撲滅
私とエリアスで、向かってくる者達を次々と倒して行く。
エリアスは流石、Aランク冒険者だ。
剣に一切の迷いがない。
それに、魔法にも長けている。
氷の矢で、一人一人確実に仕留めて行く。
私に向かってくる者達には、エリアスが魔眼を放つ。
私が何もせずとも、やって来た敵達を殲滅していく。
「流石だ、エリアス。」
「アンタには負けるけどな。」
「そんな事はない。」
笑いながらそう言い合って、控え室まで進んで行く。
ふと見ると、レクスが下を向いたまま、何も言わずに着いてきていた。
どうしたんだろう?
気になるが、それはまた後で聞いてみよう。
今は幹部連中の元まで行くのが先だ。
しかし、それと同時に気になる事がある。
紫の石がこの近くまで来ているのだ。
会場に入って、この場所に近づけば近づく程、その輝きが大きくなっている。
もしかしたら、ここの幹部達が持っているのかも知れない。
更に気を引き締めて、控え室までたどり着いた。
その前にも護衛なのか2人の男がいたが、アッサリとエリアスに倒された。
エリアスがドアを蹴落とし、中に入っていく。
中には4人の男達が座っていた。
一番奥にドッカリと座っている男が、恐らく『闇夜の明星』のボスだろう。
その前に座る3人の男達が即座に立ち上がった。
「なんだ?!お前ら!」
「すげぇ美人のねぇちゃんじゃねぇか。俺達に可愛がられに来たか?」
「俺達が誰だか分かってここにいるんだろうな!?」
私を庇う様に、エリアスが前に出る。
見ただけでも、今までの奴等とは格が違うのが分かる。
それともうひとつ分かった事は、ここに紫の石がある、と言う事だ。
強めの雷魔法を放つ。
が、結界に阻まれてしまった。
かなり強い結界を張れる者がいる。
エリアスの無効化の能力でも、この結界は破れないようだ。
「ルキス!」
目映い光が部屋中を包み、そこにルキスが現れた。
「ルキス、結界を解除したい。出来るか?!」
「ふふ……任せなさいな。」
言うとルキスが部屋中をぐるりと飛び回る。
気付くとそこには結界が無くなっていた。
精霊が見えない者達は、何が起こったのか分からずに戸惑い始めた。
エリアスが魔眼を発動させる。
右側にいた、一人の男が、恐怖で立っていられなくなった。
私がそこにすかさず、雷魔法を放つ。
左からの気配に気付くと、大量の水が現れていて、水の塊が私達を飲み込んだ。
エリアスがその魔法を無効化すると、現れた水はどこかへ消えて行った。
風魔法で私達を纏い、体を乾かす。
ルキスが私を包み込む様に重なる。
手を向けて発動すると、光の矢が飛んでいき、真ん中にいた男の腹に当たった。
当たった所から男は光り輝き、気付くとその男の着衣のみが残されていて、男はどこかに消えていた。
他の者達もそれには驚いて、一気に警戒心を高めた。
ルキスが重なっていると、どんな光魔法が使えるのかがすぐに頭の中に閃く様に分かる。
「俺も負けちゃいられねぇな!」
エリアスが雷魔法を左側の男の頭上から落とす。
感電した男はすぐに倒れた。
「アシュレイの真似をしてみたぜ?上手くなるには、まだもうちょっとかかりそうだけどな。」
「すぐに使える様になるなんて、流石はエリアスだ!」
幹部が3人共倒されて、怒ったボスが立ち上がる。
「お前ら!簡単に死ねると思うなよ!!」
そう怒鳴ると、地面から突起物が無数に飛び出して来た!
土魔法の槍だ!
足元がグラついたのを、エリアスが支えてくれる。
「大丈夫か?!」
「だ、大丈夫だっ!」
壁からも土の槍が飛び出してくる。
次々と出現する土魔法の槍に、エリアスの無効化がなかなか追い付かない。
エリアスは私を支えながら、至るところから飛び出す土魔法の槍を避けていく。
かわしながらも、光魔法で矢を放つが、それは結界に阻まれてしまう。
自分達にも結界を施し、ルキスに結界を解除する様に言うが、かなり強い結界だから時間がかかるようだ。
自分達に結界を張ったその上から、ボスは結界
を重ねる様に施し、私達を閉じ込めた。
それから私達の側までやって来て、指輪の石を当てだした。
「紫の石っ!」
ボスの顔がニヤついて私達を見る。
魔法を発動するも、結界に阻まれてしまう。
ルキスはボスに張られた結界と、私達に張られた結界を取り除こうと躍起になっている。
紫の石が光だした。
「アシュリー!」
その声に驚いて、入り口に目をやると、そこにはディルクがいた…!
その後から、青い髪の女の人と、ゾランもやって来た。
あの女の人は、オルギアン帝国の女騎士…!
「ディルク!」
私を見たディルクが驚いた顔をして、一瞬止まった。
「私にあんなことをして!覚悟なさい!」
女騎士がボスに剣を振るうが、結界に阻まれる。
あちこちからまた土の槍が出てきて、足元が危うくなった女騎士をディルクが抱き上げた。
「リディ!余計なことはしないで!」
「少し落ち着いて!エレイン!」
辺りが光だして、光の精霊が現れた。
「エレイン、ルキスと協力して結界を解除してくれ!」
「分かったわ。」
ルキスとエレインが2人で結界の解除をし出すと、すぐにボスの周りの結界が無くなっていく。
ボスの頭をディルクが掴むと、一瞬にしてボスが崩れ落ちた。
「何だよアイツ……!」
驚いた様にエリアスが言う。
結界の壁に手をついて
「ディルク!」
と叫んだ。
「アシュリー!」
ディルクが私の元までやって来て、結界の壁に手をついた。
お互いの手と手が重なる。
でも阻まれて触れられない。
「ディルク、やっと目を覚ました!」
涙がポロポロ溢れてくる。
「アシュリー、無事か?怪我はないか?すぐにここから出してやる!」
しかし、紫の石を当てられた効果なのか、周りの視界が歪んでいく。
「ディルクっ!紫の石が……!」
「アシュリー!」
それから私達は、その場から姿を消した。




