000 序章
……眠い。
今の私の視界にあるもの、それは木と鉄でできた椅子。
「じゃあこの問題、指名していくから黒板に書きに来いー。」
……あ。……視界が……暗く……。
足音が近づいてきた。が、そんなものは気にならない。
「はい、問4ねー。」
3席くらい前からそんな声が聞こえてくる。
そして足音は私の横で止まった。
「おい、蓮田。昼寝か?」
ん?……んん?あ。……まずい。先生が……右に……。
「別に昼寝するなとは言わないが、テスト前に泣きついても知らないぞー?」
そう言って手に持っていた出席簿で私の頭を叩いた。
「蓮田、問5なー。」
しっかり指名して、後ろに歩いていった。
仕方ない。渋々前に出て黒板に答えを書きに行く。
えっと、問5か。この問題なら解ける。
授業は聞いていなかったけどこれなら大丈夫そうだ。
「ゴメン蓮田。問5じゃなくて問6だった。」
え!?問6なのか。問6ねー。うん。……え。……わからん。
ここでやって来た本来の問5を指名された人。
そうだ。ノートを見せてもらおう。黒板の答えさえ埋めればなんとか。
「ちょっと、ノート貸して?」
我ながら良い作戦。さぁ結果は?
「ん?良いよ?」
よし、これで黒板に書ける。これ解けないと寝てたからだとか言われる。
黒板に答えを書き終えて席に戻ろうとすると、問5の人が小声で話かけてきた。
「なぁ、蓮田?」
「なに?」
「授業、聞いていなかったでしょ。」
問5の人には解けなかった事がバレた様です。
「まぁ良いや。ノート返せ。」
ノートを渡して席に戻る。問5の人が書き終えると先生の解説が始まる。
問5の人。名前は四宮 風都。
そこらの女子よりも女子力が高く、細い。自称男子。
中学が同じで、1年と3年はクラスも同じだった。
中学の時から私の事を結構気にかけてくれてた。
意外と相談とか聞いてくれるし。
前に「何で気にかけてくれるの?」って聞いたら
「蓮田を1人にすると何をやらかすかわからん。」とのこと。
私全然信用されてないじゃん!まぁでも確かに部活も同じでお世話になったし。
今でも色々と助かってるから全然い……い……。
さっきから先生の解説が子守唄に聞こえてくる。
寝ないようにとりあえず四宮の事を考えていたんだけど。
眠気には……勝てない。