」


「ありがとうございます。」


「もし……」


「はい?」


「もし、俺が今いなくなったら、オルギアン帝国はどうなると思う?」


「え?!何を仰ってるんですか!何処かへ行かれるおつもりですか!?」


「いや、例えばの話だ。勝手に放り出して何処かへ行く位なら、俺は最初から皇帝に等なってはいない。」


「そうですよね……ビックリしました。……そうですね……今ヴェンツェル皇子はリドディルク様の元で仕事を手伝える程に成長されましたし、リドディルク様が皇帝になられてから、悪い膿はほぼ出しきった状態になっています。なので、徐々に各部署に仕事を振り分けて行けています。ですので、もし、今リドディルク様がいなくなったと仮定すれば……いや、それはやはりまだ……」


「そうか?ある程度の基盤は作ったつもりだ。大きな決定等はまだ難しいかも知れないが、通常の業務に関しての決定であれば、ヴェンツェルで問題なく進めていけるだろう?」


「その大きな決定って言うのが大変じゃないですか!特に今回の様な条約を結ぶ等に関しては、やはりリドディルク様がいらっしゃらないと無理な事でした!まだ交渉術等はヴェンツェル皇子には難しい事なんです!」


「まだもう少しか……仕方がないな……」


「やっぱり何処かへ行こうとされていたんですか?!ダメですよ!」


「分かっている。そうではない。けれど、もし俺がいなくなったら……」


「リドディルク様っ!」


「聞け、ゾラン。如何なる場合も想定しておかなければならない。いつどこで俺は暗殺されるか分からん。敵も増えた事だしな。」


「そうですが……!」


「俺がいなくなったら、ヴェンツェルが皇帝として育つまで、俺の不在を何とか隠し通せ。今執務室で業務している者達は、ゾランが選出した優れた者ばかりだ。彼らに任せれば、ある程度は問題なく進められる。それから、大きな決定が必要になれば、それはゾランが決めてくれ。」


「私がそんな事等……!」


「ゾランの考えはいつも正確で明瞭で正しい。それを俺の決定とする。これは命令だ。」


「それは……」


「そんな顔をするな。もしもの時の事だ。今回の事で、アクシタス国やニコラウスの所からも刺客が来るかも知れんしな。まぁ、俺は簡単に暗殺されるつもりはないがな。それはゾランも知っているだろう?」


「勿論です!そんな簡単に死なれては困ります!」


「ハハハ、分かっている。俺はしぶといぞ?そう簡単には死んで等やらん!」



笑う俺に対して、ゾランが心配そうに俺を見る。

例え話だと言うのに、心配性だな。

しかしそれを考えると、やはりゾランには爵位が必要だな。

必要ないとは言うが、色んな物事を円滑に進めていく為には、やはりそう言う物も必要となるからな。

拒否するゾランを何とか説得して、その手続きを取る。

貴族になったからと言って何が変わる訳ではないが、オルギアン帝国は未だ貴族社会だ。

その中で爵位を持たない者は軽視される嫌いがある。

それでもゾランは今までそんな事は関係なく、良くやってくれていた。


そんな話をしながら、馬車で王都リニエルデの中心部分に大きくある、ストリア商会へ向かった。

王都広しと言えど、ここまで大きな商会はなかなか無いだろう。

マルティンの実力が伺えるな。


それからマルティンと面会をして、交渉材料を手に入れた。

もし交渉等する必要が無かったとしても、手札を多く持っている事で有利に話を進めていけるだろう。


マルティンは終始恐縮しつつ、笑顔で俺に接していた。

オルギアン帝国の皇帝と分かる馬車で行ったから、皇帝の行く店としてストリア商会は更に発展していく筈だ。

それも分かって、マルティンは有り難そうに何度も頭を下げた。


ではこれからノエリア・オルカーニャ邸まで行くとするか。









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