逆恨み
「あの、リドディルク皇帝陛下?」
「え?あぁ、すまない、少し考え事をしていてな……」
「お疲れではないですか?すぐに休まれますか?」
「いや、大丈夫だ。あれから……俺がここに来た時から、この国はどうだ?」
「リドディルク皇帝陛下が各部署の者達に助言して下さった事を遂行すると、本当に上手く事が運びまして、皆が驚きと喜びの声を上げておりました!私の側に置いた侍従は聡く、よく動いてくれる者で、その眼力に感服致しました!」
「そうか。それは何よりだ。」
「それを踏まえて、相談したい事がございまして……」
それからシルヴィオが今抱えている問題等を話し合った。
話を聞くだけでも、その状態が前よりも分かるようになってきたので、的確にアドバイスをしていく。
シルヴィオはそれを侍従に書き留める様に言い、真剣に聞いて納得していた。
ふと、感情に動きがあった様なので、それをしっかり読み取る……
そう言えばそんな奴がいたな……
「時にシルヴィオ陛下。ニコラウスはどうしている?」
「え?!……あ、はい……そうですね、お伝えしておかなくてはいけませんでしたね……」
「何かあったのか?」
「いえ、まだそうと決まった訳ではありませんが……以前リドディルク皇帝陛下に言われた通りニコラウスに任せていた仕事を調査してみたところ、言われていたように横領が発覚致しまして……それもかなりの額だったので、責任を取らせる為に更迭し、出向させました。」
「ほう。出向と言う左遷だな。どこに?」
「はい。アクシタス国です。私の妻の父親、つまり義父がアクシタス国で財務大臣をしておりまして、勉強をさせる為に義父に私からお願いしたのですが……」
「ニコラウスはどうしたんだ?」
「そこでも横領をした様で……」
「どこに行っても変わらない奴だったんだな……」
「私もそんな事をされては面目も立たず……横領した額はこちらで補填し、ニコラウスの処分は義父に任せたんですが……」
「ニコラウスはどうなった?」
「義父の妹君の嫁ぎ先である、シアレパス国の伯爵でリカルド・リンデグレン邸で侍従として働かせる事にした様です。」
「そこでも何かしたのか?」
「それが……まだなにも分かってはいないのですが……リカルド氏が何者かに殺害されまして……それから程なくして、義父の妹君、つまりリカルド氏の奥方になる方が不審死で発見され……子供や継ぐ者がいなかったリンデグレンはそのまま衰退するかと思われたのですが……」
「それをニコラウスが継ぐ形になったのか。」
「はい……侍従として働きながら、リンデグレン邸の事をしっかり把握し、運営等も側で勉強していた様でして……リカルド氏が亡くなられてからは代わりに仕事をしていた様ですが、同じ様に、いえ、それ以上に功績を残す程の働きぶりだった様で……皆が感心した程だったそうです……」
「それは……不味いな……」
「やはりそう思われますか?」
「ニコラウスは決してバカではない。聡く、要領も良いし、人当たりも悪くない。それを良い様に使っていければ良かったんだが、何故か間違った方向へとその能力を使い気味だ。リカルド氏は……ニコラウスに殺されているな。その奥方もニコラウスによって殺害されているだろう。しかし、何の証拠もない。これではどうにも出来ないな……」
「あぁ……やはり私が思った通りだったんですね……!」
「それからニコラウスの動きはどうだ?」
「今のところは特に何も……しかし、これからどうなるか……」
「そうだな。アイツの性格ならば……自分をこんな所に送り込んだ者達を恨むだろうな。」
「それは私と……もしかしたら……リドディルク皇帝陛下もでしょうか?!」
「そう考えておいた方が良いだろうな。」
「何て事だ……」
「これからのシアレパス国の動きをしっかり把握しておく必要があるな。俺も気にしておくが、気を許さない事だな。」
「分かりました。助言を頂き、感謝致します……!」
厄介な奴だな……
特に俺を恨んでいるだろうな。
自業自得だと言うのに、ああ言う奴は何か都合の悪い事が起きると何でも人のせいにして、自分は悪くないと思いがちなんだ。
ニコラウスの動向も気にしなければな。
アクシタス国との条約が結ばれた後、やはりシアレパス国まで行って、エリアスの事とニコラウスの事を調べるとするか……
その夜は、簡易な食事会が行われた。
俺の意向を汲み取って、シルヴィオは贅沢をする事なく、しかし料理はもてなす心のこもった物が用意され、旅で疲れた体に効果のあるものばかりが並んだ。
その場には各部署の担当者が現れて、また俺に助言を求めてくる。
それは、この国を良くしようと思っての行動だから、俺は喜んで話をした。
皆、有り難そうに俺の言う事を真剣に聞いてくれていた。
良い国だな……
この国はもっと良くなっていく。
それが俺には嬉しくて仕方がないんだ……
だからそれを邪魔しようとする者は排除しなければならない。
その為に出来ることはしていかなければな。
王城で一泊し、それからまた馬車での移動だ。
出発する時は、以前と同様に見送りが多く、皆から感謝の言葉を向けられた。
それは言葉だけではなく、その気持ちも伝わって、それだけでも俺に力を与えてくれたんだ。
それからアクシタス国へ。
滞りなく進み、オルギアン帝国を出て十日と半日程で、アクシタス国の王都リニエルデに到着した。
翌日、王都の中央広場で大勢の観衆が見守る中、オルギアン帝国とアクシタス国は条約が結ばれ、晴れてアクシタス国はオルギアン帝国の属国となった。
貧困に喘いでいた民衆からは歓喜の声が響いたが、貴族や富豪等と言った上層部の者達からは、負の感情がてんこ盛りかと言う程俺に注がれた。
それでも、これで奴隷制度を廃止でき、貧富の差を少しずつでも無くせていけば、この国は今よりもっと繁栄する。
一部の者だけが豊かな国等、いずれ破綻して行くんだ。
俺を暗殺しようとする気配があちこちから感じ取れるが、ひとまずはこれで落ち着くだろう。
ちょっとやそっとの暗殺者には殺られる訳はないが、まぁ今のところ防げる範囲内なので良しとしよう。
そう言ったらゾランに、良しとしないで下さいっ!と怒られた。
これでやっと少しは時間が出来た。
さぁ、俺もシアレパス国へ行くとしようか。




