Cランク冒険者
私の周りに人が集まり出した。
口々に、すげぇな、流石エリアスが見込んだだけはある、一緒に飲もう!等、さっきとは全く違う言葉が浴びせられる。
それに怯んでいると、エリアスが前に立ちはだかった。
「おめぇら、調子良すぎだろ!勝手にアシュレイに近寄んな!」
そう言って周りを牽制して、私を守る様にしてくれている。
アルベルトが手を叩きながらやって来た。
「流石だ。剣を使った戦いを見せる様にしたんだろ?本当の実力はまだ見せていないんじゃないか?」
「ったりめぇだ!魔法を使ったら一発で終了だぜ?俺がアシュレイに惚れ込んだのも、これで分かったろ?」
「あぁ、文句なくCランク合格だ。なんなら、すぐにでもBランクやAランクにも届きそうだな。」
「続けてランクアップ受けれると思うけど、アシュレイはどうするよ?」
「いや、もうこれで良い……」
「まぁ、あんまり目立ちたくねぇって言ってたしな。」
「凄かったな!フェルドに勝てる奴なんて中々いねぇよ!色々言って悪かった。今日は俺たちに奢らせてくれよ!」
「調子良すぎだろ!まだ時間早ぇしな。今日の夜にでもギルドの酒場で宴会でもすっか?!勿論、全部お前ら持ちだからな!」
「分かってるって!」
それから受付に行って、Cランクになった新しいギルドカードを発行して貰った。
これで素材を買い取って貰う時に、Gランクなのに……と不審がられる事も無くなるかな……
武器屋の店主が、興奮冷めやらぬ感じで私の側までやって来た。
「いやぁ、凄かった!剣捌きもそうだが、魔力を剣に這わせるのも、瞬時にどの系統を這わせるかを見極めて、それもあっという間に付与させれるし、しかもその精度が凄く高い!そりゃあ、今まで鉄の剣を使ってても問題無かったろうな!いやぁ、驚いた!」
「模擬戦は参考になったか?」
「当然だ!良いもん見せて貰ったぜ!」
「じゃあおやっさん、アシュレイの剣を頼むぜ!金はいくらかかっても構わねぇ!」
「お?!太っ腹だなぁ!分かった!任せてくれ!」
「エリアス!自分で払える分で作って貰うから……!」
「気にすんな、俺がそうしたいんだよ。滅多に強ぇ敵に合う事は無ぇかも知れねぇけど、いざと言う時の為に必要だろ?昨日みてぇな事もあるし、良い武器持つと安心するしな!」
「でも……」
「エリアスがここまで言ってんだ!その言葉に甘えてやれ!」
「おやっさんは思う存分作れんのが嬉しいんだろ?!」
「ワハハハっ!バレたか!」
エリアスに押し切られ、金額は関係なく作って貰うことになった。
それから、買い取りカウンターで旅で得た素材を買い取って貰うと、結構な高額になった。
マルティノアの領地内にいた時の、Aランクの魔物がかなり希少だったようだ。
それから、いつでも旅に出られる様に、食料の買い出しをした。
夜になるまで時間があるから、久しぶりにゆっくりしようってエリアスが言うので、コブラルの街を案内して貰う事にした。
屋台で美味しそうな串焼きを見つけて、エリアスと二人で食べたり、寸劇が繰り広げられているのを見たり、露店で売られているアクセサリー等を見て楽しんだ。
こんなに街中を楽しんだ久しぶりで、凄く充実したんだ。
夜になったのでギルドに行くと、酒場には凄く多くの人がいた。
さっきはいなかった人達も、ランクアップの話を聞いたのか、私達の姿を見ると、拍手をして出迎えてくれた。
自分にこんな事をして貰うのが初めてだったので戸惑っていると、エリアスが私の手を握って、皆のいる所まで連れていってくれた。
真ん中にあるテーブルが空いてあって、そこに座るように促されるので、エリアスと二人で席につくと、口々に、Cランクおめでとう!、凄かったな!流石だな!等と声をかけられる。
皆で乾杯をして、宴会が始まった。
こんなに大勢に取り囲まれて、私が不安そうにしているのを見たエリアスが、すぐに隣までやって来て、私をガードするようにしてくれた。
エリアスの心遣いが凄く有難い……
それから、皆がエリアスの武勇伝を聞かせてくれたり、今までの女性遍歴を教えてくれたりしていた。
それをエリアスは言わせない様に止めようとしたが、あちこちから口を出されて、止めようが無かったようだ。
私は終始笑顔で、エリアスの話を楽しく聞いていた。
話は次第に、この国や周りの国の情勢の事になっていく。
インタラス国は今は独立しているが、いつオルギアン帝国の属国になるか分からない、等と言った事が話され出した。
ここ最近、この話題が頻繁に出てくるそうだ。
それは、オルギアン帝国で新たな皇帝が誕生したと言う事からだった。
今のインタラス国は、私にはとても住みやすい国だと思う。
勿論、何の問題もない訳ではないが、周辺国に比べると、比較的自由だ。
オルギアン帝国の属国に等なってしまえば、この住みやすい国がどうなってしまうのか、ここに住む人達は、それは不安に思うだろう。
そんな話しをしつつ、今度は私の話しを聞かせろ等と言って来た。
しかし、私には楽しく話せる事等なかったので困っていると、エリアスがフォローする様に自分の話しをし出す。
ひとしきり飲んで話しを聞いて、楽しく宴会は終わって行った。
今日は凄く楽しかった。
このインタラス国の自由さが、このまま変わらない事を、私は心から願うしか無かった。




