3 問題発覚
朝6時から履き続けた靴を脱ぎ、タンス・ベット・テーブル・イス更には冷蔵庫まで異世界へもっていく予定だった奴を戻し自身の服をゲーム内に入れアイテム合成・超強化をしていく。
伝説級防具を惜しみなく使う事により自動修復・自動HP・MP回復・各種補助魔法付与で超防御力を誇る目立たない普通の上着・下着・ズボン・帽子・靴を作っていく。
試しに帽子を俺の超強化された腕力で引っ張るもびくともせず、包丁を突き立て用なら包丁が欠けると言う訳の解らなさ。
そんな暇つぶしをしながら1時を回ったのを確認する。
「今日、使者こないのかなー。それとも使者がくるって言うのが何かの手違いだったのかなー」
普段着型超強化服を身にまといそんな事を言いながらぼーっとする。
「ゲームの中には異世界・他惑星に行ける転移術みたいなのがあったなー」
勝手に異世界にでも行こうかな?そんなこと思った時だった。
『ピンポーン』
チャイムがなりドアを見る。
「えっ、異世界からの使者ってドアから来るの?」
思わずつぶやいた。
『ピンポーン』
「あーはいはい、今行きますよー」
一応ネックレスを外しもし出てきたのが敵側でも対応できるように心がけ、ゆっくりとドアを開ける。
誰もいなかった。
「ん?」
右を向いても左を向いても上を向いても、もちろん正面にもいない。
悪戯?と思いたくドアを閉める。
『ピンピンポーン』
ドアを再び開けるが、やはり誰もいなく、ドアを出来れば閉めたくなった。
だがその時無情にもそれの声は聞こえてきた。
「こっちプポーこっち、したプポー!」
知ってた。
ドアを開けた時チラッと縫い包みみたいなのが地面に落ちていたのを視認していた。
だが、こんなのが使者だと嫌だと言う感情と、嫌な予感がし関わりたくないと言う思いにより一図の望みをかけドアを閉めたのに。
「こっこれが使者?」
思わずそう言った俺は悪くない。
ふわっふわの女児が持つような小さな縫い包み。
誰がどう見たって縫い包み。
「初めましてだプポー、ボクの名前はプポーだプポー」
一瞬、余りのうざさに見なかったことにしてドアを閉めようかと思ったが、女神との約束があるし能力を取り上げられるのも困る。
何が何でも一番最初に金塊等を取り出して換金しておくべきだったと、今さらながら後悔する。
そうしておけば、無視して能力を取り上げられても問題なかったのに。
「取りあえず中に入れ」
中にいれたくないが、この光景を隣近所・知人などに見れれたら社会的に死んでしまう。
嫌々ながら中に入れ『ピッコピッコ』と言う、生物としてあり得ない足音にイラっとしながらそいつを床に放置し椅子に座る。
「で?」
本当に色々な意味で「で?」としか言いようが無かった。
「助けてほしいプポー」
助けてほしいと言いながら緊張感・緊急性ゼロの不思議生物に対して俺にどうしろと?
「で?」
「取りあえず話を聞いて欲しいプポー」
聞きたくない、帰れ。
思わず口から出そうだった言葉を飲み込み、口から出た言葉はやはり
「で?」
だった。
不思議生物プポーは首を『ピコッ』と傾げ、
「話を聞いてくれるプポー?」
等と言ってきた。
ここまで会話をしたくないと思ったのは恐らく、今までの人生上はじめてだろう。
「いいから話せ。聞くだけ聞いてやる」
俺の言葉に『ニパッ』と何故か笑顔にすら擬音が聞こえ、実はそう言うオモチャなんじゃないかとすら思う。
「ありがとうプポー。取りあえずついてきてほしいプポー」
そう言い何故かドアに向かって『ピッコピッコ』と歩いていく不思議生物。
「おい、どこに行く」
「仲間の所へプポー」
ドアから出てどこぞの山にでも行ってからゲートにでも入るのか?と思うがこの不思議生物にそれだけの力があると思えず、こんな不思議生物しか遣せない親玉にそんな力があるとも思いたくなかった。
「まて、取りあえずまて」
「なにプポー?」
「お前をそのまま外に連れていけるわけないだろうが」社会的に死ぬわ。
そう思っていると、何と不思議生物は俺の言葉を無視してドアへ向かった。
「おい」
「大丈夫プポー僕たちは見える人を選ぶ事ができるプポー」
「ちょっとまて」
僕『達』?
こっこんなのが複数いるのか。
見るだけでうざく、聞くだけでイラっとくる不思議生物が、後最低でも一匹。
その後道を歩くが先導している不思議生物には他の人は視線を向ける事は無く、歩くたびに聞こえる『ピッコピッコ』という音にすら反応はしていないので本当に見る人を選べるようだったが・・・
おせーーーーー壊滅的に遅い!
ピッコピッコと足音を立てながらゆっくりゆっくり、亀と同程度の速度で歩いていく不思議生物を見ているだけで『びきぃ』と頭の中から音が聞こえてくる。
そりゃ、起きてから来るのが遅いはずだ。
そして俺は黙って不思議生物をつまみあげ引き返し、ママチャリのカゴに突っ込み走り出した。
「はやいプポー」
周囲にはママチャリに俺しか乗っているようにしか見えていないはずなので、声を潜めて不思議生物に話しかける。
「黙って方向だけ指していろ」
不思議生物が指している方向へと進んでいき、しばらくするとある店の前に辿り着く。
「まっマジかよおい」
思わず声に出るのも仕方ないだろう。
目の前にある店は小・中・高校生の『女子』に人気がある店として有名で、間違っても30超えのダサイ恰好をした中年男性が入る店ではない。
余り見続けるだけで不振に思われても困るため、取りあえず通り過ぎる。
「どうしたプポー?あの店プポー」
「あほか、あんな店に入れるか!」
「大丈夫プポー、良くみんなと一緒に入ってるプポー」
『達』から予測していたが『みんな』と言う事はやはり3匹以上いるんだろうなぁこいつら、と若干現実逃避しながら頭を悩ませる。
他人に変身するアイテムもあったと思うが、変身先を選べなかったり髪の毛が必要だったりと絶望的の為、不思議生物に話しかける。
「ちょっとお前行って呼び出して来い」
と、素晴らしいアイディアだったのだが、
「あの店で食べるパフェがおいしんだプポー?早く入ろうプポー」
等とのたまう始末。
恐らく人と感性が違いすぎるため今の俺の気持ちなどこの不思議生物には、1㎜たりとも理解できないのだろう。
「これが過ぎれば異世界、これが過ぎれば異世界」
と小声で唱え、完全に怪しい人と化した俺は店にいる女たちの「なにあれー」「超場違いw」と、声に出さずともわかる視線の中、身を縮ませながら進んでいく。
「ここプポー」
そんな声と共にあるテーブル席の前で止まる。
嘘だろおい!
そんな言葉が出なかった自分をほめてやりたい。
目の前にいるのはこっちを驚愕の目で見ている恐らく中学生3人と小学生1人。
テーブルの上には不思議生物が4匹。
空いている席は1つ。
まさか、俺に、ここに座れと?