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慟哭の時  作者: レクフル
第4章

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別れの時


レクスの事を思って、紫の石の指輪を握りしめた。


でも、やっぱり何もおこらなかった。


レクスは霊体だから、紫の石の効果が出ないのかも知れない……


紫の石は、ディルクは私が持っていると良いって言ってくれた。


王都の宿屋の部屋を思い浮かべて部屋に戻って来た。


部屋には、レクスが帰って来ていた。



「レクスっ!」


「あ、アッシュ、おかえり!」


レクスが微笑んでいる。


その微笑みが胸に痛い。


「ただいま、レクス。どこに行ってたんだ?」


「うん、ちょっと色々……アッシュは?」


「え?!あ、うん。ちょっと色々……」


お互い顔を見つめて、2人でふふふって笑う。


この感じが好きだ。


レクスとこんな風に出来るのが、すごく好きだ。


「私、レクスとこんな風に話すのが好きだ。」


「俺もアッシュとこうやって話すの好きだぞ!」


「私、レクスが好きだ!」


「俺もアッシュが好きだぞ!」


「私、レクスとギュッてしたいっ!」


「俺もアッシュと、ギューッてしたいっ!」


「ずっと一緒にいたかった!」


「俺だって一緒にいたかった!」



2人で見つめ合って、それから2人で一緒に泣いた。


いっぱいいっぱい、2人で泣いた。


それから、2人で一緒に眠りについた。


手と手を重ねて、お互いを感じ合う様に。


2人で向き合って、寄り添う様に。




それから




王都を離れる前に、ギルドに行って、皆に挨拶をした。


ギルド長や職員、他の冒険者達も皆がエリアスが旅立つのを止めたけれど、エリアスは頑としてそれを受け入れなかった。


私も、エリアスと一緒に旅立つ事を認めた訳ではなかったから、ギルド長にこっそりお願いされていたのもあって、何とか残るように説得したのだが、エリアスは私の言うことも全く聞く耳を持たなかった。


それから、紫の石を使って、3人でイルナミの街へやって来た。

イルナミの街が以前より綺麗になっていて、レクスは驚いていたが、私自身も驚いた。


孤児院も建てたばかりの様に綺麗になっていて、シスターに聞くと、何故そうなったのか分からない、街全体の人達の数日間の記憶が無くなり、気付いたらこうなっていた。と、不思議な話の様に教えてくれた。

私の闇魔法と回復魔法が、上手く働いてくれていた様だった。

それから、孤児院で子供達と差し入れた食事を一緒にとり、楽しい一時を過ごした。


ギルドに行って、持っていた素材を買い取って貰っていると、クオーツがやって来た。

私を見て、「アンタにはおごらないといけない気がする。今から一緒に飲まないか?」と誘ってきたのに対して、何故かエリアスが怒り出して喧嘩になりそうにもなったが、結局その後『群青の牛亭』で飲む事になった。


クオーツとエリアスは、いつの間にやら気が合って、どちらが酒に強いか飲み比べと言って、2人でバカみたいに酒を飲みまくっていた。

それから2人共が飲み潰れたので、仕方なく勘定を済ませて、クオーツの事はおかみにチップを渡して任せ、エリアスを連れて宿屋に帰った。

その姿を見て、レクスと2人で、男ってバカだよなって笑い合った。


レクスが、実は冒険者になるのが夢だったからダンジョンに行ってみたいと言うので、次の日に3人でダンジョンに潜り込んだ。


エリアスがガンガンに魔物を倒して行くから、私があまり何もしなくても、気付いたら地下40階まで降りていた。

フロアーボスのマンイーターも覚えたての雷魔法でエリアスがあっという間に倒してしまった。


終始、レクスは嬉しそうに楽しそうに、羨望の眼差しでエリアスと私を見ていた。


素材買取りカウンターに持っていくと、ギルド中が大騒ぎになって、そこで宴会が行われることになった。


未だ誰も地下40階には到達出来ていなかった様で、冒険者達や職員達も、皆でお祭り騒ぎの様になった。


孤児院の皆を呼んで、一緒に宴会に参加して貰った。

レクスは知っている人達の側にいれて、皆の楽しそうな姿を見て、凄く嬉しそうにしていた。


石を握ってディルクと話すと、いつの間にかディルクがやって来ていて、その宴会にも楽しそうに参加していた。


まだ宴会が終らない中、4人で外に出て、街を出た。





レクスを見守ってくれているトネリコの大きな樹のそばまでやってきて



雲ひとつない空には満月があって



森の精霊達が集まってきて



ルキスを呼び出し、私の体と重さなるようにして



レクスを浄化させる様に、体に光を纏い、レクスと手を繋いで



この時初めて、私はレクスと手を繋ぐ事が出来て



白く輝いたレクスがゆっくりと浮かび上がって



私の手から離れて行きそうになって



レクスは涙を流しながら微笑んで



私も涙が自然に出たけど微笑んで



私の手からレクスが離れて行って



森の精霊達がレクスと一緒に高く飛んで



レクスの光が段々高く遠くに行って



それからゆっくりと消えて行った



私はいつまでも 消えたレクスの跡を見続けて



そのままいつまでも空を見続けて



ただずっと その場から離れられなくて 



ディルクとエリアスは何も言わずにずっとそばにいてくれて



私はそのままずっと レクスとの思い出に浸っていたんだ……










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