表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
慟哭の時  作者: レクフル
第5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

159/363

繰り返す悲劇


その日は街で一泊して、翌朝、マルティノア教国へ向かうべく、街道を歩く。


何日か歩いて、その間に魔物を倒して解体して素材を集めて、夜になったら野宿をして、それからまた歩いて行く。


エリアスとの旅は、魔物を程無く倒して行けて、たまに出合う盗賊も難なく倒せて、何とも快適に進んで行ける。


夜に私が料理を作ると、エリアスはどこまで褒めるんだ?と思うくらい、いつも私の料理を絶賛し、残さず平らげてくれる。


エリアスの話も楽しかった。


今までの冒険者としての仕事の話が多かったが、依頼を受ける事の無かった私には、そんな依頼もあるのか?!と思う程、様々な話を聞かせて貰った。


そんな話が楽しいのもあり、エリアスとの旅は順調に進んでいく。


しかし、レクスを見送ってから、ディルクとは一度も話せていなかった。

石は全く光らなくなったし、私がディルクを思って石を握りしめても、何の返答も無かった。


どうしたんだろうか……


また無理をして倒れているんじゃないだろうか……


そんな思いが頭を過る。


無事であればそれで良いんだ。


それだけでも知りたい。


夜になるといつもそんな事を思って、私は石を握り締めていた……





街道を外れて、森の中を進んでいく。

エリアスが、何故かこの道を進みたいって言ったからだ。


もうそろそろ野宿する場所でも探そうかと思っていた時、うっすらした子供が私達の横を、凄い勢いで走り抜けて行った。


驚いて2人で後ろを振り返る。


その霊は走って、それから突然首が飛んで行き、倒れた。



「ラルフ……?」



エリアスが倒れた霊を見つめて、そう呟いた。


「えっ?」


驚いてエリアスを見ると、エリアスの顔は青褪めていた。


霊は消えて、少しすると、また向こうから私達の横を走り抜けて、それから首が飛んで行って倒れる……


エリアスは何も言えずに、暫くその場に凍り付いた様に立ち尽くしていた。


何度もそうやって、逃げるように走って来て、それから首が飛んで行き、そして倒れて消えて行く……


思い立った様にエリアスが振り返り、また走って来ている霊に向かって


「ラルフ!」


と呼びかけた。


霊はやっと止まって、エリアスの方を見た。


「ラルフ、俺だ、エリアスだ、分かるか?!」


エリアスが膝をついて、目線をラルフに合わせた。


「エリアス?……エリアス!早く逃げよう!もうユーリもディータも皆殺された!早く逃げないと……」


言ってるそばから、ラルフの首がまた飛んだ。


血が吹き出し、エリアスの顔に飛び散る。


ラルフが消えると、エリアスの顔に着いた血も消えていた。


それからまた、ラルフが走って来た。


彼はずっとこうやって何年も、追いかけられて逃げて、それから殺される事を繰り返していたのか……!?


「ラルフ!」


エリアスがまた目線を合わせて、ラルフに訴える様に言う。


「エリアス!早く逃げないと……」


「大丈夫だ!もういいんだラルフ!もう逃げなくていいっ!」


「エリアス…?」


「助けに来たんだ!ラルフ、もう大丈夫だからっ!」


「助けに来てくれたのか……」


ラルフはそう言うと、涙を流した。


私はルキスを呼んで、ラルフを浄化させる。


幸せそうな顔をして、ラルフが空へと消えて行った。



膝をついたままその場で動けなくなって、顔を手で覆ったエリアスは「ありがとう……」と一言呟いた……








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=849298090&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