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慟哭の時  作者: レクフル
第7章

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懐かしくて


「あの……リュカさん、あちらにいる方は……?」


「あぁ……彼の事は気にしなくても……えぇっ?!」


「なんだか……泣いていらっしゃる様なんですが……」


「泣いてねぇよっ!」


「泣いてたよー?」


「本当だー!大人なのにー!」


「なんかあったのー?」


「泣くなよー!男だろー!」



俺の周りにも、子供達が集まりだした。

俺を見て、心配そうだったり、なんだコイツ?みたいな顔をしてたり、ニコニコ笑ってたり、不思議そうな感じで見てたりとか、子供達は様々な表情をしている。

その中で一番小っちぇ男の子を抱き上げて、俺は肩車してやった。



「俺は泣いてねぇって!お前ら、元気だな!」


「わぁ!高いっ!」


「良いなぁ!僕にもして!」


「アタシにもっ!」


「ハハハ、分かった分かった!順番な!」



集まってきた子供達を一人一人順番に肩車して、グルグル回ったり、ジャンプしたりして子供達をキャアキャア言わしてやった。

ひとしきりそうやって遊んで、皆の肩車が終わってふと見ると、アシュレイとシスターが呆然として俺を見ていた。



「あ、悪いっ!つい遊んじまった!」


「あ、いえ、ありがとうございます!私ではそんな事出来なかったので、子供達は凄く楽しかったと思います!」



子供達はまだ俺の周りにいて、俺に抱きついてきたり、よじ登ろうとしていたりした。

力コブを作るようにすると、その腕に何人もぶら下がって来て、ついまたグルグル回しちまった。



「ここの子供達は元気だな!きっとシスターの教育が良いんだな!」


「いえ、そんな……ありがとうございます!」


「ねぇ!お兄ちゃんも一緒にご飯食べようよー!リュカ兄ちゃんの作るご飯、スッゴく美味しいんだよー!」


「あぁ!知ってるぜ!俺はエゾヒツジのクリームスープがお気に入りだな!」


「え……」


「それ、僕も食べたー!初めて食べたんだけど、あれスッゴく美味しいよねー!」


「なんでも上手に作るからな!今日も楽しみだな!」


「うんっ!」


「あ、では中へどうぞ。その……」


「俺はエリアスだ。」


「私は教会でシスターをしております、スザンナと申します。こうして孤児院で、子供達のお世話をさせて頂いております。ではエリアスさん、どうぞ。」



シスターに促されて、俺は中へ入ることにした。

俺の背中には子供がまだぶら下がってて、おんぶするようにして部屋へ入る。

アシュレイは扉の所で立っていて、ただそれをじっと見ていた。

アシュレイの横を通る時に、「アシュレイも今は触っても大丈夫だぜ。」と告げて、頭をポンポンした。

アシュレイは不意に頭を手で押さえて、少し顔を赤くして、俺をバッと見た。

その様子が可愛くて、つい笑っちまう。

もうその反応が、前と全く変わらねぇんだ。

いくら名前と髪色とかが違っても記憶が無くなってても、リュカはやっぱりアシュレイなんだ。



「じゃあ、皆、まず手を洗おう!誰が一番キレイに洗えるか、勝負だっ!」


「アタシが一番!」


「俺が一番だ!」


「待て待て、慌てんな!順番だろ?」



子供達が順番に手を洗って、洗い終わったら皆が俺に見せに来てくれる。

「よし、大丈夫だ!次!」とか言いながら、頭をワシャワシャして、皆が手をキレイに洗い終えてから戻ってくる。



「皆上手に洗えたな!皆が一番だ!」


「えー!ズルいー!」


「やった!僕が一番だ!」



そんなやり取りをしていると、またシスターとアシュレイが俺を見ていた。



「慣れてらっしゃる感じがしますね……」


「え?あぁ、俺も孤児院で育ったからかな。」


「そうなんですね。」


「子供が元気で笑えるってのは、ここでの生活が良いって事だ。良かったぜ。」


「ありがとうございます。」


「アシュレイ、飯作るんだろ?俺も手伝うぜ?」


「え?!……いや……大丈夫だ……」


「子供達も待ってるから、早い方が良いだろ?俺、材料切るからさ。アシュレイは下準備してくれ。」


「あ……あぁ……」


「ここは大きな鍋とかあるから、アシュレイが持ってるでっかいヤツ、出さなくても大丈夫だな!」


「…………っ!」


「あ、そうだ、今日は何作るんだ?」


「その……魚介類があるから……トムトで味付けして……」


「あぁ!あれな!あれは旨かった!たしかあん時は……野菜のアッサリしたスープもあったから……今日もそうすんのか?」


「え……あぁ、そうするつもりだ……」


「子供達は基本的に野菜あんまり好きじゃねぇから、少し牛鴨の肉を入れてやっても良いな。じゃあ、材料切っていくな。」



アシュレイが出した野菜とか肉を素早く切っていく。

アシュレイは小麦粉を練って薄く伸ばして、細く切っていって茹でていた。

前にもこうやって、二人で飯を作ってた事を思い出して、つい胸が熱くなっちまう……


俺達が料理しているのを、子供達が興味津々に見にくる。

可愛いな……


アシュレイが茹で上がった麺をザルにあげる時、子供が面白がって手を出してきた。



「危ねぇっ!」



思わず左手で麺が入った鍋を鷲掴みにしてそれを止めた。



「あちっ!」 



熱湯が手にかかったけど、子供とアシュレイには何もなかった。

良かった!



「大丈夫か?!」


「あぁ……問題ねぇ……こら、ここは火を使ってて危ねぇから、向こう行って遊んでろ?もうすぐ出来るから。な?」


「はーい!」



腕をまくって、真っ赤になった手を氷魔法で冷やす。



「……っ!その腕輪……!」


「え?……あぁ。俺にも着いてんだ。これ、外そうと思っても外れねぇだろ?でも、俺の腕輪があれば外せんだぜ?まぁ、アシュレイの異能の力を思えば、外さない方が良いかもな。」


「…………手は大丈夫か?」


「あぁ、これ位はな。」


「私ならすぐに…」


「いい。あまり人前で回復魔法は使わねぇ方がいい。信用してるヤツの前でもだ。」


「………っ!」


「アシュレイは自分の事、どこまで覚えてんだ?」


「それは………」


「……まだ俺が信用できねぇか……ま、ゆっくりでも良いから、俺を分かっていってくれな?」


「…………」



料理が出来上がって、皆で楽しく飯を食った。


皆が美味しいって言ってて、皆が笑顔で、アシュレイも笑顔で……


もうそれを見てるだけでも、俺はすっげぇ満足だったんだ……








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