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慟哭の時  作者: レクフル
第5章

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残余


エルニカ街の近くの森で、今夜は野宿をすることにした。


私達は何だか2人して、エルニカの街に入る事が出来なかったんだ……


それでも今夜はその近くにいたくて、ここで野宿することにしたんだ。


焚き火をエリアスと囲みながら、ただ寄り添うようにして火を見詰めていた……


何かを考えていた訳でもないのに、気がつくと涙が溢れだしていた。



「アシュレイ……」



エリアスが私の肩を引き寄せる。



「ごめ……エリアス……」


「今回の事は……アシュレイのせいじゃねぇ。俺がアシュレイを巻き込んじまったんだ…悪かった……。」


「違う……エリアスは……悪くない……」


「そうだ……俺達は悪くない……この国が悪かったんだ……でも、アシュレイのお陰で、この先酷い扱いを受ける奴がいなくなるんだ……アシュレイはこの国を救ったんだ。」



私は首を左右に振る。



「ごめんな?アシュレイを傷付ける事になっちまって……」



エリアスの言葉に、また言葉が出なくて、首を左右に振ることしかできない……


こんなこと……エリアスを困らせるだけなのに……


エリアスも傷付いてる筈なのに……



「俺……アイツみたいに心の傷とか取ってやれねぇから……すまねぇ……俺、アシュレイに何にもしてやれねぇ……」


「……ううん……こうして、同じ気持ちでいてくれるだけで……それだけで良い……」


「アシュレイ……」


「……助けられなかった……」


「……助けてあげたかったな……」


「私……まだまだだな……」


「俺もまだまだだ……」


「もっと頑張らないといけないな……」


「俺もAランクだって意気がってたらいけねぇな……」


「エリアスが私を庇って……胸に矢が刺さった……」


「すぐにアシュレイが回復させてくれたけどな。」


「でも、痛かった筈っ……エリアスに矢が刺さったのを見たとき……凄く怖かった……レクスみたいになってしまうんじゃないかって……っ!」


「俺はならねぇよ。アシュレイを一人置いて何処にも行かねぇ……アシュレイが俺を必要としなくなるまで、俺はずっとそばにいる。約束する。」


「…エリアス……」


「アシュレイの剣、折れちまったな…明日にでも買いに行くか?」


「折れた剣は水に飲まれて教徒と地中に埋まったから……エリアス、見繕ってくれる?」


「あぁ、勿論だ。」


「……ヴェパルって……凄い精霊だった……」


「そうなんだ……アイツ呼ぶと楽勝なんだけど、いつもやり過ぎんだよ……滅多な事じゃ呼べねぇんだ。無駄に死人が増えたし、地中に教徒の奴ら埋めちまったし……」


「あれにはビックリした……」


「アシュレイは、できれば改心させたかったんだろ?すまなかったな……」


「ううん……あの時は仕方ない……そんな事を戦っている時に一瞬考えてしまったから、エリアスが邪神のオーラに……」


「それを助けてくれたのはアシュレイだろ?闇の精霊……テネブレだっけか?アシュレイと重なって、すげぇ事になってたな。」


「テネブレとは初めて重なったけど……まさかあんな風になるなんて……」


「アシュレイの容貌が変わっちまってた……すげぇ……色っぽかった……」


「え?」


「あ、いや、あ、すげぇ強かったっ!」


「そんなに変わってた……?」


「あぁ。一瞬アシュレイとは思えねぇ感じだった。」


「ルキスと重なる時とは全然違ったんだ……ルキスの時は、力を借りてるって感じだったんだけど、テネブレと重なった時は、自分の中にテネブレが入ってきて、それが凄く気持ちよくて……一つになったって感じだったかな……」


「……なんか……やらしいな……」


「ん?なに?」


「何でもねぇっ!」


「あの感覚……」


「ん?どうした?」


「ううん、何でもない……」


「白の石、女神様と一緒に封印されてたんだな。」


「封印を解いた時に、石があるのが解ったんだ。」


「それだけでも、この国にきた意味があったな。」


「そう……だけど……」


「お互い、もうあんまり気にしないでいようぜ?次は上手くやれる様に、また頑張るしかねぇよ。」


「うん……エリアス……」


「白い石も手に入れて、後は黒い石だっけか?それを見つけたら良いんだな?」


「……うん……」


「まぁ、また探しゃあいいか。少しゆっくりするのも良いしな。」


「……うん……」


「それにしても、白の石の効果ってどんなんだろうな?またアシュレイは強くなんだろうな。俺も負けねぇ様に、もっと強くなんねぇとな。」


「……」


「……アシュレイ…?」


「……」


「寝ちまったのかよ……ったく、可愛い顔して寝てんじゃねぇよ……無防備にも程があんだろ?こんなんじゃ、俺に襲われても文句言えねぇぞ?……俺がどんだけアシュレイを好きか分かってねぇだろ……?」




エリアスの声が遠くに聞こえる様な感じで心地よくて……


エリアスの体温を感じながら、何処かに運ばれてる様で……心地よく体が揺れている感じがして……



私は安心した様に眠りに落ちていった……






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