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001 百年後の世界!?

「どこ……ここ」


ふと気が付いたら車が凄い早さで目の前を通っていった。


「何故?」


よく考えるとこの車全く音が出ていない。それに全然排気ガス臭くない。


「でも何で車が通ってるの?」


よく分からない。きっと道路だから?


「あれ?私ってさっきまで何してたっけ?」


よし。思い返してみよう。まず朝起きて、歯磨いて、制服に着替えて……制服?


「そうか。高校か。」


成る程。で?えっと……そうだ!確か五時間目は数学だった気が……。

あー、何か、なんとなくだけど思い出せそう。えっと?確か学校行って。行って?


もう少し。あとちょっとで解る。そう確信が持てた瞬間。


「あっ……あのっ大丈夫ですか?」

「へ?ん?わっ私?」


不意に声をかけられた。む?邪魔しやがって。もう少しだったのに……


「……大丈夫ですか?」


まぁ、私を心配して言ってくれたのだから感謝はしないと。日本人の心構えだ。


「ありがとうございます。大丈夫です。」


すると相手はよく分からないと言ったような顔をした。ん?日本語通じてない?

でも私に声をかけたときは日本語だった気がする。


「あの……ここ横断歩道の真ん中ですよ?」


横断歩道の真ん中か。成る程。だから車が走ってる訳だ。横断歩道の真ん中ねー。うん。……ん?横断……歩道……?


「……えっ!?」



取り敢えず、横断歩道の真ん中で話を続ける訳には行かないので、近くのカフェに移動した。

カフェが大きな道路に面していたから向かうまでの間青い案内標識とかを探して歩いた。


結論、どこだよここ!


私の知っているところではない!


てか、案内標識が1つも無いってどういうことだよ!

グローバル化とか言ってローマ字追加してたんじゃ無かったのか!?


「お待たせー。」


そう言って私の向かいに座ったのはさっきの横断歩道で出会った女性だ。

手には2つのコーヒーカップがある。片方を私の前に置いてくれた。


「ありがとうございます。」

「高校生でしょ?敬語じゃなくて良いよ。」


すると慣れた動作で腕時計?を操作してホロディスプレイの生徒手帳を私の前にスワイプした。


ホログラフィックってそもそも実現可能だったの!?

てか、え?私の前にホロきたんだけど!?スマホか!?スマホの画面の中なのか!?

これ触れる!?え!?あ!すり抜けた!……そりゃそうか光だもん。


「ウチは宮月(みやづき) 莉奈(りな)、高校1年生。よろしく。」


ホロディスプレイに驚く私を見事に無視して自己紹介してくれた。


しかし、私も気になることがあるのだ!質問するぞ!


「質問良い?」

「どーぞー?」


私は目の前にあるホロディスプレイに指を差す。


「これ、なに!?」

「え!?……いや、ホロデバイスから出した生徒手帳だけど?」


知ってて当然みたいな反応が返ってきた。


うん。反応からして恐らく皆使っているのだろう。

2019年で言うスマホみたいなものか?聞いてみるか。


……あ、スマホ自体知っているのか?

