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慟哭の時  作者: レクフル
第6章

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同一人物


エリアスと二人、次の街へ行く為に歩き出す。


街道に沿って歩くと北側にあった山は、段々遠ざかっていった。



「アシュレイ……」


「ん?何?エリアス?」



エリアスの目線を辿ると、私はエリアスの肘を掴んでいる。

昨日から、気付くとずっとエリアスの肘を掴んでいた。



「ごめん……」


「謝らなくていいって。」



言いながら、エリアスは私の手を握ってきた。


それから暫くは、手を繋いだまま歩いていた。



「俺の力って……」


「え?」


「いや、昨日言ってたろ?俺が左手で触ると光を奪って、右手で触ると人を操るって……」


「あ、……うん。そう言ってたけど……」


「けど、俺には今そんな力はねぇ。俺が小っちぇえ頃から、んな事一度もなかった。」


「じゃあ、やっぱり人違いじゃないかな?エリアスは誰にでも触れるし……」


「けどよ、特徴として、銀髪の血を引く者の力っぽくねぇか?アシュレイの力を思うとよ?」


「……そうかな……」


「もしかしたら……」



エリアスが左手首にある腕輪を見せて



「これのお陰かな、とか思ったんだけど……」


「その腕輪の……?」


「精霊と契約できるって言ってたけど、本当にそれだけなのかって思ってよ。俺に異常な力があったのを、誰かが気の毒に思って着けてくれた……とか?」


「……誰が……?」


「いや、知んねぇけど……でも、これ以外考えられねぇからな。」


「……でももしそうなら……この腕輪は外しちゃダメだな……」


「そうだな。触った奴の光を奪うって、やべぇだろ……それに、人を操るって……どうにでも出来ちまうじゃねぇか……」


「本当だ……うっかり人にも触れない……」


「……アシュレイと同じ様に……誰にも触れ無い様に、気にして生きていかなきゃいけなかったのかもな……」


「それは……」


「あ、その……悪い……」


「ううん……そう考えると、私の力は……まだマシな方なのかな……」


「それでも、自分を忘れられて行くってのは……マシな事とは思えねぇけどな……」


「……ディルクにも……腕輪が着いていた……」


「あぁ、そうだったな……アイツも、力を抑えられてんのかも知んねぇな……」


「でも……もしそうだとしたら、ディルクの弟を拐った人が、エリアスにも腕輪をしたんじゃないかな……?」


「そうかも知んねぇな……そうなると拐った人は……本当に悪い奴なのかな……」


「え……?」


「いや、これが力を抑える腕輪ならよ、異常な力で大変な思いをするのを哀れんで、俺に着けてくれたと考えられるだろ?ディルクって奴にも、同じ様に思って着けたんじゃねぇかな?」


「じゃあ、……ディルクの弟を拐ったのも、何か意味があったのかも知れないな……」


「俺が母親を焼き殺した時……」


「エリアス……っ!」


「いや、卑下してる訳じゃねぇ……宿屋に泊まってた赤ん坊と別れるのが嫌でって……言ってたな……」


「……確かに……そう言ってた……その時の親がもしかしたら……ディルクの弟を拐った人だったのかも知れない……」


「何だ……これ?!何か変な繋がりを感じるな……」


「何か……気になってきた……」


「まぁ……そうだけどよ……」


「あ、あの、ちょっと聞いて来ていいかな?!その、エリアスに腕輪を着けたかも知れない人の事、もしかしたら覚えているかも知れないし……」


「俺はあの村には……入れねぇ……」


「そうだけど……私が一人で聞いて来る!だから、待ってて!」


「……待つのは構わねぇけど……」


「野宿してた場所まで戻るから、そこで待ってて!絶対にどこにも行かないで!」


「だからどこにも行かねぇって。」



私は空間移動で、朝までいた場所まで戻って来た。



「だから行動が早えぇって!いきなり空間移動はビックリするだろ!」


「じゃあ行って来るから、待ってて!絶対にずっとここで待ってて!」


「分かったから!ここで待ってるから!」



それからすぐに、村の入り口まで空間移動でやって来た。


すぐに昨日の宿屋まで行って、受付にいる、エリアスの父親であろう人に聞く事にする。



「アンタ!昨日の!大丈夫なのか?!」


「大丈夫だ。それより聞きたい事がある。」


「何だ?!エリアスに操られてるんじゃないのか?!」


「操られてなんかない!……エリアスの力は、今は抑えられている。誰にも危害は及ばない。」


「そうなのか?!本当なのか?!」


「それを解明する為にも聞きたいんだ。エリアスの母親が……亡くなった時……」


「……っ!」


「辛い事を思い出すかも知れないけど、覚えているなら教えて欲しい……宿屋に泊まってた赤子と別れるのが嫌で……って聞いたんだけど、その親子は、どんな人だったのか……それから、エリアスに腕輪は着いていたのか……」


「腕輪……?そんな物は知らん。宿屋に泊まった赤子の親は……エリアスの母親のラビエラと同じ、銀の髪をした人だった……女の子を連れていて……」


「え?……男の子じゃないのか?!」


「……いや、女の子だった。名前は忘れたが……そう言えば……アンタに似ていた様な気がするな……その人は……」


「え……?」


「あの日の事は、忘れたくても忘れられん……エリアスは、その赤子の女の子が気に入って……ずっと一緒にいてて……あ、そうだ、思い出した……女の子の名前は、アシュリーと言ったな。」


「……え……?」


「ラビエラも……その子を気に入って……次子供が生まれて女の子だったら、名前をアシュリーにしようって言ってて……」


そう言って、シモンが思い出した様に涙を流す……


「ラビエラが……燃えてしまって……俺は気が動転してエリアスを殺そうとして首を絞めてっ……!でもその女に止められてっ!その女がエリアスを連れ去った……っ!」


「……っ!」



シモンは咽び泣いていた……



私はそっと、その場を後にした……



私に似た、銀髪の親子……



子供の名前がアシュリー……



それは……



私と母の事じゃないか……



どう言う事なんだ……



ダメだ、頭が回らない……




私は歩いて村を出て、エリアスが待つ場所まで帰って来た。



「アシュレイ、遅かったな。何か分かったか?」


「……エリアス……」


「ん?どうした?」


「……何か……よく分からないんだ……」


「え?何がだ?」


「あの日の親子は……銀髪の母親で……」


「やっぱりそうだったのか!」


「連れていた子は……女の子で……」


「え?男じゃなかったのか?」


「……その子の名前が……アシュリーって……」


「……え……?」


「これって……どう言う事なんだろ……?」


「……あ、うん、ちょっと落ち着いて考えよう……」



エリアスが私の手を掴んで、自分の横に座らせる。



何だろう……全然上手く考えられない……



どう言う事なんだろう……



意味が分からない……



私はしばらく



考えるのを止めた……








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