どこにでもある闇
翌朝になって目が覚めた。
よっぽど疲れていたのか、あのままぶっ通しで眠っていたようだ。
横には、レクスがまだ眠っていた。
しかし、レクスの体が少し薄くなっている。
「レクス?!レクス!」
驚いて、レクスを呼ぶ。
レクスは気がついて、私を見ながら
「おはよう、アッシュ。」
と、微笑んできた。
見ると、レクスの体は元に戻っていた。
私が呆然とした顔で見ていると
「ん?どうしたんだ?」
「え?いや、うん、何でもない。レクスもよく寝たなって思って…」
「そうだなぁ。寝る必要はないんだけどさ。最近ちょっと眠たくなるかな。」
「そうか。じゃあ、これからはまた一緒に寝よう?」
「え!…う、うん……」
今のは何だったんだろう……
見間違いだったんだろうか?
それだと良いんだけれど……
服を来て食堂に行く。
そこには目を腫らしたおかみがいた。
心配で堪らなかったんだろう。
朝食を食べて、それから街を歩いてみる。
王都はやはり人が多く、とても賑わっている。
それでも一本横道に反れれば、スラムの様な雰囲気を持つ場所も少なくない。
城から離れれば離れる程、治安は悪くなっていってる様だ。
それはどこの国も似た様な感じだ。
きらびやかな街の裏側では、その日食べる物もなく、強盗や身売りするしか生きていく術がない弱者もいる。
それらを全てどうにかする事は出来ないが、せめて私の力で出来る事があるのなら、それに力を貸すのは何も難しい事ではない。
そう考えながら、ギルドまでやって来た。
ギルドに入ると、酒場にはエリアスがいた。
「よう!アシュレイ。体の調子はどうだ?」
手を上げてエリアスが聞いてくる。
「エリアス。昨日は悪かったな。」
エリアスの元まで行って、同じテーブル席に座る。
「ちゃんと飯は食ったか?ゆっくり眠れたか?」
「エリアスは私の母親か?!」
そう言って思わずクスクス笑ってしまう。
「なんだよ!人が心配してんのによ!」
「まぁ、そう怒るな。」
言いながら、まだクスクス笑っていると、その様子をじっとエリアスが見ている。
「ん?どうした?」
「あ、いや、何でもねぇ!」
また私から顔を反らす。
「そうだ、エリアスに聞きたいことがある。王都でも人が拐われたと言う事は聞いてるか?」
「え?あ、いや、まだここら辺では聞かないな。なんでだ?」
「宿にある食堂のおかみの娘が、3日程前から帰ってきていないらしい。15歳だから成人しているし、気にする程でもないかも知れないが、おかみがとても心配していてな。」
「まさか王都にまであいつら!」
「まだ何の確証もないから滅多な事は言えない。でも、可能性はある。拐われた者達も心配だが、その身内の気持ちを考えると居たたまれない。」
「そうだな…」
「エリアスは昨日、私となら『闇夜の明星』を撲滅できると言っていた。どんな策があるんだ?」
「いや、この話はやめよう。アンタを巻き込むつもりはない。」
「私の事は気にするなと言っている。」
「まだ体は万全じゃねぇんだろ?そんな奴に手を借りれるか!」
「私は大丈夫だ!」
「俺が大丈夫じゃねぇんだよ!」
少しの間、沈黙が走った。
「……何が大丈夫じゃないんだ?」
「あ、いや、その…何でもねぇ……」
「とにかく、エリアスはどうやって撲滅しようとしていたのか、それを教えてくれないか。私もまだどうするか決めた訳でもなんでもない。」
「分かったよ……」
渋々エリアスは語ってくれた。