そんな訳でポケットからスマホだしテーブルの真ん中に置く。


「これ、知ってる?」

「え?……いや、……あ、」


実はさっきから何となく気付いていたのだが、2019年では無いような気がしている。

しかも相当未来の事だと思う。というのも技術が進みすぎている。

ホログラフィックを一般人が普通に扱うなどと誰が思ったか。

未来に来たなどと常識とかけ離れたことを信じたくはないが……。


「スマ……スマートフォン!」


と、思ったが莉奈もスマホを知ってたのだから2019ね……


「おじいちゃんの家で見たことある気がする。」


……では無いのか、……やはり。


それでも確証が無い以上2019年ではないと決めつけるのはよくない。……よくない……が……。

さっき町のなかを歩いて思った。


まず店の看板が全て実体の無いホログラフィックだった。最初見た時は凄く薄い看板だと思ったけど見ていると度々ノイズが走っていた。


2019年よりも未来だということを裏付ける要素が多すぎる。


「でも何でそんなものを?……えっと……?」


あ、自己紹介がまだだった。


蓮田(はすだ) 未結那(みゆな)、高校1年生。」

「未結那、か。よろしく。」

「こちらこそ、でさ。」


何でそんなものを、と返されると思っていなかった訳ではないが、出来れば皆がスマホを使っている時代を期待していた。

2019年よりも後の未来説がどんどん濃厚になっていくじゃないか。


「皆この、スマートフォン、使ってないの?」

「そんな古くて使いにくいものわざわざ使わないよ。」


はい、今言ったースマホ古いって言ったー未来確定ー。


とは言っても何年後なのか。

さっきおじいちゃんの家にあったって言ってたから。


……そうか、聞けば良い。


「ところで今って西暦何年だっけ?」


自然な会話を装って聞いてみる。

過去から来ました!とか言ったら明らかに頭のネジが逝った奴だ。


……横断歩道の真ん中に居たことには目をつむろう。


「今は……確か2119年だよ。」


成る程、100年後か。うん。そうか。


…………なんでだ!?


そんなことを思いつつも平然を装う。

やはり横断歩道の真ん中にいたやつが100年前から来ましたとかいったらねぇ。絶対おかしい奴だと思われる。


「そっかー。2119年だったかー。」


この対応おかしく……ないよね?



さて、どーしよう。100年後、2119年の世界に来てしまった?らしいけど、どうするかな、これから。


分からないことが多すぎるから情報収集からかな?


なんて思っていると向かいに座っている莉奈が

「しっつもーん」とか言って手を挙げてた。


「何で横断歩道の真ん中に居たの?」


知らないよ!!てか私が知りたいよ!その事!


仕方ない。これもあり得る答えを……。


「えっと……信号が青のうちに渡りそびれちゃて……?」


自分で言っていながらも疑問形になってしまった。

いや、青のうちに渡りきれないって、ちょっと答え間違えたでしょ。


莉奈も不思議そうな顔をしている。

それもそうだろう。横断歩道を渡りきれないなんてあるわけ無いからな。


やっちゃったなー。うん。


「あー、成る程ねー。そういう事だったのかー。」


……え?誤魔化せた!?


莉奈って意外と天然な感じの子だったのか?

しかも……。


「確かにたまに渡りきれないことあるよねー。」


ないよ!そんな事!渡りきれない程そんなに長い横断歩道なんて普通ないよ!?


莉奈ってもしかして相当なアホ?

まぁこの際その方が都合良いか。


そんな事を思っていると不意に電子的な通知音が聞こえてきた。


「あ、ウチの端末だ。ちょっとごめん!」


そう言って莉奈は店の外に出て言った。

成る程、恐らく電話なのだろう。


それにしても腕時計型のホロデバイス?で電話も出来るとなると凄く不思議な感じがする。


さて、これからこの100年後の世界で何をしよう。

ていうか、そういえば今の私ってどういう存在なんだろう?

良く小説とかにある転生みたいなものなのか、それとも誰かと意識が入れ替わったみたいなやつかな?


などと考えていたら莉奈が帰って来た。


「ごめん!急用で行かないと行けなくなった!何かあったらここに連絡して!」

「え?あ、はい。ありがとう?」


そう言い残して椅子に置いてあったカバンを持って去っていった。

あと、連絡先が書かれた電子ペーパーディスプレイを残して。


取り敢えず莉奈が行ってしまったのでこの状況について整理していこう。



まず、私は何故か100年後の世界に来て横断歩道の真ん中に立っていた。

そして宮月 莉奈と名乗る私と同じ高校1年生と出会った。


ん?そういえば莉奈はどうして私に声をかける事が出来た?あの時車が物凄い速度で目の前を走っていた気が……。

信号が変わった?それならば私に声をかける事は可能だがそもそも声をかける必要があったのか?


これに関しては今考えても仕方がない。



次に私の持ち物だが、制服のスカートのポケットに私の使っているスマホが入っていた。


これは2019年で授業を受けていた時と同じだ。しかし電源が入らない。


そして色々ありすぎて触れられなかったが実はスクールバッグを肩にかけていた。これには私もふと気が付いて驚いた。


中には教科者、ノート、電子辞書。

何の変哲もない普通の高校生の荷物だ。


しかし1つだけ、恐らくこの時代のスマホに値すると思われるホロデバイスが入っていた。


何故、腕につけていなかったのかはこの際置いておき、これは美味しい収穫だ。

これならさっき莉奈がやっていたように生徒手帳などを出して今の私の身元が分かるかもしれない。


よし、そうと決まれば早速やってみよう!


