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慟哭の時  作者: レクフル
第5章

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迷い


聖女……ラリサ王妃の話を聞いて……


俺は暫くその場から動けなかった……


自分の左手首にある腕輪の効果が、能力制御だったとは……


しかし、これがなければ、俺はもしかすると、何人もの命を奪っていたのかも知れないんだ。



「アシュリーは……」


「はい?」


「アシュリーにはどんな能力が……?」


「あの子には……右手で触れると、触れた者の過去や未来が分かります。左手で触れると、触れた者にあったアシュリーの記憶が全て無くなります。」


「だから……」



だからアシュリーは、私に触れてはいけないと言っていたのか……


今まで誰にも触れる事が出来ずに、どんなに淋しい思いをしていたのか……

そして、どんなに仲良くなれたとしても、触れた途端に忘れられて行く……


アシュリーを想うと、胸が締め付けられる様に苦しくなる……


「私を忘れないで……」


幼いアシュリーが俺にそう訴えていた事が、今になってようやく理解できるとは……



「貴方を連れて行けなかった事は、今でも悔やまれてなりません……出来ることなら……一緒に……アシュリーと兄妹として育ててあげたかった……ごめんなさい……」


「いえ……母であるベアトリーチェ王妃には、よくして貰っていたと聞いています。物心つく前に亡くなってしまって、俺にはなんの記憶もありませんが……」


「ベアトリーチェは……貴方を愛してくれていたのね……」


「姉のアンネローゼからは、それで妬かれていましたよ。」



フフフ…と笑うも、ラリサ王妃の目から涙が零れ落ちた。



「アシュリーは、突然いなくなった貴女を探して旅を続けています。それから、村の宝である石を集めています。」


「やっぱり…あの子には、それが出来る能力があったのね……私にはあの短剣に石を嵌める事は出来なかった……」


「銀髪の村にも行きました。場所は変わっていると思いますが、貴女の故郷となる村です。」


「見つけたんですか?!私も探して……探して……でもたどり着けなかった……」


「貴女が求めるのであれば、そこまで案内します。」


「……いえ……今は……私にはやることがあります。」


「両親を助け出す事ですか?」


「……ええ……。」


「どこに囚われているか、ご存知ですか?」


「場所が変わっていなければ……でも私はここから動けなくて……」


「分かりました。それは此方で調べます。俺も助け出す事に力を貸します。」


「……ありがとう……」



ゾラン達に目配せをすると、ジルドが動き出した。



「リディは……アシュリーとはどうするつもりなの……?」


「…………」


「リディ?」


「……今更……アシュリーを妹だと……そんな風に思えない……」


「でもっ!貴方とアシュリーは紛れもなく…!」


「分かっています!………分かっています……」


「貴方とアシュリーがそんな事になったら……ベルンバルトの思う壺です……っ!」


「それは……っ!……父上は……関係ありません……!」


「それでも……!」


「待って下さい!……今はまだ……気持ちの整理がつきません……」


「……そうね……ごめんなさい……」


「俺には……アシュリーしか……」


「リディ……」



ラリサ王妃が俺に近づき触れようとする。


それを察して、すぐに後ろに下がる。



「心配しないで……もう貴方の記憶を弄ったりしません。生まれてすぐに手放して……それから貴方に触れられなかったから……」



ラリサ王妃は、そっと俺を抱き締めた。


俺もラリサ王妃の背中に手をやり、頭に手をやって、闇魔法で一日の記憶を消した。


気を失ったラリサ王妃を抱え、ベッドに寝かすと、俺達は部屋を後にした。



帝城でいつも使う部屋へ行き、ソファーに座り一人考え事をする……



俺は……アシュリーを妹だと思う事ができるのか……



妹だと分かっても……俺の気持ちは今もなお、アシュリーを求めてしまうんだ……



他の女性からは……特に此処に来る様な皇女や貴族の娘からは、表面からは想像出来ない位の、受け入れる事が出来そうにない感情が読み取れる。


どんなに美しくても、俺には醜い魔物にしか見えないのだ。



初めてなんだ……



あんなに清んだ心に触れられたのは……



あんなに暖かい感情に触れられたのは……



あんなに愛しく思えたのは……



アシュリー以外にいないんだ……



心がアシュリーを求めて止まないんだ……



俺は……どうすれば良い……?










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