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慟哭の時  作者: レクフル
第6章

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旅の前に


指名依頼の話を受ける事にして、私はオルギアン帝国へ向かう。


とは言っても、王都コブラルからオルギアン帝国までは、馬車でも15日程かかり、歩くとなると更に日はかかる。


この事から、依頼は急ぐ必要のない事だと容易に分かる。


オルギアン帝国には行った事があるので、空間移動が出来るのだが、この能力はあまり知られたくは無かったので、早く着き過ぎると怪しまれるのも面倒だと言うことで、空間移動も使いながら旅をして行こうとエリアスと話し合った。


作って貰う事になった剣はいつ頃出来上がるのかを確認しに行くのに、武器屋に向かっているところで、思わず考えてしまう。


エリアスは私の旅に、何も言わずに付き合ってくれているけど、本当にこれで良いのだろうか……?


エリアスにはエリアスの、やりたい事があるんじゃないのか……


スラムにいた子達に食事の世話をするのも、私と旅をしてからは出来なくなっていた。


エリアスがレクスを説得して天に還したから、責任を感じて私を一人に出来なくなって、それで仕方なく旅に付き合っているだけなんじゃないか……


初めはエリアスとの旅に納得していなかったけれど、今は一緒にいるのが当然の様になってきている……


エリアスは、私が必要としなくなるまでそばにいるって言ってくれていたけど、その言葉に甘えていて良いんだろうか……?



「……アシュレイ?」


「え?あ、何?」


「どうした?何か考え事か?何度か呼んだんだぞ?」


「あ、うん……」


「……アイツのことを考えてたのか?」


「えっ?いや、そんなんじゃない……」


「そうか?あんまり一人で悩むなよ?気になった事は、何でも俺に言えな?」


「うん……」


「……アシュレイ……」


「……あ、うん、何?」


「不安な事とかあるんだろ?」


「え?なんで?」


「俺の肘、掴んでるから……」


「あ……」



すぐに手を離そうとしたけど、エリアスがその手を掴む。



「離さなくていい。アシュレイの不安が無くなるまで、そのままで良いから。」


「……エリアスはいつも私に優しい……私はそれに甘えていて良いんだろうか……」


「じゃあアシュレイは他に、誰に甘えんだよ?母親と別れてからずっと一人で旅をしてて、誰にも関わらずに生きてきて、辛れぇ時とか頼りたい時とか、一人じゃどうしようもなかった時とかあっても、今まで誰もアシュレイを支えてやれなかったんだろ?」


「エリアス……」


「俺が今はアシュレイのそばにいるんだ。甘えたり頼ったりするのがダメな訳ねぇだろ?その為に一緒にいる様なもんなんだ。俺に遠慮すんな。」


「……うん……ありがとう……なんか……こう言う事に慣れちゃいけない気がして……エリアスのしたい事の邪魔をしている様な気がして……」


「もしかして、俺の事を気にしてたのか?」


「……うん……」



エリアスが口を覆って顔を反らす。



「え、どうした?」


「いや……ちょっと……嬉しかった……」


「でも、やっぱりそれは気にする……私はエリアスがしたい事の邪魔はしたくないし、私も……エリアスにはいつも笑っていて欲しいと思うし……」



エリアスが顔を覆ったまま下を向く。



「やべ……たまんねぇ……」


「私の行くところに付き合って、またエリアスに嫌な事とかあったら……」



言い終わる前にエリアスが私を抱き寄せた。



「可愛い事ばっか言ってんじゃねぇよ……俺がアシュレイのそばにいたくて一緒についてってんだろ?俺の事ばっか気にしてんじゃねぇよ……」


「……エリアス、あの、ちょっと、エリアス!」


「……どうした?」


「あのっ!人が見てるっ!」


「あ……」



気づけば、道行く人達が私達をジロジロ見ていた。


慌ててその場を後にする。



「なんか……ごめん。」


「いや、俺が悪かった。考えなく抱きついたらダメだな……でも嬉しくなって、つい……」


「旅に出ても、たまにはここに帰ってきて、スラムの子達に差し入れしよう?そしたら、エリアスの不安もちょっとはなくなるかな?私もあの子達に会いたいし。」


「俺は不安とかじゃねぇけど……うん、ありがとな……」


「だって、二人で旅をするって、そう言う事

だろ?お互い納得して行きたいって思うじゃないか!」


「あぁ……そうだな、アシュレイ。」



エリアスが私に微笑む。


私もエリアスに微笑んだ。


良かった。

これで一つ、エリアスの不安が無くなったかな。


そんな話をしていると、武器屋に着いた。


武器屋の店主に、いつ頃剣は出来上がるのか聞いたら、まだ構想を練っているところだから分からないけど、暫く日が欲しいと言われた。


代わりになる武器を貸して貰って、武器屋を後にした。


また時々王都に帰ってくるから、その時にでも武器屋に寄って確認する事にしよう。


いつでも帰って来られる様に、宿の一室を借りっぱなしにしておく事にした。

これで空間移動で帰って来ても、誰にも見られずに済んで、安心できる。


その後、足らなくなった物や、食材等を購入した。


オルギアン帝国には、明日出発する。


でも、空間移動でいつでも帰って来れるだろうから、皆に別れを言う必要もないだろう。


今度は楽しい旅になれば良いんだけど……










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