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慟哭の時  作者: レクフル
第6章

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不測の事態


エリアスと別れて、足早に宿屋へ向かう。


思ったより人が多くなってきていた。


大通りの真ん中は、巫女の乗る山車と水龍が舞う場所を確保する為に空けられており、それもあって人が端へと追いやられて混雑してきていた。

こんなに人が多くなるんだとビックリした。


やっぱりエリアスが言う通り、予想以上に人が多くなるんだな……


路地に入って隠れる様にして、空間移動で宿屋の部屋に帰って来た。


ベッドに座り、横にある窓枠に腕を置いて、その上に顔を乗せる様にして、窓から外を眺める。



「やっぱり……お祭りに行きたかったな……」



つい本音がポロリと出てきてしまう……


でも、仕方ないんだ……


こんなに大勢の人達の中にいれば、どうやったって人に触れてしまう。

それも一人じゃなくて何人も。

そうしたら、必ず私は平常ではいられない。



せめて倒れさえしなければ……



母は……私には腕輪を着けなかった……


ディルクに着けたと言うことは、ディルクには厄介な能力があった、と言うことなんだろう……


エリアスの能力みたいに、着けてないと大変な事になる能力があったのかも知れない……



……いやいや、違う……



ディルクに腕輪を着けた人は母じゃない。


母と私は似てるってよく言われたから、きっと本当の親子で……


ディルクの弟を拐ったのは、違う人で……


私とディルクは……




うん、あまり考えないようにしよう。




今日は楽しいお祭りなんだし、遠くから見ているだけだとしても、それはそれで楽しめば良いんだ。


暫くそうやって祭りの様子を見ていると、何やらおかしな動きをした人がいることに気がついた。


皆が楽しんでいるその中で、祭りを楽しむ、と言った動きじゃない者が……3人……


五感を解放して、ここから確認できる範囲で3人いた。


何をしているんだろう……って思った瞬間




ドッガァァァァーーーーーーーンッッッッ!!



いきなり大きな爆発音が響いた!


それがあちこちから続けて4回。


爆発音の後すぐに聞こえてくる悲鳴。


窓から見ていると、爆発現場から急いで逃げていく人達と、爆発に巻き込まれて被害を負って倒れている人達の傍らにいる人達が確認できる。

辺りは騒然としていて、先程とはまるで異なった様相となっていた。



なんで……



今まで、皆お祭りを楽しんでいたのに……!



一体誰がこんな事を……っ!




しかしそれよりも、まずは怪我をした人達が気になった。


私は急いで外に出て、被害を受けた人達の状況を確認する。



あちこちに血が飛び散っていて……



血だらけの子供を抱えて泣き叫ぶ母親がいて



倒れた恋人の名前を呼び続ける男性がいて



倒れている人達があちこちにいて、辺りは悲惨な状態になっていた。



向こうから兵達が、救援に来ようと走って来る。


ここで私が回復魔法を使ったら……



「いやぁぁぁぁぁっっっ!!!」



泣き叫ぶ母親の嘆く声が響いた。


堪らずに私は広範囲で回復魔法を放った。


淡く緑の光が、辺りを覆う様に広がっていき、その光がゆっくりと消えて行くと、怪我をした人達はすっかり回復していた。



「なっ!!貴女はもしや……っ!」



言おうとしている兵を手で遮って、次の爆発した場所まで風魔法を這わせて足早に向かって行く。

そこでも即座に回復魔法を放つ。

次の爆発現場でも同じ様にして、全ての場所で回復魔法で怪我をした人達を治癒させていった。

それでも間に合わずに、息絶えてしまった人達も何人かいた……



私がもっと早くに向かっていれば……



魔法を使う事を躊躇わずにいれば……



そんな思いが胸を締め付ける……



ふと気づくと、私は兵達に囲まれていた。




「……え……」


「貴女は……聖女なんですね……怪我人を助けて下さった事には感謝致します……しかしっ!このまま貴女を見逃す訳にはいかないんですっ!」


「……っ!」



四方八方からにじり寄ってくる兵達……


こうなっては仕方ない、と思い、空間移動でこの場を逃れようと思った時



「アシュレイっ!!」



エリアスが私を呼ぶ声が聞こえた。


思わずエリアスの姿を探してしまう。


その時、兵に右手を掴まれた。


頭の中に手を掴んだ者の情報が入って来る……



「エリアスっ……!」



エリアスを求めて伸ばした右手を、また他の兵達に掴まれる……



次々に大量に入って来る情報に頭が追い付く事ができなくて



左手を触った者の悲鳴が段々遠くに聞こえる様になっていって



「……エリ…ア……ス……」



薄れていく意識の中でエリアスが、アシュレイって叫びながら、私の元へと走って来るのがボンヤリ見えて



それから私の意識は遠退いていった……








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