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慟哭の時  作者: レクフル
第5章

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力の使い方


「 何回俺の前で倒れんだよ……その度に俺がどんだけ心配するか分かってんのかよ……」



そんな声が微かに聞こえてきた……


気がつくと、私はベッドで寝かされていた。


ベッドの脇にはエリアスが座っていて、私の手を両手で包み込む様に握っていた。



「アシュレイ、気がついたか?具合はどうだ?」


「エリアス……?私は……?」


「魔力を使いすぎてぶっ倒れちまったんだ。今はエルニカの街の宿屋にいる。一時間も寝てねぇよ。ったく、無理しすぎなんだよ……」


「そうか……多分……エリアスがいてくれたから、安心して力を使い過ぎたんだと思う……気をつける…」


「そんな風に言われっと、これ以上何も言えなくなっちまう……」


「ところで、街はどうなった?」


「まだ確認できてねぇ。」


「じゃあ、確認しに行こう。」


「まだ休んでた方が良いだろ?無理すんな。」


「でも、孤児院の皆が気になる。私はもう平気だから。」


「アシュレイは言い出したら聞かねぇからな……分かったよ。」



宿屋を出て、すぐに孤児院へ向かう。


中へ入ると、教徒の男達が泣きながら子供達に謝っていた。

それを困惑しつつも、微笑んで許す子供達……

子供達にも浄化の効果が表れたのか、普通なら許せない事でも許してしまっているのかも知れない。



「あ!お兄ちゃん達!」



昼間の小さな子供達が、私達を見て笑顔で近づいて来た。



「お兄ちゃんが言った通り、皆仲良くなったよ!ありがとう!」


「そうか、それは良かった。」


「おい、アンタ等、これからどうするつもりなんだ?」



エリアスが教徒の男達に問い質す様に聞く。



「こんな子供達に強制的に労働をさせて、申し訳ないと思っています!これからは頂いたお布施を運営資金に使わせて頂きますから、もう子供達には過剰な労働はさせません!」


「本当だろうな!」


「アフラテスの神に誓って!」


「……こう言ってるけど、お前らどうするよ?」


「僕たちは……行くところが無かったのを拾って貰えて…その事に感謝しています。これから良くして貰えるみたいなので、皆で協力して生活していこうと思います。」


「しっかりしてんな。分かった。俺も定期的に来るからよ、酷ぇことされたら言えな?」


「はい!ありがとうございます!」


「皆、良かったね。これからは皆、仲良く出来そうだね。」


「うん!お兄ちゃん達、ありがとう!お昼ご飯も美味しかった!また来てね!」



子供達の様子を見て安心して、孤児院を後にした。


それから繁華街を見て廻って、教会の様子も確認してから、宿屋へ戻った。

今のところ、問題はなさそうだ。

とは言っても、良くなったかどうかは、もっと踏み込んで見てみないと分からないだろう。


宿屋の一階にある食堂で食事をする事にした。

食堂のおかみは愛想良く対応してくれた。

そして、テーブル席だと言うのに、またエリアスは隣に座ってきた。



「アシュレイ、いっぱい食え!体力回復させねぇといけねぇからな!ほら、食え!肉食え!」


「分かったから、エリアス、声が大きい……」


「アシュレイは細過ぎんだよ。すっげぇ軽いしな。もっと太っても良いと思うぜ?」


「結構食べてるんだけどな……」


「もっと食えよ。もう倒れねぇ様にしねぇとな。」


「そうだな、まだ他の街も浄化しないといけないし。」


「えっ!?他の街って……もしかして、この国全部の街を浄化するつもりか?!」


「ん?そのつもりだけど?」


「いくつあると思ってんだよ!って言うか、またさっきみてぇに力使い過ぎてぶっ倒れちまうじゃねぇか!」


「でも、私はこの国全体的に問題あると思う。一つの街だけどうにかしても、また悪い影響を受けてしまうかも知れないじゃないか。」


「そうかも知んねぇけど……」


「平気であんな事ができる人達と、それをストレス解消になるって言って見に行く人達がいるこの国は、私はやっぱりおかしいと思う。またいつアデルみたいに、犠牲になってしまう人が出るか分からないんだ。このまま放ってはおけない。」


「アシュレイの気持ちは分かるし、その気持ちは有難てぇけど……でもよ、毎回今日みてぇに倒れちまうかも知れねぇんだろ?」


「それは……倒れないとは言えないけど……エリアスがいてくれるから、そこは安心できるし……」


「それを言われると、何も言えなくなっちまうだろ……ズリィな……」


「ズルい?そうなのか?じゃあ、どう言えばいい?」


「いや、どう言えばって言われても……」


「じゃあ……気合いで倒れない様にする。」


「気合いでどうにかできんのかよっ!」


「ある程度の事は気合いでどうにか出来る。」


「いや、限度ってのがあるだろ!」


「大丈夫だ!迷惑をかけない様にする!」


「そう言う事を言ってんじゃねぇよっ!」


「エリアスはどうしたら納得してくれるんだ?!」


「迷惑とかじゃなくて、心配してんだよ!アシュレイはいつもやり過ぎんだろ?!俺は気が気じゃねぇんだよ!」


「……エリアスの言うことは分かった……でも、やっぱりこのままには出来ない……」


「あーっ!もう!本当に言い出したら聞かねぇなぁ!強情にも程があんだろ?!ったくよぉっ!」


「……ごめん……」


「……謝る事じゃねぇよ……アシュレイのしようとしてる事は、俺の助けにもなってる事なんだ……けど……頼むから無理だけはしないでくれ……」


「うん……分かった。ありがとう、エリアス。」


「礼を言われる事でもねぇ。礼を言うのは俺の方だ。ありがとな……」


「ううん……私に出来る事だったから…それで助かる人が一人でもいてるんなら、私に力がある事には意味があるかも知れないって思えるから……」


「アシュレイ……」


「ずっと、こんな力があっても何の意味もないって思ってたんだ。それよりも、誰にでも触れて普通になれたら良いのにって……」


「………」


「だから、私の力が誰かの役に立ててる事が嬉しいんだ。ずっと……こんな異常な力を持つ自分が存在する意味が分からなかったから……って、……エリアス?!」


「んなこと……言うなよ……」


「あ、うん、ごめんっ!だから……その、泣かないで……?」


「泣いてねぇよっ!」


「あ、そ、うだな……うん、悪かった、エリアス…」



エリアスが私の肩を引き寄せ、また頭をワシャワシャし出した。



エリアスなりに慰めてくれているんだな……



髪がボサボサになったけど、そこは我慢する事にした……








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