左手首に普通の金属バンドの腕時計と同じようにつける。そして、莉奈の操作を見よう見まねでまねすることにし、文字盤の縁にあたる部分をなぞる。


「おぉー!?」


なんかホーム画面っぽいの出た!ということはこの動作が電源になるのか。

後はスマホを操作する要領で表示されるホロディスプレイをスワイプしていく。


「生徒手帳……生徒手帳っと」


見つけた。生徒手帳の項目。

すかさず項目が書かれているホログラムをタップしてファイルを開く。


そして顔写真と名前、住所等このデバイスの所有者の全ての個人情報が表示される。


……驚いた。


この写真、私じゃん。



いや、そりゃ恐らくこのデバイスが入っていたスクールバッグの所有者が私?なんだから私の顔なはずなのだが。



そういうことではない。



2019年の私の顔そのものだった。


と、いうことはまさか名前も??

この予想は見事に的中。全然嬉しくない。


蓮田未結那が2119年にも存在している!?


いや、していた?


このようにホロデバイスやスクールバッグが存在している以上、転生や転移のような説は無いだろう。


となると意識だけの入れ替わりなのか?


そういえば時代を超えて意識が入れ替わる映画があったがあれはお互い知らない人と入れ替わってたな。


だが、この入れ替わりは知らない人とは言い切れない。同姓同名、しかも顔が一緒。おまけに生年月日も年代が100年違う事を除けば一緒だ。


……こういう時は深く考えずに行こう。

そうだよ。逆に知らない人と入れ替わるよりかは遥かに良かったじゃないか。

少なくともこの時代に存在しているのだから普通に生活していこう。……うん。


こうでも思わなければやってられる気がしなかった。



よし。普通に生活していくということで方針は決まった事だし、ここからは気持ちを切り替えてやっていこう。


そんな訳で100年後の世界生活スタートだ!


何か「1ヶ月間1万円で生活」みたいなノリが混ざっている気がする。ナレーションとか入らないかなー?


さて、最初は拠点だ。

人間生きていくには安らぎの拠点が必要なのだ。

ホロデバイスの生徒手帳項目の中の個人情報ファイルに、この時代の蓮田未結那の家の住所が書いてあった。


この住所の表示をタップするとマップのアプリケーションが勝手に立ち上がりナビゲーションモードになった。


ホロデバイスがめちゃくちゃ便利。スマホと比べ物にならないくらい優秀。


ともかく、マップによると今私がいるカフェから徒歩15分のところらしい。


意外と近くだ。行こう。


カフェを出てナビゲーションの指示に従いながら歩道を歩く。


さっきから自分の横の車道に車が走っているが全然音がしない。

100年も経過しているから流石に全て電気自動車にでもなったのだろうか。


歩道の舗装もキレイだ。アスファルトが滑らかな素材になっている気がする。


ガードレールなんかホログラフィックだ。

これでは全然ガードにならないじゃん、とか思ったがもしかしたら全ての車が自動運転で事故が起きないとかなのかな?


だとしたら、人間が車道と歩道を区別出来るように目印程度のガードレールで良いのか。


さぁ、ナビによるとあと5分で家に着くらしい。


ところで家に着くのは良いが鍵とかどーすれば良いんだろう?

スクールバッグの中に入っている事を期待して少し探してみたが鍵らしき物は見当たらなかった。


家に誰か居るのかな?お母さんとか?


いろいろと考えながら歩き始めて15分。


ナビ曰く家、に着いた。アパートだ。

でもこのアパート、凄くキレイ。イメージとしてはビジネスホテルみたいな感じ。


因みにナビが最後までしっかりと自分の家のドアの前まで教えてくれたから自分の部屋が分からないということはない。


頼む、ドアよ、開いてくれっ!と思いながらドアの取っ手に手をかけて引っ張る。

すると、カチャンッ!と明らかに鍵が施錠されたと思われる金属音が響く。


鍵が開くと同時に左腕のホロデバイスに「施錠」の2文字がポップアップする。


オートロックは聞いたことあるがオートオープンとは珍しい。この時代、それが標準なのか?


取り敢えず、ドアが開いた。

家の住人がドアを開けたらとる行動は1つだけだろう。


「……ただいま……?」

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