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慟哭の時  作者: レクフル
第6章

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回復魔法の弊害


その時、俺はちょっと不機嫌だった。


もうそろそろ、俺の気持ちも伝わっているだろうと思っていたのに



「じゃあな、エリアス!遅く帰って来ても良いからっ!遅くなっても何も聞かないからっ!」



と来たもんだ……



俺があれだけあからさまな態度をとっているにも拘わらず、アシュレイには何も伝わっていなかった、と言う事なんだな……


って言うか……



なんでそんなに鈍感なんだよっ!!


普通分かるだろっ!


あれだけ態度に出して、なんだったら、添い遂げようって感じの事も言ったってのにっ!


それでも俺の気持ちが何にも伝わってなかったって事なのかっ!!



「ったく……どんだけ鈍感なんだよ……っ!」



つい言葉に出してしまった……


アシュレイも、少しは俺に心が動いてるのかも知れねぇって思っていたのに。


抱き寄せても文句言わねぇし、たまに抱きついてきてくれるし……


あんな事しちまったのに許してくれたし……



やべっ!!


思い出したら、顔が熱くなってきたっ!



あん時は俺もどうかしていた。


訳が分からなくなって、傍にいたアシュレイを抱き潰したくなって……


あれだけ今まで我慢して……


大切にしなきゃって思っていたアシュレイに、自暴自棄になっていたとは言え、あそこまでしちまうなんて……



でも……



アシュレイは……



すげぇ……綺麗だった



唇が……手が……



その感覚の全てを覚えている



あの時のアシュレイの全てが



愛しくて……忘れらんねぇ……




「エリアスさんっ!」



店の横の壁にもたれ掛かって、腕を組んでそんな事を考えていると、アンナがやって来た。



「え、あぁ、アンナ……」


「あ……私の事……アンナって呼んでくれるんですね……」


「あ、他になんか言った方が良かったか?」


「いえっ!それで良いですっ!」


「そっか。じゃあ行くか。」


「はい!」



そう言ってアンナは俺の腕に腕を絡ませて来た。


アンナを見ると、エヘヘって言って、恥ずかしそうに笑っていた。


可愛い……んだろうな……


こんな事をされて、嫌がる男はいねぇだろうけど……


なんか落ち着かねぇ……


そのままの状態で、アンナと街を歩いていく。


出店の食べ物を一緒に食べたり、くじ引きをしたり、売っている物を見たりして歩いていく。

それから、たまに会うアンナの友達とかに紹介されたりもする。


アンナはよく笑う子だった。


それに、人見知りだと言っていたが、よく色んな事を話す子だった。


俺はアンナの話を聞きながら、そうか、と相槌を打って、作った様に微笑んでいた。


段々人も多くなってきて、かなり混雑してきた。

アンナは俺に寄り添う様にくっついてきて、アンナの胸が俺の腕にあたる位になってきた。


そうなっても、俺は特に何にも感じなかった。


以前なら、ちょっとは嬉しく思ってた事かも知んねぇけど、恥ずかしそうに微笑むアンナを見ても、全く何の感情も湧かなかった。



「ったく……何が、「頑張って!」だよ……」


「え?何ですか?エリアスさん?」


「え?あ、いや、何でもねぇ。」


「エリアスさんって、冒険者なんですよね?ランクって、どうなんですか?」


「え?俺はAランクだけど……?」


「えぇっ!凄いっ!!そんな人がこの街にいるなんてっ!凄いですっ!!」


「いや……そんな凄いとかじゃ……」


「いえ、凄いです!そんな人と一緒にお祭りに来れてるなんて……夢みたいですっ!」


「ハハ……何言って……」



言ってるうちに遠くで、でっけぇ爆発音が鳴り響いた。



「きゃっ!!」


「なんだ?!」



続けて爆発音が鳴り響く。


そのうちの一つが、比較的に近くで鳴った。



