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Survival Competition ~ 第一開発班奮闘記 ~   作者: 狩野あかね
mission6 「with the scenery which changes  ~終結~」
18/22

 コンペティション第3戦にはイザベルの乗る2号機しか使われないが、万一の時のために1号機、3号機も整備は行われている。ハンガーでラックに固定された2機の仕上がりを確認していたリバルト・リズカミルは、奥にある建造部の作業スペースにカミサワ・アキトの姿を見つけて足を止めた。アキトはプレス機の前にいる誰かと話しているようだ。

「こんなところで何しとるんだ」

「おやっさん」

 リバルトが歩み寄って声をかけると、振り返ったアキトの向こうにいたのはエリカだった。小柄な体全体でプレス機のレバーを動かしている。その横には建造部の親方も控え、エリカに短くアドバイスを送っていた。

 建造部に急ぎの発注は無かったはず、とリバルトは首をかしげた。

「何か足りない部品でもあったか?」

「違うよー。爆弾作ってるの」

 陽気に答えるエリカに、リバルトはますます怪訝そうな顔になる。

「コイツがな、相手の足元に突き刺して使う形の爆弾が作れないかって言って来てな」

 親方がアキトを親指で指し示した。リバルトから目顔で問われ、アキトは口を開いた。

「投げたり置いたりするより、扱いやすいかと・・・銃剣みたいにライフルの先に装着して使えば、姿勢も保てる」

「次の行動にも移りやすい、か」

 意図を察したリバルトの言葉に、アキトはこくりと頷いた。ふむ、と腕組みをしたリバルトは、楽しげに細い金属板を曲げているエリカを見た。

「おまえさんも、足元をどうにかしようとしてなかったか?」

「うん。でも、トビーにも言ったんだけど、あたしのアイデアだと、ちょっと無理っぽいし。こっちのほうが効きそうだからいいんだ」

「そうか」

「それにね!」

 ウキウキとした様子でエリカはリバルトに振り向いた。

「ペイント弾のほうをもっと工夫することにしたんだ。あれはけっこう自信作!」

「こら」

 手を止めたエリカの頭に、親方が軽く拳骨を落とした。

「作業中によそ見するな。きちんと図面とマシンを見ろ。気を抜けば失敗するだけじゃなくて怪我をするぞ」

「はあい。ごめんなさい」

 首をすくめたエリカは、真剣な顔で作業に戻る。

 リバルトはアキトから設計図を受け取り、目を通した。

「指向性は前方・・・地中か。範囲はかなり狭いな」

「機体の、足の側面にソードラックで装着しておいて、接近してからライフルの先端に取り付ける想定なんで。軽量化しないと動作に支障が」

「なるほどな」

 しばし考え込んだリバルトは、不意に顔を上げて親方に声をかけた。

「使い捨てランチャーに載せるバンカーバスターを作ってくれんか」

「バンカーバスターだと?」

「なにそれ、なんかスゴそう!」

 親方は眉を顰め、作業を終えて金属板をマシンから外していたエリカが目を輝かせて親方をふり仰ぐ。

「貫通能力を高めた爆弾のことだな。主に地中の目標を破壊するために使われる。それでB班の機体を貫こうってわけか? だがそれだと・・・」

 ふっと息を吐いた親方はエリカに説明をしつつ、リバルトに目を向けた。

「わかっとる。機体に使うんじゃなく、文字通り地中貫通に使う」

 リバルトは親方と目を合わせて頷いた。

 バトルアームの性能試験という名目上、それ以外の要因での決着にはクレームがつく可能性があるということは、班員たち共通の認識となっている。それを踏まえた上での提案だった。

「まず最初にB班の機体の近くに打ち込んで、大穴を開ける。穴そのものに機体が落ちなかったとしても、爆破の衝撃で周辺の地面も脆くなるはずだ。動けば足を踏み外すこともあり得る。そうなればうかつに身動きが出来んだろうし、イザベルが近づくのが楽になる。そこに、さらにアキトの爆弾でダメ押しと行くのはどうだ? それなら、爆薬の量が少なくても効果が出せるだろう」

「土砂が吹きあがったら目隠しにもなるね。あ、ミサイルとかの追尾も乱れたりするかな?」

「さすがにそこまで欲張るのはやりすぎだろうが、まぁ、期待は出来るかもしれんな」

 ワクワクとした表情を隠さないエリカに苦笑しつつ同意したリバルトに、アキトが控えめに声をかけた。

「こちらがミサイルを使うのはマズいんじゃ・・・」

「なに、班長の言うのは、ミサイルの撃ちあいだけで終わるのはマズいだろうってことだ」

 リバルトは少し心配そうなアキトの胸元を手の甲でポンと叩いた。

「使い捨てランチャーを1発撃って突っ込むなら、人型は汎用性が高い、複数の兵装を臨機応変に使いこなせます、と主張できる」

「ああ、確かに」

 親方は納得の声をあげた。

「よし。ランチャー自体はいくつかあったはずだ。さっそく弾頭を試作しておこう。明日の実機訓練には間に合わせる」

「頼む。アキト、おまえさん、この銃剣のことは班長には言ったか?」

 親方と段取りを整え、リバルトはアキトに向き直る。アキトは首を振った。

「いえ、まだ。作れそうなら提案に行こうかと」

「なら、自分が合わせて伝えておこう。ここはおまえさんに任せた」

 アキトが頷くのを確認して、リバルトは設計部の部屋へと向かう。それを見送ったアキトは、手にした設計図に目を落とした。

「・・・だんだん、形になってきた気がする。いい勝負に、なるか」

「もっちろん! そのためにみんな頑張ってるんだもん」

 アキトの呟きを拾い、エリカはぐっと右腕をまげて力こぶを作る。

「よぉし、やるぞー!」

「目分量で作業するなよ。やり直す時間は無いからな。フィーリングとやらで手順を変えるのも無しだ。いいな」

「イエッサー!」

 勘を頼りにすすめがちなエリカに釘をさす親方に、エリカはびしっと敬礼してみせた。

「俺に手伝えることはあるか」

「いいのか? じゃあ力仕事を頼むとするか。弾頭を作るための資材を運ぶぞ。こっちだ」

 アキトの申し出に、親方が倉庫へと歩き出す。その後を追うアキトに、エリカが笑顔で手を振った。


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