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慟哭の時  作者: レクフル
第5章

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明かされていく真実


翌朝、朝食前にゾランがやって来た。



「遅くなって申し訳ありません。聖女の事ですが……」


「聖女……?」


「……聖女を調べる様に仰ったので、調べておりましたが……」


「聖女の事を?!俺がか?!」


「……リドディルク様?」


「いつ俺がそう言った?!」


「一昨日の事ですが……。」


「一昨日…?それを調べていて、ゾランは昨日いなかったのか?」


「はい、そうです。」


「何故俺は聖女の事を……?」


「リドディルク様が目覚められて、私に聖女の事を聞かれたのは覚えていらっしゃいますか?銀髪の女性に会わなかったかと聞かれました。」


「……銀髪の女性……?」


「……何かおかしい気がします。私も一昨日、リドディルク様に、リドディルク様がしているような対応をしていました。リドディルク様は何故分からないのか、と言う風でした。」


「……どう言う事だ……?」


「何か……忘れている事がある……のかも知れません……」


「……それは俺も感じている……どうも頭にモヤがかかっている様にスッキリしない……」


「昨日、何かありましたか?」


「俺は昨日、一人で帝城へ行って……そこでまた倒れた様で、倒れるといつも使う部屋で気がついた……それ以前の事は覚えていない。」


「お一人で帝城へ…?!もしかして……聖女の事をお調べになろうとされていたのでは?!」


「聖女……銀髪の女性……?」


「……ひとまず、私が調べた事をお伝え致します。今回連れて来られた聖女ですが、銀の髪をしている女性です。そして、その女性は昔、王妃としてこの帝国にいたことが分かっています。」


「なに?!それは本当か?!」


「はい、第9夫人のラリサ王妃です。」


「銀髪の女性が王妃だったのか?!」


「そうです。ベルンバルト皇帝は、このラリサ王妃をいたく気に入っておられた様です。最も愛された王妃だと言われておりました。しかし、皇帝の子を何度も授かったそうですが、産まれる前に亡くなってしまっていた様です。」


「銀髪との子供……」


「その当時は回復魔法が使える事は分かっていなかった様ですね。」


「なぜラリサ王妃はいなくなった?!」


「三度程、お子が流れてしまい……ベルンバルト皇帝も諦めていた頃、念願のお子様が産まれた様です。しかし、その赤子を連れて、ラリサ王妃はこの国から去ったそうです。」


「逃げたのか……?!」


「その様に聞きました。」


「その男の子が俺の弟……?」


「いえ……連れて逃げたのは女の子だったそうです。」


「女?!」


「はい。」


「どう言う事だ?!俺はリーザから、俺の弟が銀髪の女に連れ去られたと聞いている!」


「……この情報は確かなものです。しかし、母が嘘を言うとも思えません……」



今迄の事を踏まえて考えると、俺の母は第10夫人ベアトリーチェ王妃ではなく、第9夫人ラリサ王妃だと言う可能性が高い。


父上は言っていた……


銀髪の女性との子供は出来にくいが、一度成功している…と


一度……?


俺はいつ産まれた?


俺の母はラリサ王妃……?


連れて逃げたのは女の子……?


一度成功している……


俺は……


いや……


俺達は……


双子だったのか……?


では何故リーザは弟と……


リーザが亡くなって…俺は弟を探す旅をした……


銀髪の女性に連れ去られた…男を……


頭がボヤけたままだ。


何かを忘れている。


忘れてはいけない……

 

絶対に忘れてはいけない……


なのに思い出す事ができない……



銀髪の女性が一緒に逃げたのは女の子……



俺が探すのは男……



女だと連れ戻される……?



ダメだ……答えが出そうで出ない……




「リドディルク様、どうされましたか?」


「ゾラン……何かに阻まれている様な感じがする。俺の記憶に足らない事がありそうだ。」


「それは、一昨日私も自身に感じております。この事に関して関わっていそうな人は……」


「聖女か……」


「ですね。」


「調べられたくないのか……?」


「そんな感じがしますね。」


「記憶を操作する能力…?」


「あまり聞いた事はありませんが……忘却魔法と言うのが存在する、と言うのは聞いた事があります。」


「忘却魔法……」


「高度な忘却魔法の使い手となると、ある一定の記憶や、ある人物のみの記憶を無くす事が出来るそうです。」


「聖女は……自身の記憶を俺から消したのか……」


「そうかも知れません。」


「ゾラン、これまでの事を書面に残せ。そして、聖女には一人で会わない様にしろ。聖女に会った後は、記憶操作がされているかを確認する事を必須とする。」


「畏まりました。」


「聖女の……ラリサ王妃の子がどこにいるのか、情報を集めて欲しい。」


「では直ちに……」



ゾランはすぐにこの場から去った。



聖女……ラリサ王妃は何を隠したい?



なぜ俺から記憶を消した?



なぜ帝国に戻ってきた?



繋がりそうで繋がらない答え……



ラリサ王妃の子……



今 君はどこにいる……?












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