「きゃあっっ!」



思わずアンナを庇うと、爆発して砕けた時計塔の欠片が飛んできて、俺の肩に当たった。



「っ()!!」


「エリアスさん!大丈夫ですか?!」


「……あぁ、大丈夫だ。アンナは無事か?」


「あ、はい、エリアスさんが守ってくれたので……」


「そっか。良かった。」


「ありがとうございます……」


「それにしても……なんだ?何が起こったんだ?」



周りは悲鳴や嘆く様な声が響き出す。


爆発した所から人が逃げ出す様に移動してきて、辺りは騒然としていた。



「アンナ、今日は帰った方が良い。俺はちょっと様子を見てくる。」


「え……でも……エリアスさん、肩が……」


「これくらい、なんて事はねぇ。一人で帰れるか?」


「あ、それは大丈夫です……」


「じゃあ、気をつけて帰れな。」



そう言ってアンナの頭に軽く手をやって、それから爆発音がした場所まで走って行った。


逃げて来る人達に逆らって行くから、なかなか思うように進めねぇ。


しかし、なんでこんな事になったんだ?!


誰の仕業だ?


何の為にこんな事をする?!


やっとの事で、爆発した現場までたどり着いたら、そこには血の跡が所々あるのにも拘わらず、皆無事だった。


それに、壊れたであろう時計塔も、元に戻っていた。


周りにいた人達も、何が起こったのか分からないと言った感じで、不思議そうな顔をしていた。



「アシュレイ……っ!」



これは……アシュレイがやったに違いねぇっ!


こんな人が多い所で、兵達もあちこちにいる中で回復魔法なんか使っちまったらっ……!



前にアシュレイから聞いた事がある。


回復魔法の使い手は、どこの国でも求められる力だから、見つかった時点で強制的に連れて行かれると。


その事に巻き込まれて、レクスが自分を庇って亡くなったと。


だからこの力を外部には漏らせない、と言っていた。


マルティノア教国の教皇も、アシュレイが回復魔法を使った途端、自分のモノにするとか言い出した。


それくらい、希少な力なんだ……


なのに……


これだけの犠牲者が出たのを見て、アシュレイはきっと我慢出来なかったんだ……



「ったく!いつも自分の事より、人の事を考え過ぎなんだよっ!!」



俺は他に爆発した場所まで走って、アシュレイの事を探した。


爆発した場所を巡ると、どこも飛び散った血の跡があるが、怪我をした筈が治ったと言った感じで、不思議そうにしている人達がいるだけだった。



「どこにいんだよっ?!」



走りながらアシュレイを探す。


すると、兵達の後ろ姿が見えた。


近くまで行くと、その中心にアシュレイがいた。



「アシュレイっ!」



俺の声に気づいたアシュレイが俺を探す。


その時、アシュレイの右手を兵が掴んだ。


やめろ!


アシュレイの右手に触るなっ!



「エリアス……っ!」



アシュレイが俺を呼んで、右手を伸ばす。


しかし、その手が何人もの兵達の手で遮られる。


そんなに多くの奴等で触んなっ!


アシュレイが倒れちまうっ!



「アシュレイっ!!」



フラフラしたアシュレイが、膝から崩れ落ちる。


それを兵達が抱える。



触るな!



俺のアシュレイに触んじゃねぇよっ!!



雷魔法で兵達を倒して行く。


急に倒れた兵達に驚いて、周りにいた兵達も走ってやって来る。


手当たり次第に雷魔法で倒していく。


心配すんな、おめぇらは気絶させてるだけだから。


アシュレイの元まで行って、倒れたアシュレイを抱き抱える。



「アシュレイっ!アシュレイっ!!なんでこんな無茶すんだよっ!」



そうした瞬間、後ろから頭を何かで殴られたのか、激痛が走って、俺はその場でアシュレイを抱き締めたまま、倒れてしまった……



アシュレイを気にするあまり、後ろへの注意を怠ってしまった……



これじゃあ冒険者……



失格だな……







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