新しい剣
ナルーラの街に起こった爆発は、一体誰が何の為に起こしたのか……
それはまだ解明できてはいないだろうけれど、まずは被害にあった周辺の被害状況等を確認する必要がある。
けれど、爆発して建物等にも影響があった筈なのに、その場所は何も無かったように、いつも通りの風景があった。
怪我をした人達も、いつの間にかすっかり傷が治っていて、不思議な事が起こったと口々に話していた。
しかし、少なくても犠牲になった人もいる。
その事もあって、爆発は気のせいだったのでは?等と感じていた人達も、現実に引き戻される。
それに、兵達は覚えていた。
聖女が現れて、この街を救ってくれた事を。
しかし、聖女を捕らえた筈なのに、領主や、その屋敷の使用人や駐屯している兵達は、何の事か全く分かっていない様な反応だったし、領主はいきなり病に臥せった様に、部屋に引き込もって誰にも会わない様になったりして、どうなっているのか分からない、と不思議な話として広まっていた。
そんな話を、インタラス国の王都コブラルで聞く。
あれからエリアスと私は予備の服に着替えて、王都の防具店へ行き、まずは私の肩当てと胸当てを購入した。
私とエリアスの装備していた物は、全てナルーラの領主の屋敷にあり、すぐに取り返しに行く訳にも行かなかった。
エリアスは防具類に予備があったから問題なかった様だったけど、武器が無くなった、と悔しそうにしていた。
それから武器屋へ行って、エリアスが代わりの剣を物色する。
「どうした、エリアス。おめぇの剣、どこやったんだ?」
「あぁ、ちょっと盗まれちまってな。取り返しには行くつもりだけど、丸腰じゃいけねぇだろ?」
「おめぇの剣を盗むとか、どんなヤバい奴なんだ?!」
「あ、すまない……私が借りてた剣も、その、盗まれてしまったんだ……」
「なんだそりゃ!!二人揃って何やってんだ?!」
「ハハ……そうだな……情けねぇ……」
「まぁ、おめぇら二人がそうなったって事は、よっぽどの事があったんだろうが……エリアス、おめぇの剣の代わりなんて、そうそう無ぇぞ?」
「あぁ、分かってる……」
「そんなに手に入らない剣だったのか?」
「そうだぜ!ありゃ魔剣だからな。滅多にお目にかかれるモンじゃねぇぜ?」
「そうなんだな……」
「まぁ、盗んだとは言え、誰にでも使える代物でもねぇしな。売りに出そうにも、使い手が分かってるモンは、簡単には売り買いできねぇさ。当分は流れたりしねぇから安心して良いとは思うがな。」
「あぁ。そうだな……」
「で、アシュレイ。待たせたな、おめぇの剣、仕上がったぜ!」
「そうなのか?!」
「どんなのだ!?早く見せてくれ!」
「まぁ、落ち着けよ。試し切りもしてぇだろ?裏手に回って待っててくれ。」
言われた通り裏手に回ると、剣が振れるように
藁を束ねて立てた柱と、木の柱がいくつかあった。
武器屋の店主が剣を持って来て、それを私に手渡した。
手にしっかり馴染むような感覚で、長さも重さも、振るうのに自分に合っている様な感じがする。
「魔力を這わせてみてくれよ。」
店主に言われた通り、魔力を剣に這わせる。
まずは雷魔法を這わせてみた。
すると、少しの魔力で剣全てが電気を纏った様に、雷剣となった。
「凄い……っ!」
「なんだ?!形もすげぇ変わってんな!」
「その魔法に合った形に剣自体が変化する。前は魔法を這わせて、剣の表面の魔力が形を変えた感じだったと思うが、この剣は自在に適した形に変わる様に仕上げたぜ!」
「そんな事が出来るなんて……っ!凄いっ!」
次に火魔法を纏ってみると、剣は火を纏った炎の形になった。
それで切ってみると、木の柱は切った後、一瞬にして燃え盛り、炭になってポロリと落ちた。
「うわぁっ!うわぁーっ!凄い!エリアスっ!この剣凄いっ!!見て見て!凄いんだっ!」
エリアスを見ると、エリアスも嬉しそうに微笑んでいる。
その様子を見て、店主は何故か首を傾げる。
ひとしきり試して、新しい剣がこんな凄い剣だと言うことが嬉しくて、ニコニコして剣を鞘に入れてつい抱き締めてしまう。
「おやっさん、すげぇ頑張って作ってくれたんだな。流石、伝説の名匠と言われるだけある!ありがとな!」
「そりゃおめぇ、あんな技見せられたら、それに合う剣を作ってやりてぇって思うじゃねぇか!」
「ありがとう!嬉しいっ!大切にするっ!!」
「……アシュレイ、おめぇ……可愛いな……」
「おやっさん!何言ってんだよっ!」
「いや……何か……そう思ってな……エリアスの、アシュレイを見る目も……なんつぅか……いや、何でもねぇ。」
「そんな事より、これの代金は……?」
「もうエリアスから貰ってんぞ?」
「えっ!?エリアス、私も出すっ!この剣なら、きっと凄く高いと思うっ!」
「大丈夫だ。気にすんな。ありがとな、おやっさん。」
「え……でもっ!」
エリアスがまた私の頭をポンポンする。
「で、エリアス、おめぇの剣はどうする?」
「あぁ、これにするわ。」
立て掛けてあった剣を手にして、店主に見せる。
「そうだな……無難だな。あの魔剣の代わりにゃならんが、代用ならそれでも問題なく使えるな。まぁ、それも当分は貸しといてやる。取り返したら、返しに来いよ?」
「良いのか!助かるぜ!ありがとな!!」
「アシュレイの剣でかなり懐が寂しいだろ?」
「そうだっ!エリアスっ!」
「大丈夫だ、アシュレイ。気にすんな。」
「エリアスなら、すぐにまた稼げるさ!なぁ!」
「当然だ!」
「それより、エリアス。その首の傷痕、どうしたんだ?おめぇ、傷が出来たら、治っても当分は痛みが続くだろ?注意しねぇといけねぇぞ?」
「え……?」
「大丈夫だ。もう全然痛くねぇ!じゃあな!」
そう言って私の手を掴んで、足早にエリアスは店を出た。
「エリアスっ!傷が痛むってっ!治っても痛むって!」
「ったく……余計な事……」
「エリアスっ!」
「大丈夫だ。ちょっと疼くくれぇだ。心配すんな。」
「でも……」
「アシュレイ、気にすんなって。それより、装備してたの、取り返しに行かなきゃな。」
「それはそう……だけど……」
「どこにあるのか、場所が分かれば良いんだけどな。」
「うん……」
「んな顔すんなよ。あ、そうだ、スラムに差し入れ行かねぇか?またアシュレイに炊き出しして欲しいんだけど、良いか?」
「それは勿論!良いに決まってるじゃないか!」
「じゃあ行こうぜ!」
「うんっ!」
エリアスの気遣いが嬉しいけれど、私はきっとエリアスに甘え過ぎてる様に思う……
どうやって彼に返していけば良いんだろう?
そんな事を考えながら、私はスラムへと向かったんだ……




