同一人物
エリアスと二人、次の街へ行く為に歩き出す。
街道に沿って歩くと北側にあった山は、段々遠ざかっていった。
「アシュレイ……」
「ん?何?エリアス?」
エリアスの目線を辿ると、私はエリアスの肘を掴んでいる。
昨日から、気付くとずっとエリアスの肘を掴んでいた。
「ごめん……」
「謝らなくていいって。」
言いながら、エリアスは私の手を握ってきた。
それから暫くは、手を繋いだまま歩いていた。
「俺の力って……」
「え?」
「いや、昨日言ってたろ?俺が左手で触ると光を奪って、右手で触ると人を操るって……」
「あ、……うん。そう言ってたけど……」
「けど、俺には今そんな力はねぇ。俺が小っちぇえ頃から、んな事一度もなかった。」
「じゃあ、やっぱり人違いじゃないかな?エリアスは誰にでも触れるし……」
「けどよ、特徴として、銀髪の血を引く者の力っぽくねぇか?アシュレイの力を思うとよ?」
「……そうかな……」
「もしかしたら……」
エリアスが左手首にある腕輪を見せて
「これのお陰かな、とか思ったんだけど……」
「その腕輪の……?」
「精霊と契約できるって言ってたけど、本当にそれだけなのかって思ってよ。俺に異常な力があったのを、誰かが気の毒に思って着けてくれた……とか?」
「……誰が……?」
「いや、知んねぇけど……でも、これ以外考えられねぇからな。」
「……でももしそうなら……この腕輪は外しちゃダメだな……」
「そうだな。触った奴の光を奪うって、やべぇだろ……それに、人を操るって……どうにでも出来ちまうじゃねぇか……」
「本当だ……うっかり人にも触れない……」
「……アシュレイと同じ様に……誰にも触れ無い様に、気にして生きていかなきゃいけなかったのかもな……」
「それは……」
「あ、その……悪い……」
「ううん……そう考えると、私の力は……まだマシな方なのかな……」
「それでも、自分を忘れられて行くってのは……マシな事とは思えねぇけどな……」
「……ディルクにも……腕輪が着いていた……」
「あぁ、そうだったな……アイツも、力を抑えられてんのかも知んねぇな……」
「でも……もしそうだとしたら、ディルクの弟を拐った人が、エリアスにも腕輪をしたんじゃないかな……?」
「そうかも知んねぇな……そうなると拐った人は……本当に悪い奴なのかな……」
「え……?」
「いや、これが力を抑える腕輪ならよ、異常な力で大変な思いをするのを哀れんで、俺に着けてくれたと考えられるだろ?ディルクって奴にも、同じ様に思って着けたんじゃねぇかな?」
「じゃあ、……ディルクの弟を拐ったのも、何か意味があったのかも知れないな……」
「俺が母親を焼き殺した時……」
「エリアス……っ!」
「いや、卑下してる訳じゃねぇ……宿屋に泊まってた赤ん坊と別れるのが嫌でって……言ってたな……」
「……確かに……そう言ってた……その時の親がもしかしたら……ディルクの弟を拐った人だったのかも知れない……」
「何だ……これ?!何か変な繋がりを感じるな……」
「何か……気になってきた……」
「まぁ……そうだけどよ……」
「あ、あの、ちょっと聞いて来ていいかな?!その、エリアスに腕輪を着けたかも知れない人の事、もしかしたら覚えているかも知れないし……」
「俺はあの村には……入れねぇ……」
「そうだけど……私が一人で聞いて来る!だから、待ってて!」
「……待つのは構わねぇけど……」
「野宿してた場所まで戻るから、そこで待ってて!絶対にどこにも行かないで!」
「だからどこにも行かねぇって。」
私は空間移動で、朝までいた場所まで戻って来た。
「だから行動が早えぇって!いきなり空間移動はビックリするだろ!」
「じゃあ行って来るから、待ってて!絶対にずっとここで待ってて!」
「分かったから!ここで待ってるから!」
それからすぐに、村の入り口まで空間移動でやって来た。
すぐに昨日の宿屋まで行って、受付にいる、エリアスの父親であろう人に聞く事にする。
「アンタ!昨日の!大丈夫なのか?!」
「大丈夫だ。それより聞きたい事がある。」
「何だ?!エリアスに操られてるんじゃないのか?!」
「操られてなんかない!……エリアスの力は、今は抑えられている。誰にも危害は及ばない。」
「そうなのか?!本当なのか?!」
「それを解明する為にも聞きたいんだ。エリアスの母親が……亡くなった時……」
「……っ!」
「辛い事を思い出すかも知れないけど、覚えているなら教えて欲しい……宿屋に泊まってた赤子と別れるのが嫌で……って聞いたんだけど、その親子は、どんな人だったのか……それから、エリアスに腕輪は着いていたのか……」
「腕輪……?そんな物は知らん。宿屋に泊まった赤子の親は……エリアスの母親のラビエラと同じ、銀の髪をした人だった……女の子を連れていて……」
「え?……男の子じゃないのか?!」
「……いや、女の子だった。名前は忘れたが……そう言えば……アンタに似ていた様な気がするな……その人は……」
「え……?」
「あの日の事は、忘れたくても忘れられん……エリアスは、その赤子の女の子が気に入って……ずっと一緒にいてて……あ、そうだ、思い出した……女の子の名前は、アシュリーと言ったな。」
「……え……?」
「ラビエラも……その子を気に入って……次子供が生まれて女の子だったら、名前をアシュリーにしようって言ってて……」
そう言って、シモンが思い出した様に涙を流す……
「ラビエラが……燃えてしまって……俺は気が動転してエリアスを殺そうとして首を絞めてっ……!でもその女に止められてっ!その女がエリアスを連れ去った……っ!」
「……っ!」
シモンは咽び泣いていた……
私はそっと、その場を後にした……
私に似た、銀髪の親子……
子供の名前がアシュリー……
それは……
私と母の事じゃないか……
どう言う事なんだ……
ダメだ、頭が回らない……
私は歩いて村を出て、エリアスが待つ場所まで帰って来た。
「アシュレイ、遅かったな。何か分かったか?」
「……エリアス……」
「ん?どうした?」
「……何か……よく分からないんだ……」
「え?何がだ?」
「あの日の親子は……銀髪の母親で……」
「やっぱりそうだったのか!」
「連れていた子は……女の子で……」
「え?男じゃなかったのか?」
「……その子の名前が……アシュリーって……」
「……え……?」
「これって……どう言う事なんだろ……?」
「……あ、うん、ちょっと落ち着いて考えよう……」
エリアスが私の手を掴んで、自分の横に座らせる。
何だろう……全然上手く考えられない……
どう言う事なんだろう……
意味が分からない……
私はしばらく
考えるのを止めた……




