男の真意
王都コブラル。
インタラス国のほぼ中心に位置する、インタラス国内では最も大きく、最も栄えている都市だ。
商人や旅人や冒険者、観光者そして貴族の出入りも多い。
門を潜ると、石で出来た建物が多く、高い物は4階や5階建ての建物もあった。
様々な店が並んでいて、行き交う人々を見ると上流階級っぽい感じが漂う服装をしている人達も少なくはなかった。
周りを確認しながら歩いて行くと、奥の方、王都南の方には立派で大きなお城が見えた。
こんなに間近で見るのは初めてだったので、暫く佇んで城を見上げていた。
「アッシュ!お城、大きいなぁ!」
「うん、レクス。私もお城をこんな近くで見るのは初めてだ。」
ついモロに田舎者丸出しな感じで佇んでしまった。
道行く人達がこちらを見て、クスクス笑っている感じがする。
田舎者だから笑われているんだろうな……
「アッシュ、どこに泊まるか先に決めた方が良いんだろ?」
「あぁ、そうだな。先に宿を探すか。」
宿屋は探すと結構あって、浴場のある場所を選んだ。
王都なだけあって、浴場がついている宿屋が多かった。
宿が決まったらギルドに向かう。
道中倒した魔物の素材が結構貯まっていたので、換金すれば結構な額になりそうだ。
ギルドはやはり王都なだけあって、今まで寄ったどのギルドより大きくて、内装もしっかりしていて綺麗な作りをしていた。
冒険者達も良い装備を身に纏っている者が多くて、ランクの高い冒険者が多そうな感じがする。
ふと殺気を感じた。
気配がした方を素早く確認する。
ギルドの奥にある酒場で見つけた。
盗賊の、私に氷の矢を放ったあの男がいた。
男はじっと私を見ている。
私も目を離さずに、ずっと男を見続ける。
吸い込まれそうな程に真っ黒な瞳を持った、黒髪の盗賊の男。
少しずつ私はその男に近づいて行く。
自分自身に結界と威圧を分からないように纏い、瞳の魔力を解放する。
テーブルに足を組んで、エールを片手に持ち、座っている男の目の前までやって来た。
男と睨み合い、暫く沈黙が続く………
「あーっ!もう、やめっ!降参!」
男はいきなり両手を上げて言い出した。
「なに?!」
男の真意が分からなくて、そのままで男を睨み付ける。
「いや、取り敢えずさ、ここで乱闘とかできないだろ?ギルド内じゃ喧嘩はご法度だぜ?こないだは悪かったよ。アンタと戦うつもりは今はねーよ。」
「信用できない。」
「そう言われてもな。俺の氷の矢が当たったのにピンピンしてる奴に恐ろしくって手を出せるかよ。あの黒い奴も怖かったしな。」
「それでも逃げられたじゃないか。」
「ギリギリだぜ?ヤバかったよ。あれからまだ右目の視力が戻ってねぇんだぜ。俺の魔眼がお陰で使いモンになんねーよ。」
「魔眼?!」
「やっぱりアンタには効いてなかったか!やっぱすげぇな。ホント、何モンなんだよアンタ。」
「私はただ旅をしているだけだ。」
「まぁ座りなよ。他の奴らがガン見してんぜ?」
気を飛ばすと、他の冒険者達の視線がこちらに向けられるのが分かった。
まだこの男を信用してないから、気を許す訳にはいかない。
男の言うとおり、男の向かいにゆっくりと座った。
「俺はエリアスって言う。Aランクの冒険者だ。
アンタは?」
「私はアシュレイだ。ランクはGだな。」
「えぇ!嘘だろ?!なんでアンタみたいな奴がGランクなんだよ!」
「エリアス、声が大きい……」
「なんだなんだ?こいつがGランクだって?」
エリアスの知り合いなのか、大柄の男が歩み寄ってきて、私の右肩に手を置こうとした。
咄嗟に肩に威圧を纏い、右手で払いのける。
「触るな。」
ギロリと睨むと、一瞬男は怯んだ。
「やめとけ、フーゴ。アンタも落ち着いてくれ。」
「私は落ち着いている。」
「そうか?さっきからアンタの横にいるボウズも、心配そうな顔でずっと見てんぜ?」
「見えるのか?!」
「まぁな。フーゴ、俺、こいつと話してるからさ、また後でな。」
言われてフーゴは何処かへ行った。
「レクス、大丈夫だ。心配してくれてたんだな。」
「気を付けろよ、アッシュ!」
「あぁ、分かってる。」
レクスに微笑んで答える。
「何だよー!可愛い顔出来んじゃねぇかよー!俺、さっきからアンタの殺気でビビってたんだからな!」
「自分のしたことを考えれば、仕方の無い事だと分かるだろう?」
「まぁそうだけどよ、あれだって仕事でやってたんだぜ?」
「あんな人数で商人の馬車を襲うのが仕事なのか?」
「あいつらは商人を装ってたけど、商人じゃねぇよ。あいつらこそ盗賊の類いだ。」
「どういう事なんだ?!」




