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慟哭の時  作者: レクフル
第4章

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帝城


一息ついた所で着替えを済ませ、髪を整えてから、コルネールを呼ぶ。



「何でございましょう?」


「ゾランを呼べ。」


「た、只今‼️」



慌ててコルネールが支度をする。



直ぐ様、ゾランが姿を現した。



「お帰りなさいませ。リドディルク様。」


「あの時、お前が俺を無理に帰そうとしなければ……」


「何の事ですか?」


「いや、何でもない。これから帝城に行く。」


「畏まりました。」




部屋から出ると、既に出掛ける準備が済まされてあった。流石に仕事が早いな。



それからすぐに馬車に乗り、帝城へと向かった。



揺れる馬車の中。


一人、窓から流れる景色を見ながら考える。


これから厄介事を払い除けないといけない。


魔物どもの住む巣窟で。


俺は皇帝になる気など全くない。


それよりも気になる事がある。


銀髪の村を秘密裏に狙う国。


それがオルギアン帝国だった。


その理由を探るため、アシュリー達と別れてこの国に帰って来たのだ。




帝都に入った。




城壁が30m程あり、その守りは砦の様にも見てとれる。


兵が至る所で見られ、この城に近付く不審者を一掃する勢いで、キビキビ動いている。


その中を通り抜けて門まで行くと、馬車を見るなり、門番は敬礼する。


貴族の馬車には、其々の家の紋章が刻まれてあり、それを見ただけでどこの貴族が来たかが、すぐに分かるようになっている。


それでも、伯爵以下の貴族の場合は、一度門番に止められ、確認作業が行われる。


伯爵以上の貴族の馬車には、強い結界が張ってあり、御者は高度な魔術師と決まっているので、盗賊等に襲われて他の者が馬車に乗り込む、と言った事もない為、確認する事もせずに通って良いのだ。


もちろん、従者も一流の腕を持つ者ばかりだ。


いつも俺が帝城に行く時は、必ずゾランを連れて行く。


ゾランは従者にして博識で、戦闘・隠密にも長けている。

今一番、俺が信用している男だ。



城に着き、馬車を降りて帝城に入る。



いつもよりも出迎える人数が桁違いに多い。


既に俺がここに来る事が伝わっていたようだ。


滅多にここに来ない俺がどんな者なのか、皇帝に指名された皇子はどんな顔なのかと、皆興味津々で注目している。


なるべく顔を知られたくなかったが、こうなっては仕方がない。


皆が俺に頭を下げる。


その前を、平然を装い通り過ぎて行く。



しかし、この段階で既に頭が痛い。



負の感情、嫉妬、焦り、醜悪、羨望、下心、殺意、憎悪、嫌悪……


決して良いとされる感情でないモノが、頭の中に次々と流れ込んでくる。


至る所から涌き出る醜悪な感情の渦に抗えず、思わずそのまま呑まれそうになり、目眩をおこして倒れそうになる。



「リドディルク様、大丈夫ですか?」



後ろからそっと、ゾランが声をかけてくれる。


その声に、フッと現実に戻された。



「…ありがとう、ゾラン。大丈夫だ。」



なんとか持ちこたえて、城の中へと進んで行く。



さあ、本番はこれからだ。









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