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慟哭の時  作者: レクフル
第4章

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潜入


エリアスと一緒に、会場入口に進んで行く。


今日は魔力制御はなしで、魅了効果は発揮させる事にしている。


エリアスと事前に、自分の持つ能力をある程度話し合った。


流石に全ては話していないが、魅了の効果は全快にした方が良いと言われたので、その通りにする。


エリアスは魔眼持ちで、発動させると目が合った者は幻覚が見えるのだと言う。

どんな幻覚かは、受けた人が最も恐怖に感じているモノが見えるらしいので、何が見えているのかはエリアスにも分からないらしい。


この前の私との戦闘で、右目の視力が戻っていないと言っていたので、光魔法で浄化してみると回復した。

実はエリアスには光魔法と言いながら、コッソリ回復魔法を発動させたのだが、バレずに済んでいる様だ。


それから、魔法を無効化できる能力があるらしい。

これは自分で無効化するかどうかをコントロールできると言っていた。

ただ、相性の悪い系統の魔法は完全に無効化できないそうだ。

エリアスは闇との相性が悪いらしく、しかもかなり強力な魔法だったから、あの時は本当にヤバかった、と話していた。



受付でエリアスが招待状を見せる。



それを確認している作業員と目が合うと、私はニッコリ微笑んだ。


それを見た作業員は、暫く呆然と口を開けて私を見続けていた。


そのまま前を通り抜け、奥へと進んで行く。



「俺もさっき、あんな感じだったのかな……」


「えっ?さっき?」


「アシュ…ラリサのその姿を初めて見た時……」


「どうだったかな……?」


エリアスの顔を覗き込みながら言うと


「俺にも魅了かけてんじゃねぇよ!」


と、ちょっと怒った顔をしていた。


「エリアスには私の魅了は効かないみたいだ……けど?」


「分かってるよ……」



そんな事を話しながら進むと、一階のパーティー会場にたどり着いた。


そこでウェルカムドリンクを手渡される。


ウェイターからニッコリ笑って受け取ると、ウェイターはその場から動かなくなった。


周りのあちらこちらから視線が向けられているのが感じられる。



「エリアス、色んな所から凄く見られている。何か感づかれたのかな?」


「いや、感づかれたとか、そんなんじゃねぇ。」


「じゃあ、魅了が効きすぎているのかな?」


「それもあるだろうが…魅了効果が無くても…だろうな……」


「どういう事?」


「ホント、鈍感だな、ラリサは。」


「え?」


エリアスが私の耳元に口を近づけて


「アシュレイが綺麗だからだろ。」


そう呟いた。


その言葉に、暫く恥ずかしくて顔を上げられなくなった。


「エリアス、あんまりアッシュに近づきすぎんな!」


「これも作戦だろ。」


後ろから付いてきているレクスに、エリアスはちゃんと答えている。


最初の印象と違って、エリアスは良い奴だ。





パーティー会場では楽器の演奏や、流行りの劇団の芝居も催されるので、とても賑わっていた。

あちらこちらで綺麗なドレスを来た女性同士、紳士らしい男性同士が挨拶を交わしていたり、商人と思わしき人が名刺を渡していたりと、社交の場としても賑わっていた。


こんな世界があるんだな……


今まで踏み込んだ事の無い世界に、思わず目を奪われてしまう。


しかし、こんなことをしている場合じゃない。


終始楽しそうに微笑みながら、一方では五感を研ぎ澄ませ、地下に続く階段へ向かう。


階段を降りると、重厚な扉があり、その前に受付があって、そこに男が2人待機していた。


受付の男にエリアスが招待状を見せると、確認するようにマジマジと招待状と私達を見る。


私が微笑むと、2人の男は同じように微笑んで、重い扉を開けてくれた。



「こんなに入るのに苦労しないのはラリサのお陰だな。」


「エリアスは人相が悪いもんな!」


「うっせぇぞ。ボウズ。」


視線を動かさずに、エリアスとレクスはコッソリ喋ってる。


本当に仲が良いな。


そうして私達は、闇オークション会場に入る事に成功した。



会場の中には、まだ人は3分の1程しか人が集まってなかった。


会場内の地図は、全て頭に叩き込んである。


右の奥に、従業員出入口がある。


そこから大きな控え室に行く事ができる。


恐らくそこに幹部達がいる、と睨んでいる。


従業員出入口には、男が1人立っていた。


そこまで歩いて行き、その男の瞳をじっと見つめた。


男は金縛りにあったかの様に、動かない。



「ここを通して頂ける?」



ニッコリ笑ってそう言うと、男はゆっくり頷いた。


難無く、その男の前を通り過ぎる。


「やっべぇ……魅了だけであれか?」


「少し光魔法で頭をボヤカした。これで数時間はあのままかな。」


「敵に回したくねぇーっ!」


「私もエリアスはもう敵に回したくないな。今はもう仲間だし、ね?」


エリアスにニッコリ微笑む。


「そうだな…でもそれだけじゃあ物足りねぇ……」


「エリアス、急ごう!早く助けてあげないと!」


「俺の言葉はスルーかよ。鈍感にも程があるだろっ!」



慣れない靴で走り出そうとしたから、また足元がグラついた。


転びそうになった所を、後ろから咄嗟にエリアスが支える。


「っぶねぇーっ!」


「あ、ありがとう、エリアス。」


「ほっせぇ腰……」


腰に腕を回して支えたエリアスが呟く。


後ろから支えるその腕がなかなか離れない。


「エリアス?もう大丈夫だから、離して……」


後ろを振り返って言った時、エリアスの唇が私の唇に触れた気がした。



「何やってんだ、お前らっ!」



「来やがったか。」



エリアスが魔眼を発動させた様で、男はすぐに恐怖におののいて、叫びながら逃げ出して行った。


その声を聞いて、他の者達もゾロゾロとやって来た。


雷魔法で感電させると、集まってきた男達はすぐに皆倒れた。



「それ、本当に便利な魔法だな。」


「気絶させただけだけどね。」


「アシュレイは優しいな。」


「エリアス、急ごう。」


「ああ。」



走って控え室に向かう。



走りながらさっきの事を思い出す。



エリアス、あれは…偶然……だよな……?







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