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慟哭の時  作者: レクフル
第6章

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腕の中へ


アシュリーを抱き締めたまま暫くそのままでいると、扉がノックされて、ゾランがやって来た。



「リドディルク様、アシュリーさんは……」


「ゾラン……お前は報告だけをすれば良い。」


「はいっ!申し訳ありません!まず、夢見の間の前で倒れていた者達ですが、ひとまず全員拘束しました。人形遣いウーログもです。」


「父上は……どうなった……?」


「以前見た時よりも、更に老いた感じがします……ご自分では動けない様で、上手く話す事も出来ない状態になっておられました。」


「そうか……」


「依頼を出したのは、ベルンバルト様でして……以前より、ランクを大幅に上げた冒険者やランクの高い冒険者を、依頼と称してオルギアン帝国まで来させていた様です。そうして能力の高い者を……アシュリーさんを探されておられたんでしょうね……」


「なぜそれが今まで分からなかった……っ!」


「情報が漏洩しないように、秘密裏に動いていた様です……依頼を出された者は記憶操作されている様でした。」


「やはり父上は……」


「依頼を出す様に言われた者はその事を忘れるので、辿って行くことが出来ませんでした。申し訳ありません……」


「分かった……」


「ベルンバルト様は自室で従者に見張らせております。拘束した者達は、未だ気を失ったままです。」


「今日は執務室には戻らん。カルレスにそう伝えておいてくれ。それから、エリアスにアシュリーを無事助け出した事を伝えて貰えるか?」


「畏まりました。それから浴場にあった、アシュリーさんの持ち物等は、後程持って来させます。」



ゾランが出て行った後、まだ震えるアシュリーをベッドに寝かす。



「アシュリー……まだ震えている……嫌な思いをいっぱいしたんだな……」


「ディル、ク……どこに、も……いか……な……で……」


「どこにも行かない……アシュリーの傍にいる……」


「ディル……こわ……い……」


「アシュリー……」



涙が止まらないアシュリーの恐怖の感情を取って行くと、少し安心したような、穏やかな顔になっていく。

腕輪が無くなったから、この能力がどう出るか気になったが、怖がるアシュリーをそのままに出来なくて、少しずつ様子を見ながら、いつものように恐怖の感情を取り除いた。

それは問題無く出来たが、俺の体調が悪くなることは無かった。


それから光魔法で身体中を浄化させていく。


しかしまだウーログの魔法が残っている状態だから、アシュリーは言葉も体も思い通りに出来ない様だ。


ノックがして、使用人がアシュリーの服と装備等を持ってきた。

アシュリーを怖がらせたくないので、その者を部屋には入れず、それを取りに行ってテーブルに置き、ベッドにいるアシュリーの元に戻ると、アシュリーが俺を掴んで離そうとしない。



「アシュリー?」


「ディルク……いや……行かな……で……」


「大丈夫だから……俺はどこにも行かないから……」



アシュリーを安心させる様に抱き締める……



「あの……ひと……は……?」


「……それは……」


「ディルク……じゃな…い…い、や……」


「アシュリー……」


「ディルクじゃ……なかった……ら……」



思わずアシュリーに口づけをした……


父上にあんな事をされて……怖い思いをしているアシュリーに……でも……アシュリーは俺を受け入れてくれたんだ……



アシュリーが俺を離さない



アシュリーは俺じゃないと嫌だと言った……



可愛くて 愛おしくて……



心が傷付いたばかりのアシュリーを目の前にして……



でも もう止められなかった……



全てを脱ぎさって



アシュリーと肌を合わせて



何度も口づけをして



アシュリーの全てに口づけをして



俺を抱き締めるアシュリーの中に



ゆっくりと入っていく



痛みに耐えるアシュリーに



優しく口づけをして



ゆっくりといたわるように



アシュリーと一つになっていく



アシュリーは俺にしがみつくように



俺を離さないように



涙を溢しながら



何度も俺の名前を呼んで



甘い吐息の中 小さく声が溢れ出て



アシュリーは俺の全てを受け入れてくれたんだ



ずっと一つになっていたくて



俺はアシュリーを抱き締めながら



何度も何度もアシュリーを求め続ける



それから暫くは



時が経つのを忘れて



ただお互いを求め合ったんだ……










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