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慟哭の時  作者: レクフル
第4章

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想起


「アッシュ…」


レクスがそっと近寄ってくる。


「ごめん、レクス。…怒鳴って……」


涙を拭いながらレクスに言うと


「ううん。大丈夫だ。」


レクスはそっと私の隣に座った。


「俺、ディルクの様子を見に行ってたんだ。」


「そうだったのか?!ディルクはどうだった?!」


「眠ってた。お医者さんとかが来てて、ディルクを治療してた。」


「ディルクは…大丈夫かな……?」


「きっと大丈夫だ。俺はそう信じるぞ。」


「私もそう信じる……」


「今日はゆっくりしよう?アッシュ。」


「いや、折角ディルクが私の命を救ってくれたんだ。私は私の出来ることをする……」


「…分かった。」





引き続き、紫の石を求めて歩き出す。



ディルクの不思議な力……



悪い部分があると、それを自分に移す事でその人を救う……



でも、移した事によって、ディルクの体が悪くなる……



言わば、他人の傷をディルクが肩代わりしているって事なんだな……



思えば、ディルクは私の頬をよく触っていた。



ディルクに触れられたら、私の心はいつも軽くなっていた。



私の悲しい気持ちを、ディルクは何も言わずにいつも取り除いてくれていたんだ……



思い出す度に、彼の優しさが身に染みてくる。



気づくと勝手に涙が溢れてる。



「アッシュ、きっとディルクは大丈夫だぞ。」


「うん、…うん、レクス……」


「しんどくなったらすぐに休もう?アッシュもまだちゃんと治ってないしさ。」


「分かった…ありがとう……」


レクスに微笑みを返す。


レクスも微笑んで頷く。


そうして暫く、何も言わずに2人で歩いた。



しかし、昨日の盗賊のあの男…



私の魔法が効かなかった。


自分で言うのも何だが、私の魔法は精密で強力だ。


最初こそ手加減はしたが、その後に放った雷魔法も闇魔法も、受ければ即死する位の威力だった筈だ。


それに、テネブレの、あの闇の力から抜け出す事が出来るなんて……



彼は一体何者なんだろう……







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