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慟哭の時  作者: レクフル
第1章

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命の恩人


食事が終わり、お茶を皆で飲みながら、子供達の様々な話を聞く。


親から捨てられたり、目の前で親を殺されたり、売られた所から逃げ出してきたり、子供達の過去は暗いものばかりだったが、ここの子供達は食べる物に困ってはいるものの、皆元気で明るい。


これはシスターのお陰なんだろうな。


そのシスターが病に臥せっている。


皆の気分も沈みがちなんだろうが、それをレクスが払拭するように、皆を引っ張っていく。


皆の良き兄だな。レクスは。




マーニがシスターの部屋へお茶を持っていく。


少しして、トレーを下げてマーニが戻ってきた。



「またそんなに残して……」



一向に良くならないシスターを心配するが、それ以外は何も出来ない自分に苛立つ様に、レクスが呟いた。


何の病気かも分からない。


医者に診せるにはかなりの金額が必要で、明日の食事も儘ならない子供達が貯められる事は出来ない。


病気が分からないから、薬も何を買えば良いのか分からない。


とは言え、売られている薬は一通り試したのだが、それでもシスターは一向に良くならないのだ。


それどろか、日に日に悪くなっている。


シスターも、もう命が長くないと覚悟を決めていた。


不安そうな面持ちで、食事が片付けられるのを、子供達が見守る。




「レクス、もう一度シスターと話がしたい。

いいか?」


不意に言った私の言葉に、少しビックリするレクスだが、


「あぁ、もちろんかまわないぜ!

旅の話でもして、シスターを元気づけてやってくれよ!」


そう言って笑顔で送り出す。


私はシスターの部屋へ向かい、ドアをノックした。





「アシュレイです。入ってもいいですか?」


「どうぞ」


そう声が聞こえてから扉を開けて中に入った。


「あまり食事も喉が通らなかった様ですね。」


「せっかく持ってきて下さったのに、申し訳ありません。」


「いえ、それは問題ありません。……少しいいですか?」


「はい、何でしょう?」



そう言われてから、私はシスターのそばまで行き、シスターの胸辺りに右手をかざした。




淡く緑にうっすらと輝いた光が胸から広がっていき、シスターを包み込む。




その光は暖かく、浄化されていく様な感覚を全身が感じていく。




シスターが光っている自分の体を、驚いた表情で見る。




光が消えて行くと、頬と唇に赤みがさし、目のクマも無くなったシスターがそこにはいた。




自分の体の変化に驚きを隠せないシスターは、私を見て




「な、何ですか?!今のは!えっ!あ、あの、もしかして貴女は!」




そう言うシスターに、私は微笑みながら、唇に人差し指を立てた。




そうして部屋を出て行った。








シスターは信じられないモノでも見たかのような顔をして、暫くはその場から動けなかった。


今まで思うように動かなかった体が、とても軽くなっている。


胸の痛みや動悸がなくなり、息もしやすくなっている。


こんなに体調が良くなったのは何ヵ月ぶりか。

なんなら、病気になる前よりも元気になった気さえする。




シスターは考える。




アシュレイは、高度な回復魔法の使い手だ。


 


しかし、これは誰にも言わない様にしなくては。







いや、彼女は、私の命の恩人なのだから。












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