表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
慟哭の時  作者: レクフル
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/363

追懐 2


俺は彼女をそっと抱きしめた。



「な、何するんだ?!」


「まずは彼女の体を魔法で温める。」


「分かったっ!」


触れた手から、彼女の冷たい体温が伝わってきて、俺の体が一気に冷える。


体の隅まで冷えて、崩れ落ちそうになる。


その代わりに彼女が少し温かくなって来た。


自分の体を魔法で温める。


これは火と氷の魔法を合わせたものだ。


体の血管自体を温めるのたが、火だけでは熱くなり過ぎてしまうので、氷魔法で温度を調整する。


自分の体なら何とかできるが、他の人に作用させた事がなかったので、こう言う方法をとったのだ。


そうする事で冷えた体が温まり、なんとか倒れずに済んだ。


少しずつ、彼女の体温が上がって来た。


それを繰り返していると、彼女の体は平温になっていた。



「アッシュ、大丈夫か?」


「あぁ、助かるぞ。」


「良かった!俺、野宿できそうな場所、探してくるぞ!」


レクスは安心したのか、そう言って消えた。



しかし、彼女は脱水症状を起こしかけていた。


水分を補給しないといけないな。


水筒を彼女の口にあて、飲ませようとしたが、上手く飲み込んでくれない。


仕方なく、俺は水を口に含ませて、彼女に口移しで水を飲ませた。


今回は上手く飲み込んでくれた様だ。


何度かそうやって水を飲ませる。


彼女の体がかなり回復してきた様だ。



「……良かった。」



彼女の頬に手をやる。


また暖かい感情が流れてくる。


その暖かさに、俺の心が安らいでいく。


こんな感覚は初めてだった。


ずっと彼女に触れていたくなる。



「兄ちゃん!あっちに野宿できそうな場所があったぞ!」



レクスが帰ってきて、また我に返った。


「あぁ、分かった。移動しよう。」


彼女を抱え上げて、レクスの言う場所まで歩いて行く。


触れている間、少しでも彼女の負の感情を取り除こうと、思わず抱える手に力が入る。


その度に足元がふらついてしまう。


思ったより、彼女の心は傷付いていたんだな……


暫く歩くと、木々が少し拓けてちゃんと野宿が出来そうな場所にでた。



「良い場所だな、レクス。」


「だろ?!良かった!」



そこにそっと彼女を寝かせて、自分の外套を上から掛けた。


それから彼女の周りに結界を張って、周りの気温が下がらない様にする。


火を起こして、スープを作る。


火の周りに腰をかけて、スープを煮込んでいる間に、レクスから話を聞いた。


どうやら、聖女を獲得する為の騒動にレクスが巻き込まれた様だ。


その聖女候補が彼女だったらしい。



「なぁ兄ちゃん。さっきからアッシュを『彼女』って言うけどさ。アッシュは女の子なのか?」


「気づいてなかったのか?」


「うん……」


「回復魔法を使えるのは、基本的に女性だけなんだ。」


「そうなのか?!」


「回復魔法が使える人は貴重だからね、国が挙って確保しに来るんだ。しかも強制的にね。俺が住む国で聖女を見かけた事があるが、悲しくて、家に帰りたがっている感情がヒシヒシと伝わってきたよ。」


「そうなのか……だからシスターは、アッシュのことを隠そうとしてたんだな。」


「しかし、何処の国の騎士だったんだろうか。」


「んーと、オラキ?オルキン?とか?」


「オルギアン帝国か?!」


「そう!その名前を言ってたぞ!そこに女の騎士もいた!青い髪のキレイな人だったぞ!」


「姉上か……」


「え?!なに?」


「いや、何でもない。そうか、災難だったな。」


「でも、男が女を守るのは当たり前だろ?」


「そうだな。レクス。」


「そうだぞ!あ、兄ちゃんの名前、何て言うか教えてくれよ!」


「…ディルクだ。」


「ありがとな!ディルク!お陰でアッシュが助かった!」


「男が女を守るのは当然なんだろ?レクス。」


「そうだな!当然だ!」


2人で笑い合いながら、レクスとは色んな話をしていたのだが、時折彼女の側で泣いている少女が見えた。


その姿を見る度に、俺の心に悲壮感漂う感情が流れてくる。


少しでも彼女の力になりたい、俺はあの時そう思ったんだ。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=849298090&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