人間として
コンコン
ドアがノックされる。
ドアが勢いよく開いてレクスが入ってきた。
「シスター、ご飯だぞ!」
「レクス!何度も言ってるいのに……!」
「やべ!またやっちまった!ごめんよ!シスター!」
そう言ってバツの悪そうな面持ちで、シスターに持ってきた食事のトレーを、ベッド脇の小さな棚の上に置く。
「アッシュ、あっちで一緒に食べようぜ!」
言いながらレクスは小走りで行った。
申し訳なさそうに会釈をするシスターに、私も同じ様に会釈を返し、レクスの後を追う。
食卓には買ってきた食料の他に、野菜のスープも置かれていた。
今日の夜ご飯として、子供達が用意していた物だった。
レクスの横に座るように案内されると、皆でお祈りをする。
「いただきます!」
そう言って、皆でワイワイ喋りながら食べる。
「この串焼き、うっめぇー!」
「この香草煮も美味しいよ!」
「パンと一緒に食べれるのが最高だな!」
本当に楽しそうに美味しそうに、皆笑顔で食事をとっている。
「この野菜のスープも美味しいよ。」
私が言うと、マーニは嬉しそうに私の顔を見て、顔を赤らめながら
「良かったぁ!」
と安堵の表情を浮かべた。
皆で食事をすると、美味しく感じる。
これは本当の事だったんだな。
こんな大人数での食事が始めてだった私は、今まで感じた事の無いような感情が、胸に暖かく広がっていく。
始めてのこの感覚に、まだ自分が人間であることを分からせて貰った気がする。
色んな能力を使える様にもなって、自分が人間ではない者の様に感じていた私は、段々と感情が薄れていってる様にも感じられたのだ。
いつまでもこの感情を噛み締めていたい。
しかし、そんな事は私にはきっと許されないのだろう。
分かっている。
分かってはいるんだ。
でも今だけは
この胸に広がる暖かな気持ちに身を委ねるとしよう。




